#1 逃走
皆さんは、「世界の終焉」と聞いたら何を思い浮かべますか?
戦争、未知のウイルス、謎の生命体。
そんな何かによって、文明が崩壊した世界。
このお話は、そんな世界で自由と平和を求めて奮闘する、子供たちのお話です。
〜2xxx年 地球〜
“24番!何をしている!?点呼の時間だ!30秒以内に起きてこい!”
そんな怒号で目を覚ました。
僕は、名もわからないコロニーの中で産まれた。
親も分からず、名前すらも与えられない、超社会主義のような空間。
監視カメラが張り巡らされ、壁はコンクリートで固められており、庭はおろか、窓すら存在しない施設。
子供は素材として扱われ、娯楽は愚か、意思表示すらも許されない。
許されるのは、毎日のような教育と、訓練と、最低限の生命活動。
使えないと判断された子供は、殺処分される。
「・・・自由が・・・欲しい。」
僕はいつ頃からか、強くそう思うようになった。
自由が欲しい。太陽?というものを浴びてみたい。笑う?という行為をしてみたい。
そんなことを本気で、心の底から願った。
・・・このコロニーから、脱走しよう。
外の世界がどのような世界かはわからない。
でも、ここよりは幾分かマシな筈だ。
サバイバル術も少しは教官から教わっている。銃の扱いも日々の射撃訓練である程度は磨かれている。
生き延びることは、不可能ではない筈だ。
早速そう思い立った僕は、看守の目を盗み、同部屋の同期に声をかけた。
「なぁ、君。」
・・・
『・・・何?』
「君は、外の世界をどう思う?」
「僕と一緒に、ここを逃げ出さないか?」
まだ殺処分されていない数少ない同期全員に声を掛けた。
その内、賛同してくれた人物は2人。
僕合わせて、3人。
まぁ、多いと考えるべきか。
ひとまず、協力してくれる2名を集め、会議を始めた
「みんな、賛同してくれてありがとう。」
「僕は24番だ。計画や指揮は任せてくれ。」
「俺は11番。射撃と運搬なら得意だ。頼ってくれ。」
協力者の1人、背丈が大きく、色黒な少年がそう答えた。
「私は6番。栽培と、治療なら少し知見がある。よろしく。」
もう1人の協力者、華奢で清楚な少女がそう答えた。
「早速だが、僕が考えた計画を話す。」
「1週間後、施設の点検の日がある。あの日は監視カメラの作動数が半分くらいになって看守もいつもより少なくなる。この日を狙おうと思っている。」
2人は、静かにコクリと頷いた。
「なんとなくだが、独学でこのコロニーの全容を調べた。」
そう言って、僕が書き上げた地図を広げた。
「当日、まず自主訓練を装い、射撃訓練場に入る。そこで1人1丁、訓練用の銃と弾薬を回収する。」
「次に、倉庫に侵入し、持てる分の医療品、食料、資材を物色する。」
「最後に、調べた結果最も看守の少ない西門から脱出する。」
『わかった。』
2人からの同意をもらい、1週間後の決行日まで、看守の目を盗みながら計画を進めた。
そして、遂に決行の日となった。
“えー、今日は機材点検の為、訓練を一時休止する。”
“各自、訓練や勉学に励むように。”
教官がそう告げ、その場を後にした。
ハンドサインで2人に合図を出し、素早く射撃訓練所へ。
はやる心を落ち着かせ、大きく深呼吸をする。
ありったけの銃弾と、ライフル銃1丁、短機関銃一丁、散弾銃一丁と予備の拳銃2丁。
更に訓練用チョッキと訓練用ヘルメットを着用し、訓練所から出た時だった。
[銃火器の無許可持ち出しを検知。銃火器の無許可持ち出しを検知。]
近くにあったセンサーとスピーカーが警報を鳴らし、施設内にアラートが響き渡った。
「急げ!」
そう叫んでスピーカーを銃で撃ち壊し、倉庫へ走った。
「その辺のバッグに詰めれるだけ物資を詰め込め!」
そう皆に指示し、目に移る医療品や食料を詰め込んでいた、その時だった。
“いたぞ!捕らえろ!武装班を呼べ!”
遂に看守に見つかってしまった。
「回収中止!持ってる資源を手に持って逃げるぞ!」
そう言って荷物を背負い、倉庫を抜け出した。
“抵抗を止めろ!直ちに武器を下ろして跪け!”
看守の怒鳴り声が聞こえる。
アラートが高らかに鳴り響き、心臓が破裂するかのような緊張感と、捕まったら死という恐怖が押し寄せる。
「振り返るな!走れ!」
全員にそう指示し、全力で走った。
ただひたすらに、出口を目指し、走り続ける。
出口まで半分となった時、自分達に試練が降りかかる。
弾丸が、顔の横を通り去っていった。
・・・武装隊の到着。
これは、脱出において1番の敵だ。
「戦闘準備!敵の位置を確認し、体を隠せ!」
体に掛けていた短機関銃を手に持ち、通路にあった窪みに身を隠す。
「敵は正面と右にいる!」
11番がそう叫んだ。
「射撃開始!最低限の発砲で足止めしろ!完全な制圧はいらない!」
そう指示し、全員で狙いを定め弾丸を撃ち込んだ。
”抵抗を止めろ!銃を置いて跪け!“
武装隊はそう叫びながら、銃を撃ってくる。
相手はパッと見た感じ合計5人。どうにかできないこともない。
「2人制圧!残り3人!」
11番の華麗な戦闘技術で相手を制圧していく。
銃声が轟き、少しでも油断したら眉間を撃ち抜かれる。
とにかく相手を制圧しろ。やられる前にやるしかない。
そう心の中に念じ、トリガーを引き続ける。
「制圧完了!相手は戦闘不能!」
11番がそう叫んだ。
「射撃中止!逃げるぞ!」
そう叫び、再び出口へ走り出した。
施設内にはアラートが響き渡り、看守の怒号が響き渡る。
全力で走り続けた。
少し遠くに、出口が見えた。
だが、その出口から出るのは、容易では無さそうだった。
そこには、武装隊が一列に並び、土嚢まで丁寧にご用意して待ち構えている。
”お前達は包囲されている!大人しく降参すれば命は助けてやろう!“
怒号が響き渡る。
「挑発に乗るな!適度に相手を発砲し、ある程度制圧しろ!」
僕は、全力で味方にそう叫んだ。
「でも、どうするの!?この数よ!?」
6番が叫ぶ。
「1つ、手榴弾を持って来ている!最後はこれで吹き飛ばして正面突破する!」
「総員、射撃用意に付け!相手戦力を半分まで削れ!」
今にも枯れそうな声を絞り出し、そう叫んだ。
相手の弾幕の雨は止まない。恐らく2機、タレットが用意されている。
このままでは脱出は愚か、身を出しただけで蜂の巣だ。
「11番!この手榴弾で、タレットを吹き飛ばせ!」
最終手段だ。作戦変更。
「タレットの爆風で周りを吹き飛ばし、残った勢力を始末する!」
そう皆に指示を出した。
11番が手榴弾を投げた。
”手榴弾だ!伏せろ!“
耳を塞いでいても鼓膜が破れそうな爆発音と、火傷したかと思うくらいの高温が辺りを包む。
どうやら、タレットは破壊できたらしい。
それどころか、タレットの爆風で全員吹き飛ばしたようだ。
「制圧完了!出口へ急げ!」
そう、叫び、出口へ走った。その時だった。
「あっ!!」
自分の後ろで、何か鈍い音がした。
振り向くと、6番が転んでいる。
「助けて・・・!足が・・・!」
足を見ると、酷く捻挫しているように見えた。
あの様子じゃ、立ち上がることすら出来ないだろう。
「6番!?今助け---」
「何してるんだ!?走れ!蜂の巣にされるぞ!?」
11番がそう叫んだ。
後ろには、武装隊が来ている。
もう、6番を捨てるしか、なかった。
「すまない・・・6番・・・」
そう呟き、出口に走ろうとしたその時、
「うぐっっ!?」
右肩に、弾丸が捩じ込まれた。
”待て!!止まれ!!!“
怒号が、聞こえる。
「何してる!?早く走れ!死ぬぞ!?」
11番の声で正気に戻り、6番が転んだ拍子に落としたライフル銃を回収して武装隊に全弾撃ってから走り出した。
やばい。
やばいやばいやばいやばい・・・
死ぬのか?今、ここで?ここまできて?まずい。
死にたくない・・・
死にたく・・・ない・・・・!!!
だらだらと血が溢れ出る肩を押さえながら、出口へ走った。
後ろでは、銃声音と女の悲鳴が聞こえる。
6番が、今、6番「だったもの」へ変わった音がした。
頭がごちゃごちゃになりながら、ただ、出口へ死ぬ気で走り続けた。
俺と11番は、脱出に成功した。