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ショーグン・ブレイクダウン  作者: 43番
第三章「L.O.S.T」を探せ
36/51

その1

今回から第三章です

 世間を震撼させた「ウロボロスの終末」事件であったが、その後はろくに捜査の進展がないまま、いたずらに月日だけが過ぎていった。その間テロに対する各方面の警備の強化や法案の整備が進み、仮の形ではあるが少しずつ平穏が戻りつつあった。事件後のキングスカンパニー側の不自然な動きはあったものの被害者への全面救済や積極的な支援活動を打ち出したことで世論からそこまで叩かれることはなく、疑問の声も次第に鎮静化していった。


 しかし、そんな状況でもまだ「ウロボロスの終末」事件と姿を消した神仏無かんぶないを追う者たちがいた。月鏡と真一文字、全てが謎に包まれた「L.O.S.T」である。


 月鏡は生命保険会社の営業を続ける傍ら、神仏無そして「L.O.S.T」に関する情報を集め真一文字と密に連絡を取っていた。北條とは「ウロボロスの終末」事件以降はやや疎遠になったが、それでも近況報告だけは欠かさずに行っていた。直近だと「ウロボロスの終末」事件から半年後に北條はキングスカンパニーを退職したらしく、身内の興した会社に身を寄せているとのことだった。


 アレックス・ローについては「ウロボロスの終末」事件以降、完全に連絡が絶たれており安否さえも把握できない状態となっていた。日本よりもキングスカンパニー本社のあるアメリカの方が遥かにテロの被害は大きく、月鏡の頭の中に最悪のシナリオが過っていた。


 そして…事件から三年が経過しようとしていたある日、月鏡は仕事終わりに突然真一文字に呼び出された。



「ちょっとこれから会えますか?」


「はあ…今のところはスケジュールは空いているので大丈夫です」


「了解です。一時間後に貴方の職場の最寄りの駅まで迎えに行きます」



 真一文字は用件を端的に伝えるとあっさり電話を切った。月鏡は指定通りに駅へ向かうと、真一文字が来るまでの暇つぶしに駅の中にあるハンバーガーショップに寄って小腹を満たすことにした。


 店内に入ってハンバーガーとホットコーヒーを注文した月鏡は駅のロータリーが見える窓際の席に座った。コーヒーを飲みながら行き交う車たちを呆然と眺める。

 しばらくすると見慣れた1台の黒塗りの車が駅のロータリーへ入ってきた。運転席に座る真一文字の姿を確認すると月鏡はハンバーガーとホットコーヒーを腹に収めてそそくさと店を出た。



「お待たせしました」


「あ、どうもありがとうございます」


「では参りましょう」



 月鏡が助手席に座ると車はゆっくりは発進した。ふと真一文字の方を見ると、心なしか機嫌が良さそうに見える。月鏡が不思議そうに首をひねると、気づいたのか真一文字が話を振ってきた。



「これから人に会ってもらおうと思いましてね」


「人?俺がですか?」


「はい。「L.O.S.T」の件での重要参考人です」


「何ですって!?」



 月鏡は思わず身を乗り出しそうになった。真一文字はにこやかに月鏡を制して今回の経緯を説明する。



「今回会ってほしい相手はとある新聞社の記者です。本当に偶然ですが、数年前に「L.O.S.T」の存在を知ったらしく、ずっと追っているらしいのです」


「……新聞社の記者」


「本人曰く政治的な圧力が新聞社に掛かったらしく、危険視された結果当たり障りのない部署へ左遷されたのですが、どうしても諦めきれないとのことで私に接触してきたそうです」


「なるほど…確かに会ってみる価値はありそうですね」



 月鏡が真一文字の話に賛同する。どういう形であれ今の月鏡と真一文字には一人でも多くの味方を付ける必要がある。何かしらの情報を握っているのであれば、聞いてみるだけでもいいかもしれない。



「もう少ししたら待ち合わせ場所に到着します。互いにまだ信頼できる関係ではないですが、今回は大きなチャンスと私は踏んでいます」


「…そうですね。「L.O.S.T」自体が雲を掴むような存在ですからね。少しでも尻尾が掴めるといいですが…」



 不安と期待が入り混じったまま、二人が乗った車は待ち合わせ場所である町外れの倉庫街へ着こうとしていた。

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