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ショーグン・ブレイクダウン  作者: 43番
第一章 2045年
5/46

その5

 アレックス・ローは元々キングスカンパニーの所属ではなかった。ローは地元の大学を卒業後にAI開発研究をメインとしている小さな地元企業に就職した。AIに興味を持ったのは幼い頃クラシックSF映画の名作「2001年宇宙の旅」を見て非常に衝撃を受けたからだという。いつか自分も自我を持ったAIを作ってみたいという夢を叶える為、がむしゃらになって働く日々を送っていた。


 そんな彼の運命を大きく変える出来事が二つ起きた。一つ目は勤めていた会社がキングスカンパニーによって吸収合併されたことである。キングスカンパニーのCEOであるフランク・フリーマンの意向により、ドローンとAIの連携強化を図る為だった。


 元の会社自体の経営が傾いていたこともあってほぼ社員全員がこの吸収合併に賛成したが、合併後間もなくフランクは元いた社員の大半を理不尽な理由でリストラし、他社から引き抜いてきた研究者たちを大量に登用した。

 キングスカンパニーのなりふり構わぬ行為にさすがのローも怒ってフランクに抗議しようと組合を立ち上げたが、外部からの圧力によって完全に握り潰されてしまった。


 以降キングスカンパニーのやり方に疑問を持ちつつも何とかリストラを免れたローだったが、そこに二つ目の運命を変える出来事が起きた。当時の恋人であった同僚のペニー・シーランとの破局である。よくある痴情のもつれといえるが、原因はもっと根深いところにあった。


 何とCEOのフランクがペニーを寝取った上、強引にペニーと婚姻関係を結んだのである。これを耳にしたローは当然大激怒し、ペニーとフランクに事の真偽を詰め寄った。が、これまたあっさりと潰された上、フランクの報復人事としてAI部門からドローン開発部門へと正当な理由なく異動させられたのである。


 ドローン開発部門に移ってからはロー自身、仕事に対する情熱を失い鬱々とした日々を送っていた。そんな中である日ドローン開発部門の視察にフランクがペニー同伴でやって来た。それを見て感情を抑えられなくなったローは周囲が制止するのを無視してフランクに再び詰め寄ったのである。

 人事の件とペニーの件で抗議するローに対して一切悪びれることなく、しかも小馬鹿にし続ける態度を取ったフランクについにローは怒りに任せて思い切り拳を見舞った。



「…で奴の前歯を3本ほど欠けさせてやった」


「…凄いエピソードですね。今のアレックスさんからは全く想像つかない」


「社長を殴ってよくクビになりませんでしたね」


「まあ対外的に見て社長に非があったのは明白だったし、AI部門に残してきた仕事の中で私にしか取り扱えないデータがあったからフランクとしても無下にできなかったのが本音じゃないかな。ペニーの手前もあったろうしな」


「で、その結果が今回の日本支部への出向ですか…」


「そうだな。今回も報復人事だろうが、別に後悔はしてない。奴に一矢報いただけでも十分だ」



 ローはフランクを殴ったときのことを思い出したのかクックッと笑っている。月鏡と北條は唖然としつつ、ローがキングスカンパニーから厄介者扱いされているのか何となく分かった気がした。ロー自身に問題はなかったはずだが、図らずも敵に回した相手が悪すぎたのだろう。



「…あっユーシュー君、ごめん。私先にいくわ」



 北條がカフェの壁に掛かった時計を見て、慌てる素振りを見せた。既に時計の針は14時半を回っている。



「15時から先方とリモート会議の約束してたんだった。早めにいって準備しなきゃ」


「俺もいきます」



 月鏡も立ち上がろうとしたが、北條にすぐ止められた。北條の視線の先にはローがいる。



「ユーシュー君はアレックスさんをお願い。アレックスさんも15時から別の会議室で打ち合わせがあるから案内してあげて」


「ええと…」



 月鏡はローをチラリと見た。ローは手を振って構わないとジェスチャーしている。北條はローと月鏡に頭を下げて先にカフェを出た。ローと二人きりになった月鏡は若干会話に詰まる。

 ローは月鏡の困った様子を見たのか、打ち合わせの時間まで少し散歩したいと提案してきた。月鏡は慌てて同意してローと一緒にカフェを出ることにした。



「すみません、お気を使わせて」


「全然構わんよ、人と会うと大体こんな感じだ」



 ローからのフォローを受けつつ、月鏡はカフェの左隣にある公園へとローを誘う。カフェの出入口から公園へ歩を進めようとしたとき、突然背後から凄まじい爆音と衝撃と熱波が月鏡とローに襲い掛かった。全身に風圧を受けた月鏡は遥か前方まで吹き飛ばされるとそのまま地面に叩きつけられる。

 ショックで意識を失う直前に月鏡が見たのはさっきまで居たカフェが轟音と黒煙を吐きながら燃え盛る光景と悲痛な叫び声を上げてあちこちに逃げ惑う人々の姿だった。

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