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不幸の檻  作者: みあ
小話
49/62

尖晶石

 外は雨だ。晴れていても、休日二人とも外へは出ることが少ない。専ら、自分は本を読んでいるし、澪依華は大学のレポートをやっていた。


キリのいいところで、視線を本から外し、彼女の方を見る。うーん、とノートパソコンの前で顰めっ面をしている。これは当分終わらなさそうだ。


さら……と顔の方へ落ちてきた髪を耳へかけた。


その時、見覚えのない輝きが彼女の耳にあることに気がついた。


ロイヤルブルーのストーンのような……


「ピアス、開けたの? 」


集中していたせいか、暫く返答がなかったが、それに気がつくと、少し頬を染めて、こちらを向いて嬉しそうに笑った。


「……ふふっ、やっと気がついた。いいでしょう?一昨日開けたの! 」


どおりで、今日は何かもの言いたげにこちらを見るなぁ、と思ったのだ。


「一昨日って…出張行ってた時? 」


一昨日、昨日は出張で留守にしていた。その間にそんなことをしていたらしい。


「うん…ちょっと驚かそうと思って。それに、ピアス開けるなんて言ったら止められそうだし…」


恐らく、その場にいたら止めていただろう。ここ数年で彼女に対して恐ろしく過保護になっていることは否めない。


「まあ…いい返事はしなかっただろうね。でも似合うね、その色。澪依華は深い色が似合う」


そのロイヤルブルーとか、ボルドーみたいな。


「…!ほんと?ママはね、赤いリップがよく似合ったの。私も似合うかな? 」


「多分ね…」


今度買ってみようかな〜、と嬉しそうにする彼女を見て、俺はなんとも言えない気分だった。


「………またそんなことしたら男が寄ってきちゃう…」


「なんか言った? 」


「……いいや? 」


もともと顔がいいのに、最近は化粧をするようになったから、恐らく大学でも人を惹きつけてるんじゃないか。


惹かれている男の中に自分が入っているのは否定はしないけど。


「……こういう、何もない家に2人でいる時間、私凄く好き」


横に寄ってきてもたれかかりながらそう言う。


「急にどうしたの? 」


「ん〜?なんかさ、たまに思うんだよね。でもこれって、その相手のことを信用してて、尚且つ一緒にいて楽だなって、気を許せるなって思える人じゃないとそう思わないよね」


「まあ、それはそうだね…確かに、家にいて何もしてなくても苦痛じゃなくなったのは澪依華がいるようになってからかもね」


昔は、家にいるのが苦痛で、特に何もしていない時は、色々考えることが多くなるから、寝て過ごすことも多かった。睡眠薬が入らなくなったのばお互いの事情を知った後からだった。


「…じゃあ、家にいて楽しいって、思えるように私がしてあげる。あなたの血筋が必ず不幸になる運命なら、私はその時が来るまであなたを幸せにするよ」


 もともと、ちゃんとした手順でこの関係になったわけではないから、彼女に執着してしまったら重荷になってしまうのではないかと思って気をつけていたのに、全く意味はなかった。今や、もうこれは変えられやしないんだから、人生をかけて幸せにしないといけない、だなんて思い始めている。


  もう全部言い訳じゃないか……


彼女の、後ろ首に手を回して引き寄せ、その桜色の唇に口付けをした。








 春先は雨が多い。先日、持っている本を読み過ぎて飽きたな、と思ったので、会社帰りに本屋へ寄って二、三冊買った。その帰り、信号待ちをしていると横にあった宝石店に目がいった。店先に客の目に入るように飾ってあるのはダイヤモンドばかりだったが、見るだけ見てみようと思い、入る。すると、店員が何かお探しですか?と声を掛けてくる。


「ピアス…を渡そうと思うのですが、できれば、深い色の…」


「でしたら、こちらなんていかがでしょう? 」


そう言って店員が出してきたのは、雫型のレッドスピネルが釣り下がった銀のピアスだった。シンプルなデザインだが、その分真っ赤なスピネルが映えた。


きっと似合うだろう。似合うどころではないかもしれない。



「おかえり。遅かったね、お疲れ様」


ソファに座っていた彼女が振り返ってそう言った。


「ただいま。本買いに行ってたんだよ。あと、欲しいものがあって」


側から見たら最早夫婦の会話だが、そうするにはまだ気が早い。


「本も、欲しいものも買えた?何欲しかったの〜?珍しいね」


「……はい、これ。付けてみてよ」


差し出した紙袋に彼女は、目を見開いて受け取った。


「…えっええ〜なぁに?」 


「 …………わぁ……綺麗…」


「きっと似合うと思って…どうかな? 」


そう言った途端、彼女黒曜石のような瞳からぽろぽろ涙が落ちてきた。それがどういう感情なのかわからず、別に免疫がないわけでもないのに動揺してしまった。


「え…っと、どうしたの?なんか、あった? 」


彼女はピアスの入った箱を持った反対側の手で涙を拭うと、テーブルに箱を置いて、ソファから立ち上がって俺の首に腕を回した。


「……違うの…嬉しい、って言うのは簡単だけど、それだけじゃなくて…これをくれたことも嬉しいけど、私の為に選んでくれたことも嬉しくて、……そもそも私にとってはここにいることだけでも幸せなんだから、この人は私のことどれだけ幸せにする気なんだって思って…」


喋りながらまたぽろぽろ泣き出したが、まだ続けた。


「…もらってばっかだなって…」


「それは、こっちの台詞だよ。というか、この間澪依華が言ったでしょ、その時が来るまで幸せにするって。あれが自分だけだと思ったの? 」


それが一番言いたかったこと。もうそんなことは三年前に決めていてけど、口に出す機会がなくて、そもそもプロポーズも必要ない関係なせいでお蔵入りしそうなことだった。思っているだけでは相手には伝わらないから、どうせなら言ったほうがいい……これはその為の一つの口実でもあった。 


「あぁ〜、もうかっこいいなぁ!…好きだよ、って言葉が足りないよ…」

尖晶石とは、レッドスピネルのことです

スピネルが八月の誕生石になったのは最近なので時系列的に微妙な点はあるんですが、あんまり考えないということで、、、(ま、まあ、そもそもそこ言及してないし?)

もっとまともないちゃが書きたかった…(2度目)

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