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不幸の檻  作者: みあ
傾国の美女
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 朝、後ろの入り口から教室に入り、一番後ろの自分の席へ向かうと、机が水浸しになっていた。誰がやったとかはわかっているので省略。クスクス笑っているのが聞こえる。


「……はあ……」

 

気が大きくなったわけではない。彼を使うようで、それは屈したようで腹が立つ。が、このままやられっぱなしなのはそれよりも腹が立つ。


足を上げて、机の縁に足をかけ、そのまま少し押すと、バタンッと机がひっくり返る。すると教室がざわつく。


「……ねぇ、これ、誰? 」


「だからやめた方がいいと言ったのに……小島さん。でももっとも、そんなことされる方が悪いと思うけど」


とクスクス笑ったのは主犯であろう鈴井奈莉花。で、やらされたのは小島というらしい。クラスメイトの名前なんていちいち覚えてられない。


「ふぅん、じゃあ、小島さん?これ片付けてよ」


ゆりの時のように助けようなんて思わなかった。ゆりは、抵抗できたのだから。影響力が違っても、その勇気に違いはない。


「な、なんで…!私は……」


彼女のところまで歩き、そっとこう言う。


「やらされたから自分は悪くないって?冗談じゃない。鈴井奈莉花の言いなりになったのも、これをやったのも自分のことでしょう? 」 


すると彼女は青ざめて机を拭きだした。……これでは私が虐めている、と言われるだろうか。悉くクラスメイトとは上手くいかない。確実に鈴井家のせいだ。しかしまあ、これ以上根も葉もない噂が増えてもなんてことないのだが。


 朝からとんでもなく疲れたが、今日はもう一つやらなければならないことがある。彼が昨日渡してきたテストの入った封筒。これを担任に出さなければならない。


「あの……これ、出すように言われたんですけど……」


「何を言ってるんですか? 」


担任は中を開いて、一枚のメモ用紙を見た瞬間、青ざめてしまった。


「わ、わかりました……」


本当に了承してしまった。彼の立場の強さが分かる。まあ、彼がつくった地位ではないが。傲慢になるわけでもなく、はたまたその地位を嫌悪するわけでもなく……あって当たり前のものとしていた。だから、それに対しては好感が持てた。


 昨日の取引は、恐ろしいほどこちらに有益なものだった。何か裏があるかもしれない、と思うほどに。何が目的なんだろう。私ができる見返りなんてたかが知れている。


あーあ、寝るのはなるべく後にしたいよなぁ……それをとったらもう何もないし。


今更、自分の尊厳だのなんのは気にしてられない。目的のためなら純潔もいらない。自分の持っているもの、使えるものを使っていかないといけないから。約束を守れないまま死ぬなんて、一番やってはいけないことだ。この約束を守るために今生きているのだから。



 放課後、今日も撮影があったのでビルに向かう。先日、他のモデルが何やら話しているのが聞こえた。それによると、私の迎えの車が高級車ということと、私の両親がもう死んでいることからパトロンがいるのではないか、ということだった。要はパパ活みたいな…実際そうではないが、当たらずとも遠からずのような……実際、親がいなくて引き取られた身なのに煌明なんて行ってるのがおかしいし、送迎もあるなんて、何事かと思うのは当たり前だ。テレビに出るようなモデルも輩出しているこの雑誌に載っている時点で顔がいいのはみんなわかっている。男一人引っ掛けるくらいなんてことないし、実際、そうしている子も少なくない。だから、私もそれと同じだと思ったのだろう。


まあいいか、別に間違いでもないし。訂正するほどでもないかな……


とか思っていたが、それが他のモデルの子だけでなく、スタッフにも伝わってしまい、注意を受けてしまった。


 ということから、少し足が重かったのだが、今日は今日で別の話題で大盛り上がりしていた。何やら、この雑誌でデビューし、圧倒的な人気を出して活動拠点をアメリカに移していたモデルがいるらしく、そのモデルが先月日本に帰ってきたらしい。そして、彼女が今日ここに来るんだそうな。


「澪ちゃんはもう聞いた?Enaさんが帰ってきた話」


撮影をする前、メイクさんに話しかけられた。


澪……〈園 澪〉は、私のモデルとしての名前。まあ、園田 澪依華からとったんだけども。


「他の子が話しているのを聞きました。…フランスとかじゃなくてアメリカなんですね」


「確か、Enaさんのお父さんがアメリカ人だと思ったよ。雑誌とかで見たことあると思うけどハーフ特有の美人!って感じだよね。澪ちゃんとは系統が違う」


雑誌で見たEnaは、確かに彫りの深い大人の女という感じだった。自分とは系統が真逆と言ってもいい。


アメリカ…何か引っかかると思ったら諒太郎が留学していたのもアメリカだった。といっても広大なアメリカで彼らが知り合いなんてことはないだろう。そうだとしたら世界が狭すぎる。


撮影後、着替えも終わったので帰ることにした。Enaは気になるが、この先は日本で活動していくらしいので、次の機会にでも……と思った。石田さんを呼び出すべく、連絡を入れた。


飲み物でも買って帰ろうか……と自販機に向かう。そこには長身の、ウェーブのかかったダークブラウンの髪の二十代の女性がいた。後ろ姿しか見えなかったが、じろじろ見るものでもないので、石田さんへの返信をしながら、女性が買い終わるのを待とうと思っていた。


「何を買うつもりなの? 」


突然、彼女が振り返って話しかけてきた。突然、というのは少し違うか。話しかけられたことに驚きを隠せなかった。だって、彼女は先程までわだいに話題に上っていたEnaだったのだから!


「!…………水を買おうかと」


そう言うと、彼女は五百円玉を入れ、水を二本買った。そして、その片方を私に差し出した。


「え……? 」


「はい、どうぞ。水くらいなんてことないわよ。それに、ちょうどいいと思ったのよ」


そう言うので受け取ると、彼女は側にあったベンチに座った。


「あなた、園 澪よね? 」


「……そうです。でも、どうして」


「毎号見ていれば誰がどの子かくらいわかるわよ。それに、たくさんの子があなたの噂をしていたわ。それで気になったのよ」


噂……やっぱり訂正しておけば良かった。あの噂では絶対いい印象は持てない。


「……そう、ですか。Enaさんが私の名前覚えていてくださるなんて」


にっこり笑いながら喋ると、大人ウケはいい。だが、それは彼女には通じなかったようだ。


「変に笑うの、やめた方がいいわ。私は無表情のあなたの方が好きよ。……園 澪は本名じゃないでしょう?私は佐伯 瑛奈。あなたの名前は? 」


「……小野寺 恵都です」


「あなたと話してみたかったの。今時間大丈夫? 」


約一ヶ月ぶりの更新です!w

そんなつもりはなかったんですが…


ちょっとこの辺から人間関係が色々変化してくるようなそうでないような……?

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