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ショーグン・ブレイクダウン  作者: 43番
第二章 ウロボロスの終末事件
28/51

その7

 雑貨店を出た月鏡は神仏無から渡された傘をさすと、再び雪の降りしきる商店街の中を進むことにした。だが、その横には月鏡を監視するかの如く神仏無が付いてきている。二人は無言でただ只管歩き続ける。その光景は何とも異様でとてもクリスマス気分とは程遠いものだ。しばらく進むと月鏡は狭い人通りの少ない路地へと入った。



「…俺に何か用なのか?」



 月鏡が重い口を開いた。神仏無はゆっくりと前に進むと不意に振り返り、月鏡と対峙する位置に立つ。その表情は最初に会ったときと変わらない、殺気に満ち溢れたものだ。月鏡の背筋が凍る。



「まだ私を追っているのか?無駄なことを…そんなに早死にしたいのか?」


「このまま泣き寝入りして生きろとでもいうのか?!俺は、俺は…テロリストの駒じゃない!」


「大したこころざしだが、命は大切にした方がいい。中途半端な正義は命を縮める」


「テロリストのお前がいうな!」



 月鏡は激昂すると、傘を畳んで武器代わりに神仏無へと向けた。神仏無はまるで動じることなく、淡々と続ける。



「無駄だ。此処は既に我々『バクフ』の手の内にある。此処を吹き飛ばすのも朝飯前だ」


「……まさか、今からテロを起こすつもりなのか?!」



 神仏無の言葉に月鏡が固まる。神仏無はニヤリと笑うと隙をついて月鏡の傘の先っぽを右手で掴んだ。そして右手に力を込めると強引に傘を折り曲げてしまった。月鏡は驚愕して折れた傘を凝視する。そして神仏無の右手に目をやるとその手から煙のような蒸気が溢れ出ていることに気づいた。



「…アンタ、何者だ?その手は何なんだ?」


「フン、中々いい着眼点だ。お察しかもしれんが、私は体の半分を機械に入れ替えている」



 神仏無が右手の袖をまくると、無機質なメタリックに輝く腕を見せた。更に胸を開けるとこれまたブルーの装甲が見える。神仏無の正体に月鏡は仰け反りそうになる。



「サイボーグだと?」


「各地の戦場を回っている過程で生身の体を失っていってね。姿はいびつだが、個人的には満足している体だよ」



 そういうと神仏無は右手の人差し指を月鏡へ向けた。月鏡が怪訝な表情を浮かべていると人差し指の先が赤い光を放つ。そして光の中からビームが放出されると月鏡の義足を貫いた。



「うわっ!!」



 義足を破壊されバランスを崩した月鏡が雪の降りしきる地面へと倒れ込む。路面の冷たさに顔を歪めるが、それよりも神仏無からの攻撃の方に意識が集中していた。月鏡が倒れたところへ神仏無がゆっくりと近づく。



「分かっただろう?無駄なのだ。幾ら貴様が足掻いたところで何も変わらない。大人しくサイレントマジョリティーとして生きることをオススメしよう」


「ふざけやがって…!」


「今すぐトドメを刺してもいいが、余計な仕事は増やしたくないのでね。ゆっくりそこで見物していたまえ」


「待て!何処へいく!?」



 月鏡が神仏無を呼び止めるため、這いつくばりながら追いすがる。だが神仏無は意に介さず、そこから立ち去ろうとした。その時、突然パトランプの光とサイレンの音が聞こえてきた。これにはさすがの神仏無も動揺する。



「貴様、いつの間に通報した?」


「…いや違う。俺じゃない。誰かが呼んでくれたんだ」



 助かったと月鏡が安心しかけたとき、路地の前方と後方から警備用のドローンたちが迫ってくるのが見えた。先程まで不具合で立ち往生していたが、復活したのだろう。警察ではなかったが、それでも何もないよりはいい。神仏無はドローンと判明すると冷静さを取り戻し、迎撃態勢を取る。



「これで逃げ場はないぞ、神仏無!」



 警備用ドローンに取り囲まれた神仏無に月鏡が言い放った。

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