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ショーグン・ブレイクダウン  作者: 43番
第二章 ウロボロスの終末事件
35/51

その14

「仰る通り「L.O.S.T」はこの街、いやあらゆる場所へ潜んでいる。もしかしたら何処かで接触していたかもしれない。或いは…貴方とか?」



 真一文字が助手席の月鏡をチラリと見る。真一文字の視線に対して月鏡は大慌てで首を横に振った。



「俺は「L.O.S.T」じゃありませんよ!大体もしも俺が「L.O.S.T」だったら神仏無がカフェのテロ事件を起こす前に何とか対処するじゃないですか!」


「フフ…失礼。冗談のつもりでしたが、気分を害されたなら申し訳ない」



 語気を強めて否定する月鏡をからかうように真一文字は笑った。月鏡はやや不服そうな表情をしたが、すぐに気を取り直して車窓に左肘をついた。

 車窓の景色を眺めるといつの間にか中心部の高層ビル群が消えて見通しのいい光景が広がっているのが見える。真一文字の車は中心部を離れ、郊外のショッピングセンターの方面へ向かっているようだ。



「ちょっとしたドライブのつもりでしたが、少し長くなりましたね。一旦休憩しましょう」



 真一文字は郊外への道路脇に建てられていたコンビニの跡地に入って車を停めた。コンビニだったと思われる外観とロゴが取り外された看板の跡が寂し気に映る。跡地の一角に自動販売機が数台並んでいたので月鏡と真一文字は車を降りて飲み物を購入することにした。



「一杯奢りますよ」


「いや…さすがにそれは…」


「今回誘ったのは私です。どうぞ遠慮なく」


「はあ…」



 真一文字に押される形で月鏡はコーラを奢ってもらった。二人は並んで車の横に持たれ掛かると買った飲み物を黙って飲み干した。僅かばかりの沈黙の後に真一文字が口を開いた。



「「L.O.S.T」が活動を開始したとなると我々も動く必要がありそうです」


「動く?でも今、下手に動いたら我々が「L.O.S.T」の標的になり得るんじゃないですか?」


「その通り。しかし考え方によっては「L.O.S.T」を利用することも出来るのではないかと思います」


「「L.O.S.T」を利用する…?」



 真一文字の言葉に月鏡は首をひねる。真一文字は飲み干した飲み物の容器を自動販売機横のクズかごに入れると再び語り掛けた。



「「L.O.S.T」の存在は我々にとっては諸刃の剣。今後の立ち回りによって敵にも味方になり得る。そこで先手を打つ」


「先手…?」


「これから「L.O.S.T」を徹底的に探す。そしてあわよくば「L.O.S.T」と手を組む」



 真一文字の言葉に月鏡は腰を抜かしそうになる。真一文字は本気で言っているのか。だとしても無茶苦茶な提案である。月鏡の懐疑的な視線に真一文字は笑った。



「「L.O.S.T」は確かに完全に秘匿された存在。政府および警視庁の一部の上層部しか隊員のリストを知る術はありません。しかしこれまでに神仏無が現れた際に「L.O.S.T」は何かしらの痕跡は残しているはず。それを手繰っていけば「L.O.S.T」の尻尾を掴めるのではないかと考えています」


「………そう上手くいきますかね?」


「正直分かりません。しかし必ずや「L.O.S.T」を我々に引き込む」



 真一文字は深呼吸すると、ゆっくりと天を仰いだ。いつの間にかヒラヒラ白い粒のようなものが空から落ちてきている。白い粒が月鏡の頬に当たるとほんのりと冷たい感触があった。「ウロボロスの終末」事件のときと同じような粉雪が辺りを少しずつ白く染め始めている。



「…味方は多いほうがいい」



 真一文字は自分に言い聞かせるかのようにポツリと呟いた。

第二章はこれで完結です。

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