一輪
―神道[シントウ]—
—それは古来、日本から伝わる民族的な信仰。神話を基としており、開祖は居ない。しかし、国土創世譚から始まる日本の伝承が紡がれた。―
―信仰には神がいた。しかし―
―時代の権力者により新たな形を成し、信仰とともに文化の一部となった。紡がれた伝承は時代によって変わることや消えるものもあった。―
—信仰の神は八百万の神と呼ばれ、如何なる物にも存在していると伝えられた。そして時折、人に試練を与えることもある。—
―それは私たち。人間が抗うことのできない強大な存在。世界を創造から調節する神聖な存在。神の力と同じものを持ち、世界に恵みを与える場所を耕す存在がもう一つの『神』であると伝承されている。―
私が目を覚ますと、大きな木の前で立ち尽くしていた。
「ここは…どこ?それにこの大きな木は…」
私は一度も見たことのない世界をゆっくり見回した。しかし、見えるのは真っ白な空間だけ、周囲には何もなく大きな木が生えていた。木を改めてみると幹が大きく、立派な物でしたが、不思議な事に葉は一枚も生えておらず、幹が直接見える姿になっていた。
「何だろう?」
私が木の根元を見下ろすと、一か所だけ鮮やかに色付いた場所があり、気になって向かってみるとそこには五枚の花弁が付いた白色にピンク色が少し染まった花が置かれていた。
「これって…桜の花…かな…」
私は一輪しかない花を不思議に思いながら手にすると、目が痛くなる程に光り輝き、再び目を開く時には花弁が消えていた。
「今の花は…」
私は手に取った花がどこに行ったのか分からず、見回すと辺り一面が白い霧のようなものに覆われており、何も見えなくなった。
「新入生が退場します」
辺りが見えるようになると、いつの間にか体育館に戻っており、入学式が終わっていた。
新入生は入学式が終わると、担任の先生であろう大人の人に案内されながら教室へと歩いて行く。
教室に着いた私は席に座り、ホームルームに参加する。特に変わったこともなく、教室にいる先生と生徒の自己紹介やプリント配布が行われた。
ホームルームが終わると、教室内では初対面同士で話が始まり慣れない会話だけが飛び交う空間がそこにあった。
「えっと。木花さん?」
「はい」
私が周りで話している声を聞きながら見ていると、同じクラスの人が話しかけてくれました。
「私は青木蜜希。よろしく」
青木さんは私以外にも多くの人と話しており、既にクラスの中心にいる人にいた。
「木花さん。この後、クラスのみんなでご飯を食べに行こうと思っているんだけど…どうかな?」
私は人が多いのが苦手なのですが、青木さんの方を見ると心配そうにしていたため、断ることができずに一緒に向かう約束をした。
「嬉しい。じゃあ。後で」
青木さんは私と話を終えると他の所へ向かい、誘っていない人に同じような話しかけていた。
「私は行きません」
私が断る勇気がない中、青木さんに自身の意思を言う生徒がいた。見てみると入学式で新入生の挨拶をしていた女子生徒だった。
「冬月さん…」
女子生徒は賑わっている教室を他所に出ていった。
青木さんは悲しそうな顔をしており、他の生徒が冬月さんの陰口と青木さんを慰めようと憶測混じりの話を始めた。私は冬月さんが出て間もなく、帰る支度をすぐに済ませて、教室を出た。
「木花さん?」
「私、ちょっと用事ができたから行けたら行くね」
私は冬月さんを探すことで家に帰る口実を作り、その場を離れた。




