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ショーグン・ブレイクダウン  作者: 43番
最終章 ヒーロー・ネバーダイ
49/51

その3

「真一文字さん、何故此処に??」


「月鏡さんこそ何故此処にいるのです?」


「すまない、月鏡は俺が無理に呼んだんだ」



 お互いに驚いている月鏡と真一文字に対して小張がフォローする。どうやら小張と真一文字は事前に落ち合う約束をしていたらしい。真一文字は事情を察したのか事務的に頭を下げた。



「朝の忙しいところすみませんね、月鏡さん」


「いえ、まさか小張課長と真一文字さんがお知り合いとは存じ上げませんでしたよ」


「まあ…知り合いというか、仕事仲間というか。小張君から聞いたようですね」


「ええ、ついさっき」



 月鏡は出されたコーヒーに口を付けつつ、真一文字と会話する。その横で小張は誰かに連絡しているのか落ち着きなくスマホをいじっていた。その様子に気づいたのか、真一文字が小張の方に顔を向けた。



「どうしました小張君。随分と深刻な顔をしていますが」


「うむ…先程お前も言った通り、「バクフ」が動き始めている。今、俺はその情報を提供してくれた「()()()」とやり取りしている状況だ」


「協力者?」



 月鏡と真一文字が思わず顔を見合わせる。小張はフーッと息を吐くと、月鏡と真一文字に視線を向けた。その表情はこの上なく真剣である。



「実は…真一文字、「バクフ」には俺以外にも公安のスパイがいる。俺以上に「バクフ」の内部に入り込んでおり、今やショーグンの片腕に近い人物だ。そして無論「L.O.S.T」にも精通している。その人物こそが「協力者」だ」


「…なるほど。私にも明かせないもう一人のスパイがいたという訳ですか」


「ま、待ってください。その「協力者」ってもしや……」



 月鏡は慌てて会話に割って入る。やはり北條が…彼女が関わっている…。信じたくない気持ちで小張の言葉を待つが、月鏡の耳に飛び込んできたのは予想外の人物の名前だった。



「……月鏡もお前も覚えているだろう?キングスカンパニーの東京支社に所属して一緒に働いていた…槍田(やりだ)君だ。彼女が「協力者」だ」


「…………えっ??えええ!!?」


「?誰のことだと思ってたんだ?」


「え…いや……何でもないです」



 まさか此処で槍田が出てくるとは。……と言うことはだ、あのキングスカンパニーの東京支社にいた人間は俺以外全員に裏の顔があったということか?

 まさかの真実に月鏡の思考はパンク寸前になる。しかしそんな月鏡の混乱を無視するように、今度は真一文字が会話に割って入ってきた。



「小張君。その「協力者」だが、一体どんな情報を流してきたのですか?」


「ふむ…どうやらショーグンたちは『ウロボロスの終末』事件を再現するつもりらしい」


「……再現、ということは決行の時期はクリスマスですか。そうなるともう残りの日数が少ないですね」


「決行の場所はこれから決めるそうだ。だが奴等を阻止しようにも、こちらも情報や準備がいる」



 真一文字と小張が真剣に話し合う横で月鏡はこの状況に未だ追いつけていなかった。そもそも本来月鏡は無関係のはずだ。だが公安やショーグン、果てには「L.O.S.T」との繋がりが出来上がった時点で避けられない立場となった。月鏡が此処で出来ることは何があるというのだろう。



「月鏡さん、お願いがあります」


「は、はい!?」



 不意に真一文字から声を掛けられ、月鏡はビクッとなる。もう後戻りできる状況ではないことを月鏡は嫌でも感じざるを得ない。



「………無理と危険は承知ですが、彼等のテロ決行の日にショーグンと直接対峙してもらいたい」


「え!!??、…何故、何故俺なんです?只の一般人のはずなのに…俺には何もないのに…」


「だからこそです。貴方はショーグンのテロや襲撃に巻き込まれた当事者ながら公安とも「L.O.S.T」とも直接繋がりを持たない唯一の人物。ショーグンは何よりもテロの不発を恐れている。よってこれまで以上に慎重になっているはずです。だが貴方が出てくることでさすがのショーグン、神仏無(かんぶない)も油断するかもしれない」


「そ、それは…」


「………それに、斑鳩記者には連絡を取りましたか?」


「!!!」



 月鏡の反応を見て何かを確信すると、真一文字は目を伏せた。そして徐にスマホを取り出すと、とある画像を月鏡に見せた。その画像を見た月鏡は席から崩れ落ちるかの如く戦慄した。



「…ば、バカな……こんなことが…!!」


「どうやら「L.O.S.T」が先手を打ってきたようですね。警告とかふざけたタイトルでこの写真を我々に送り付けてきましたよ」



 下を向いて怒りに震える真一文字のスマホには人気のない路上で胸を撃ち抜かれて斃れている斑鳩記者の姿が写っていた。

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