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ショーグン・ブレイクダウン  作者: 43番
第二章 ウロボロスの終末事件
29/51

その8

 警備用のドローンたちを一瞥した神仏無かんぶないは静かに笑いを浮かべた。どうやらこの状況下でもまだ余裕を持っている。神仏無のバカにしたような態度に月鏡は苛立ちを見せた。



「この程度で私を追い詰めたつもりか?むしろ追い詰められているのは貴様の方だ」


「まだそんなことをいうのか!」



 月鏡は神仏無に気づかれないようにスマホで真一文字に向けてメッセージを送った。もし彼がメッセージを見てくれたなら一番に駆け付けてくれるはずである。せめてそれまでの足止めになってほしいところではあるが…



「無駄だ。いくら助けを呼ぼうが、今更意味のない行為だ」



 神仏無は見透かしたようにいうと先程月鏡に向けて発射した右手のレーザーを警備用のドローンへ向けた。警備用のドローンたちは怯むことなく神仏無へと距離を詰めていく。

 神仏無がレーザー出力を上げようとしたとき、突如再び警備用のドローンたちの動きが止まった。またしても機能不全を起こしてしまったようである。これを見た神仏無がクククと嘲笑する。



「ククク……下らんポンコツ共だ。キングスカンパニーの量産品にしては役立たずもいいとこだな」


「な、こんなときに…」



 月鏡の旗色が悪くなる。神仏無は止まったドローンたちを押しのけると、未だ動きが取れない月鏡の元へと歩み寄った。そして今度は右手のレーザーの照準を月鏡の額に当てる。どうやらトドメを刺すつもりのようだ。



「…俺のことは放っておくつもりじゃなかったのか?」


「少々気が変わった。これ以上貴様を生かしておくと今後の我々の活動に支障が出かねん。安心したまえ、すぐに楽にしてやろう」



 神仏無の右手の人差し指の先が光り輝いていく。万事休すかと月鏡は覚悟を決めて目を閉じた。とその時、停止していた警備用のドローンたちが一斉にサイレンを鳴らし始めた。月鏡の周りだけではない。先程他の通りで立ち往生していたドローンたちも一斉にサイレンを鳴らしているようである。周りから聞こえてくるサイレンの余りの音の大きさに耳を塞ぎたくなる。



「うるさい!ポンコツ共!!」



 神仏無はサイレンを鳴らし続けているドローンに向けて右手のレーザーを発射した。レーザーはドローンを貫通し、後ろに待機している数体のドローンにも命中する。レーザーを受けたドローンはそのまま機能を停止したのかピクリとも動かくなった。



「やれやれ、全くどうしようもないクズ鉄だ。キングスカンパニーも利益の為に此処までの不良品を出回らせるとはな」



 神仏無が吐き捨てるように呟いたとき、機能を停止したはずのドローンたちが一斉に爆発を始めた。しかも神仏無に攻撃されたドローンだけでなく、サイレンを鳴らしていたドローンたちがまとめて爆発を始めているようである。あちこちで爆音と炎、人々の悲鳴や怒声が上がってきている。月鏡は爆風に巻き込まれまいと大急ぎで義足の出力を上げて、通りの脇にあるシャッターの閉まった店の中へと強引に突っ込んだ。



「チッ…神仏無のヤロウ…寄りにもよってこんなときに起爆しやがって…」



 間一髪爆風を避けた月鏡の視界に飛び込んできたのは見たことのないくらい慌ててその場から逃げようとしている神仏無の姿だった。神仏無はスマホらしきものを取り出すと何処かへ怒りの声を上げて連絡している。



「どういうことだ?!まだ此方から指示は出してないぞ!」


『…ショーグン…我々ではない。恐らく別の組織の仕業と思われる。此方も被害多数だ。急ぎ撤退命令を…』


「…何?……そうか。どうやら先を越されたようだな。…分かった、撤退しよう。後ほど合流だ。被害状況も報告してくれ」


『了解。…では後ほど…』



 通話を終えた神仏無は警備用のドローンたちの一斉爆発を巧みに掻い潜ると、ゆっくりと月鏡の視界から消えていった。そして去り際に一言、月鏡に向けてハッキリと聞こえるように呟いた。



「命拾いしたな。だがこれは終わりではない。幕開けなのだ」



 鋭い言葉に月鏡の背筋が凍る。神仏無が消えてから間もなく真一文字から連絡が入っていることに月鏡は気づいたが、呆然としたまましばらく動くことができなかった。

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