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不幸の檻  作者: みあ
傾国の美女
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好奇心

 恵都が部屋から出て行った後、そのままソファに寝転んだ。酒には強いので少し飲んだくらいだとほぼ変化はない。


 条件を呑んだのは意外だった。別に蹴ってほしかったわけでもない。こちらに利益しかないからそう提案したまでだ。それに気がついたら彼女は怒るだろう。彼女自体を殆ど知らないので、現状彼女を利用しているだけだ。家のことを抜きにすれば、今のところ、顔がいいことと、性格が好みなことだけわかっている。


 知らない割には興味はある。二年前、初めて会った後からずっと気にはなっていた。でも、当主の思惑通りになってしまってもつまらない。名前の通りの関係だけになると思っているだろうし、自分も元々はそのつもりだったが、案外興味が湧いたので、彼女にとっても都合のいい関係になってみようと思った。


携帯の着信音がする。ソファから起きがあって机の上に放ってあったスマホを取って、スライドして出る。


「なあ、聞いてくれよ。面白いことになった」


『……僕からかけたのになんで自分から話し出すんだよ…昼から飲んでるんじゃないだろうな? 』


唯一の友人に電話越しに呆れられる。桜井健人…高校時代からの友人だ。


「もう今日はなんもないんだよ。今日もこの時間から飲みたくなるくらい嫌気が差す話ばっかりだったさ」


まあそもそもこの苗字じゃすぐに御曹司だってバレるし、目に見えるように贔屓されるのも同期の反感を買うには十分だった。


『…入社して一ヶ月経ってないのに出世が約束されている身は大変だな。それで、何が面白かったのさ?今の話じゃまるでそれとは程遠いじゃないか』


「ほら、前言ったろ?当主が寄越した愛人の話。あいつが案外面白かったんだよ」


『……よかったじゃないか。散々ボロクソ言ってたけどな。年下の子だったよな?いくつなんだ? 』


彼には、高校時代家の愚痴から何から全て話していた。勿論、恵都のことも話している。家から支給された妾なんて真っ平だ、と当時は言っていたのだ。


「んー、高二だったかな?煌明の制服着てた。入れさせられたんだろうけど」


『え、未成年じゃん。犯罪…ってならないんだろーな、お前の家じゃ。可愛いかったか? 」


「まあ、顔はいいね。雑誌の表紙に出そうな顔してる。モデルやってるんだっけかな?…あ、あと帝啓って成績改竄してるっぽい」


『まじか…まあやりかねないよね。お偉いさんの子供ばっかだし。自分の子供の成績が悪いなんて周囲に知られたらたまったもんじゃないし。…そういうお前はどうなんだ? 』


「さあね。もう終わったことだし。……というより、何か用事あったのか? 」


先に自分から話を始めてしまったせいで、健人の目的を聞いていなかった。


『あ……そうだ、それだよ。六月に毎年帝啓祭があるだろ?行かないかな〜って思ってさ』


文化祭に別に思い入れは全くないが、健人と会える機会もなかなかない。


「日程は……今んところ大丈夫。別にそんなに面白いもんでもないだろ…」


『いいじゃないか。お前、大学生の頃はアメリカ行ってたからなかなか会えなかったし、今後仕事が忙しくなってまた会えなくなるだろ?遊べるうちに遊んでおこーぜ』


考えていることは一緒か。それなら断ることもない。というより、元から断るつもりなんてなかったが。


「……あ、そういえばっていうか、あいつは現役か」


『ああ、さっきの子か。ちょっと興味あるなぁ。お前が他人に積極的に関わることってあんまりないだろ? 』


そうでもないと思う…と言い返したかったが、高校生の頃は友達という友達は健人くらいしかいなかった。……今もだが。


「女だったら関わるけど、男はな……」


というのが本音だった。


『お前…なんて事言うんだ。そういや、お前昔全然接点ないような学校の彼女いたよな!?何だったんだ、あれ』


「……どれのこと? 」


『おまっ…あの子だけじゃないのかよ!しかも“どれ”だなんて! 』


正直、何人かとそういう関係になったのでいつの話なのか、誰の話なのか。そもそも正確な数すら記憶していない。それにあの時に限った話じゃない。


「まあ……色々とエピソードはあるけども、どれの話なのかいちいち覚えてないんだよな。混在してる……」


『いや、どうかと思うけどな!?若干そのエピソード気になるけども!……恨み持たれて刺されるなんてことにならないでくれよ?』 


「ガチの修羅場だな。それはそれで笑えるけど」





 通話を切った後、石田が部屋に入ってきた。何か用があったのか、と思っていたら、頭をぶん殴られた。


「お前…何すんだよ」


「何って……未成年の前で飲酒するとは馬鹿なのかな、と。それに真っ昼間から」


彼女は最早親の代わりのようなもので、昔からめちゃくちゃ怒るし、殴るし……よくとまあ、血も繋がってないのにこんなに干渉してくるものだ。当主も夫人も、血が繋がっていても全く興味も示さないのに。


「あっちがいいって言ったんだからいいだろ。てか、なんか用があって来たんじゃないのか? 」


「そうですね……あなたが何かやらかしてないか、心配になって来てみましたが、恵都さんはもう帰ってしまいましたし、我が主人は論外ですね」


主人とは言っているが、そんな扱いはあまりされていない。衛藤もそうだが、業務は完璧にこなすが、扱いは酷い。


「まあ、というのは半分冗談でして」


「つまり半分はガチなんだな? 」


その返答には無視して、はあ、と溜息をついた。


「……大奥様が、『諒太郎さんは上手くやれているのか』と仰られたのですが、全く会社の話なぞしないものですから、返答に困ってしまいまして。そしたら『あの女に飼われているだけあって使えないのね』とおっしゃられまして」


「面倒くさいババアだな。上手くやってなかったらお前の教育が悪いんだろ」


自分の都合のいい人形になるように育てたのはあの人だ。自分の言う事を絶対聞くようにと厳しく育てられた。しかし結果はこの通りだが。


「まあ適当に煽とけよ。あれでも影響力はまだあるんだから。あの爺さんが死ぬまではよっぽどのことがない限り現状が変わることはないだろうな」


「……大奥様より、奥様の方が……いえ、なんでもありません」


石田は恐らく、前当主夫人より、夫人の方が気にしている、と言いたかったんだろう。嫁姑の仲の悪さは天下一だ。跡継ぎの取り合いに負けた夫人は子供のことなど全く忘れて自由に振る舞っている。そもそも生まれた実家の派閥が違うのだ。仲が良くなれるわけがない。


「なんでもいいさ。どちらにも思い入れはないんだから。死ぬほど自由にしてる夫人が羨ましいよ」


同じ家にいるのに、二ヶ月に一度見るか見ないか。外出しているか、部屋にいるかのどちらかだ。遊び呆けている、と言えばそうなんだろう。男をつくっている、との噂もある。どうせ彼女の夫である当主も女を何人も囲っているのだから、大層な話でもない。彼女の出身が、三条家と肩を並べるほどの大企業の二階堂家というだけあって、当主も大きくは出られない。前当主が死ねば、彼女は下手をすれば当主よりも影響力を持つかもしれない。


「……そんなふうに言ってはいけないと何度言ったらわかるんですか」


「事実じゃないか……というか石田の愚痴が本題かよ」


今のところ、愚痴しか聞いてないことを思い出した。


「ああ、違いますよ。今週末食事会をするから空けておくように、と」


「……随分と急だな。やなこった」


「先がさほど長くないでしょうし、行けるうちに言っといた方がいいのでは? 」 


さらっと恐ろしいことを言う。恐ろしい、というのは、先が長くないことではなく、それを言ってしまったこと。


「……お前、聞かれたらマジな方で首が飛ぶぞ? 」


「聞かれませんよ。それと、大奥様の目的は恐らく恵都さんのお話でしょうね」


「はあ……面倒ったらない」

もうちょっと先に書くつもりのものを書くことになりました。この話からこのくらいの字数にしようかなと思っています。

ギャグ要素…?みたいなの入れてみたいですが、上手くいかなくて……

会話多すぎでしたね…

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