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ショーグン・ブレイクダウン  作者: 43番
最終章 ヒーロー・ネバーダイ
50/51

その4

「いつ…いつこの写真が来たのですか!?」


「一昨日の夜です。差出人不明の通知が届き、不審に思ってセキュリティチームとウイルスの有無を確認したところ、この写真が出てきました。最初はフェイクかと疑いましたが、念の為現場を調べたところ彼女の遺体を発見した次第です。既に司法解剖も行い、結果は胸部に一発撃ち込まれたことによる失血死でした。ほぼ即死と見ていいでしょう」


「なっ……」



 真一文字からの報告に月鏡は絶句する。斑鳩記者は一昨日の夜に何者かによって消されていた。つまり今朝月鏡がメールを送った時点で既に斑鳩記者はこの世にいなかったのである。月鏡の体が嫌でも震えてくる。斑鳩記者は「L.O.S.T」を秘密裏に調べていたが、その闇に近づき過ぎたのだろうか。そして真一文字からは続きの報告が出た。



「斑鳩記者の残したデータや資料によると、殺害当日彼女は何者かに現場へ呼ばれたようです。そして現場に現れたタイミングを見計らって遠距離から狙撃された模様です」


「誘き寄せられたということですか?」


「どうも現場には斑鳩記者以外の人間がいた痕跡が残されていました。だが、犯人はその人物ではない。あくまでも斑鳩記者への狙撃を助ける協力者のようでした」


「…………」


「月鏡さん、貴方に斑鳩記者のことを聞いたのは彼女の残したデータの中に貴方からのメールも発見したからです。……正直こういう形で貴方に伝えなければならないのは遺憾です」



 真一文字からの無念の報告に月鏡は唇を噛む。斑鳩記者が消された以上、彼女と接触していた月鏡もまた「L.O.S.T」の抹殺対象になっているかもしれない。月鏡は少し思案すると真一文字に頭を下げた。



「真一文字さん、申し訳ございません。先程の話ですが、お断りさせてください」


「?断る?何故です?」


「斑鳩記者が消された以上、「L.O.S.T」にとって俺も敵と見なされているかもしれません。そうなるとショーグンに近づくどころか、その前にテロを阻止する計画が破綻するかもしれない」


「……ふむ。「L.O.S.T」は我々公安とも違う超法規的な組織。お互いにショーグンが計画しているテロを阻止するために足を引っ張り合っている場合ではないですが、「L.O.S.T」がテロとは無関係の人間まで手を出したとなると、話は変わってきますね」



 真一文字は店の天井を見上げてフゥと息を吐いた。そして月鏡に向き直ると頭を下げる。



「分かりました。確かに無理なお願いだったのは認めます。だが、もしもの為に連絡が取れるようにだけはしてください」


「はい。ありがとうございます」


「月鏡、引き留めてすまなかった。とにかく「L.O.S.T」には十分に注意してくれ。ショーグンはクリスマスにテロを計画している。難しいかもしれないが、しばらくは大人しくしている方がいいだろう」



 横から小張が話に入る。此処は公安に任せたほうが良いのかもしれない。それにその前に月鏡にはやるべきことがある。月鏡は真一文字と小張に頭を下げると、喫茶店を後にした。そして仕事に向かう傍らでとある人物へ電話を入れてみた。



「プルルル……」



 ほんの僅かな時間がとてつもなく長く感じる。出てくれるか分からないが、今は繋がることを信じるしかない。



『はい』


「ち、千奈津さん!お久しぶりです!」


『?ユーシュー君?どうしたの?突然、電話してきて』



 電話の主は北條だった。「L.O.S.T」の一件以降、しばらくの間連絡出来ず、本当に久しぶりの会話である。どう話題を切り出して良いか分からず、月鏡はあたふたするが、意を決して本題を切り出した。



「千奈津さん、クリスマスって予定ありますか?」


『えっ?クリスマス??……別にないけど』


「あ……あの、その日休み取るんで、もし良かったら一緒に出かけませんか?」


『ええ!?…それって…デートの誘い?』



 此処に来て月鏡はハッとした。北條を監視する意図で全く目的は違うのだが、普通にこんな話をしたらデートだと思うだろう。うっかりして月鏡は取り消そうとするが、北條はクスッと笑うと電話の向こうでOKを出した。



『大丈夫だよ。ユーシュー君なら安心だし』


「は、はあ…どうも」


『あと頼みがあるんだけど、デートの行き先と時間は私が決めていい?』


「は、はい!全然構いません」


『じゃあクリスマス当日、東京タワー前の巨大クリスマスツリーに午後5時に集合。そこから夜景を観に行こうよ。ディナーはその後で』



 北條からの提案に月鏡はコクコクと頷いて北條との電話を切った。運命の日時が決まると月鏡は胸を叩いて深呼吸し、大急ぎで仕事へと向かった。



 ………………………



「真一文字、「バクフ」の協力者から連絡が入った。ついにテロの時間と場所が決まったらしい」


「!!?いよいよですか」


「クリスマス当日の午後6時、場所は……東京タワー」


「………東京タワー、か。至急テロ対策のチームの編成と準備を開始します」



 喫茶店に残っていた真一文字と小張は真剣な顔つきになると、此方も急ぐように席を立った。

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