プロローグ
この世界には、二つの伝説がある。
ひとつは、かつて世界に恐怖を蔓延させた者として恐れられ、世界を支配していた「魔王」。
もうひとつは、その魔王を倒し、世界に平和をもたらした者として讃えられた「勇者」。
そしてその子孫たちが、今、共に暮らすことになる時代となった。
時は令和、この世界で平和に暮らす勇者の孫ユーリ・サンロードと魔王の孫エンド・パルフェリム。二人は何の因果か、幼馴染であり、必然的に友となった。
だが、両者の間には消えない「血筋」の違いがあった。それは、単なる名前だけでなく、過去の遺産、そしてその重さである。
ユーリは勇者の孫として、どこに行っても「英雄」としての期待を背負い続けていた。無敵の力を持ちながらも、世間の期待に応えられない焦りを抱え、毎日がプレッシャーでいっぱいだ。
一方、エンドは魔王の孫として、誰もが恐れる存在だと思われている。しかし、彼はその恐怖に反して、意外にもおっとりとした性格で、周りを安心させる存在でもあった。
しかし、二人の間には一つ大きな違いがあった。それは、彼らが生きる時代のギャップである。
先代の勇者と魔王の戦いは、長い年月を経て決着を迎え、人間と魔族はついに共存するようになった。だが、その過程で生じた「歴史の断絶」と「世代間の溝」は、今なお残っていた。
「昭和前期から中期」の時代に生きた先先代、「昭和後期から平成」の時代を生きた先代、生き抜いた時代が違う中で築かれた価値観や考え方は、今や「令和」の世代には通用しない。二人は、そんな時代を超えて互いに理解し合い、絆を深めなければならない。
そして、二人の物語は、これから始まる。