表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

【ホラー 怪異】

誰かの囁き

作者: 小雨川蛙

 

「起きて」

 その声を聞いた少年は目覚める。

 誰が呼んだのだろう?

 時計を見るとまだ午前四時だった。

 十歳になったばかりの少年にとっては未知の時間だった。

 お母さんもお父さんも起きていない時間。

 冬だからだろう。

 外はまだ真っ暗だった。

「良かった。起きてくれたね」

 夢を見ていたのではないか。

 そう思った少年の思いを打ち消すように再びの声。

「誰?」

 思わず問いかける少年に対し、姿の見えない声の主は答えた。

「ごめんね。今はそれを伝えられない。だけど、助けてほしいの」

 少年の心に奇妙な興奮が沸きあがり、胸が高鳴った。

 これはまるで漫画やゲームの世界のようだ。

 自分にしか聞こえない、姿の見えない相手が助けを求めてくるなんて。

「何をすればいいの?」

 少年が問いかけると声の主が言った。

「助けてくれるの?」

「うん。だから教えて。何をすればいいの?」

「それじゃあ、まずは……」


 冬空の川の中。

 少年の身体は浮いていた。

 誰も居ない時間。

 誰も居ない空間で笑い声が響いていた。

「馬鹿な奴」

 声の主は恐ろしい悪魔だった。

 もう、数え切れないほどの数の命を奪っている、度し難い存在。

「何で姿形が見えない奴の言う事をすぐに信じるんだ」

 悪魔の笑い声を知ってか知らずか、少年の身体は冬空の下で漂い続けていた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ