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ショーグン・ブレイクダウン  作者: 43番
第一章 2045年
18/50

その18

 二人の銃撃を受けたドローン兵器が煙を吹いてバタバタと床に落ちていく。ドローン兵器たちも内蔵された自動小銃で月鏡とローへ攻撃を始めた。二人はそれぞれ家具の後ろへ隠れて銃弾をやり過ごす。銃弾を受けた家具の破片が辺り一帯に飛び散る。



「中々やるじゃないか、ユーシュー!怪我はないか?」


「オレは大丈夫です!でも実弾を使うのは久しぶりですから当たってるのは正直まぐれです!」


「構わん!だが、此方の弾は限られてる。とにかく隙を見て此処から脱出するぞ!」


「分かりました!」



 月鏡はローと示し合わせてドローン兵器たちの攻撃のタイミングを図る。極力武器の残弾数を減らしたくないところだが、それでも次々と窓から補充のドローンが侵入してくる。少しでも数を減らしていかないとあっという間に取り囲まれて蜂の巣にされるだろう。



「クソ!コイツらどれだけいるんだ?!」


「ユーシュー!弾は幾つ残ってる?」


「あと四、五発くらいでしょうか…かなりまずい状況です」


「チッ…奴等をなめていた…ん?」



 ローが撃ち落としたドローン兵器の一つを見て、あることに気づいた。ローはドローン兵器の攻撃の隙を見てドローン兵器の残骸を拾うと物陰で念入りに何かを調べる。そして何かを確信したのか突然ローの顔は真っ青になった。ワナワナと震えるローの様子を見て月鏡が心配そうに声を掛ける。



「アレックスさん!大丈夫ですか?」


「…ユーシュー。まさかとは思ったが、やはりそうだ。奴の、神仏無(かんぶない)のいった通りだった…」


「えっ?!」


「コイツは…キングスカンパニー製のドローンだ…しかもまだ市場に出回っていない最新型だ!」



 ローがドローン兵器の残骸に刻まれたキングスカンパニーのロゴを月鏡に分かるように見せた。月鏡もロゴを見て驚きの色を隠せない。



「何ですって!?じゃ、じゃあ神仏無は…『バクフ』は既にキングスカンパニーと取引して…」


「ああ。どうやら敵は思いの外、我々の近くまで及んでいたようだ」



 月鏡が下唇を噛んで震える。テロリストの片棒を担いでしまった後悔が過った。ローもやり場のない怒りから残骸を握り締めて睨んでいる。だが、急いで頭を落ち着かせるとローは自身のスマートフォンを取り出してロゴを写真に収めた。そして他のドローン兵器たちの挙動を確かめる。



「我々をバカにするのも大概にしてもらいたい!こんな所でやられるつもりはない!」



 ローが思い切りドローンの残骸を物陰から投げ捨てると、他のドローン兵器たちが攻撃の狙いを残骸に定めた。この隙を見計らってローが月鏡に合図を出す。



「今だ!行くぞユーシュー!」



 月鏡とローは同時に家具の物陰から出ると、急いで部屋の出入口へと走った。ドローン兵器たちが二人の背後から銃撃する。何発かが月鏡とローの背中を直撃した。体に痛みが走るが、何とか堪えると出入口の扉を閉めてホテルの廊下へと脱出することに成功した。


 ドローン兵器たちを部屋の中に閉じ込めた二人は背中を壁に付けるとその場にしゃがみ込んだ。ハアハアと息を切らせながらも何とか気を落ち着かせようとする。しかし銃撃を受けた背中からは血が滲み、病み上がりに無理やり動いたせいもあって体のあちこちから痛みが走った。月鏡とローの顔が同時に歪む。



「生きてるか?ユーシュー…」


「ええ、何とか…ですけど」


「良かった、一応約束は守れたな…」



 ローが力なく微笑むと一連の銃声を聞き付けた他の泊まり客やホテルの従業員たちが二人の元に集まってきた。皆一様に満身創痍の二人を見て唖然としている。ローは驚いているホテルの従業員に部屋の状況を伝えると、従業員の一人が急いで応援を呼びに行った。他の従業員からすぐに救急隊が来ることを告げられると月鏡は安心したのか、意識が遠退き掛けた。

 が、しかしホテルの従業員がローの部屋の扉を開けようとしたときのローの叫び声で月鏡は目を覚ました。



「待て!まだ開けては駄目だ!」



 ローの制止も虚しく従業員が扉を開けた途端、部屋にまだ残っていたドローン兵器たちが一斉に廊下へとなだれ込んできた。ドローン兵器たちは自動小銃を月鏡とローに向けて突っ込んでくる。それを見た泊まり客らが悲鳴を上げて逃げ惑い、一瞬にして廊下は大混乱に陥った。



「まずい!このままではホテルの客や従業員に犠牲が出る…」


「チッ…ふざけやがって」



 ローが手に握り締めた拳銃をドローン兵器に向けたとき、月鏡が自身の下半身に装着したパワードスーツをいじり出した。すると月鏡のパワードスーツの両足から白煙が勢いよく吹き出し始める。無理やり出力を最大まで上げて暴走させたようだ。



「アレックスさん!俺に掴まってください!」


「ユーシュー?!何をする気だ??」



 月鏡は手負いのローを抱き抱えると両足で思い切り廊下の床を蹴りつけた。蹴りつけると同時に月鏡の両足のパワードスーツから火が上がり、その勢いで二人の体は浮き上がる。そのまま噴射しながら二人は一気に廊下の先まで飛んでいく。余りの勢いに他の泊まり客や従業員を吹き飛ばしながらも追いすがるドローン兵器たちを突き放していった。



「やりましたよ、アレックスさん!」


「いやユーシュー、まずいぞ!この先は行き止まりだ!」



 ローが慌てて廊下の端にある窓ガラスを指差す。しかし月鏡は迷うことなくこのまま進んでいった。



「ユーシュー?!」


「すいません、このまま飛びます!というか俺もコイツの止め方を知りません!」


「…いい答えだ!こうなったらとことん付き合うとしよう!」


「それじゃいきますよ、アレックスさん!」



 腹を括った二人が廊下の端の窓ガラスを突き破ると、そのまま外へと飛び出した。

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