恋愛事情
佳澄ちゃんが今日は学校を休んでしまったので、一人で帰ると思っていたが、一人、一緒に帰らないか、と誘われた。彼は隣のクラスの子で、去年は同じクラスだったので喋ったことはあるし、というよりもクラスでは仲のいい方だった。
久しぶりに馬鹿みたいな話で盛り上がった。でも、彼は何か別のことで用があるようだった。話がひと段落したら聞いてみよう。
「私を今日誘ったのは何か用があるからじゃないの? 」
「え……ああ、…あのさ、園田。俺と、付き合ってほしい」
「へ?何を? 」
「あ〜〜。やっぱ伝わんないよな、去年さ、色々勉強教えてもらったり、行事とかやったりしてたら、園田のこといいなって思うようになって……だから…」
おお、なるほど。そういう話だったか。それは先程の私の問いは彼に失礼だったか。
「……ありがとう。そう思ってもらえるのはすごく嬉しいよ。でもごめんね、ちょっと難しいかも」
これが初めてではない。実際、何人か付き合ったことがあるし。でも、今回は駄目だ。彼が悪いとか、嫌いとかいうわけではない。
好きな人がいるからか? そうらしいね。
「だよなぁ。お前モテるもんなぁ。あ!別にそれはいいけども! 」
「うん? 」
「こんなこと言った俺が言うのもなんだけど、今後も友達として仲良くしてくれませんか! 」
この、切り替えの早いところが彼のいいところだ。
「ああ、そんなことかぁ。それは私もそう思ってるから大丈夫! 」
これで友人関係が終わってしまっては勿体無い。因みに、自分はというと、友人関係よりも深刻なものなので言い出せずにいる。もしかすると、墓場まで持っていくことになるかもしれない。
「よかったぁ〜!あ〜、好きなやついるとか? 」
う……何も考えていなかったせいで固まってしまう。誤魔化せないかも…
「え!ガチか…」
「え、えぇ〜?そんな、今はそういうのを考えてないってだけで……あー、誰にも言わないでおいてくれる? 」
「ああ、それはもちろん。え、どこのクラスのやつだよ? 」
もうこれは好奇心だろう。悪意は全く無い。どこまでこのノリで話せばいいか迷う。
「あ、いや、あぁ……うーん…」
どのクラスでもないし、そもそも学校にいないし、しかも関係が関係だし……言いづら…
「先生とか? 」
「先生は絶対無い」
「即答かよ。あー、でも園田年上好きそう」
うぅ、図星だ……
「まあまあ、これ佳澄ちゃんにも話してないからほんとに誰にも言わないでね…」
まぁ、お互い秘密を抱えてしまったのでこれでチャラで、ということになった。私こんなに嘘下手だっけ…?どうしよう……この想いを隠し通せるかな。
「……澪依華…? 」
こんなことを考えていると後ろから声をかけられた。振り返ると、噂をすれば?なのか…
「秀!どうしたの?こんな時間に」
「いや、今日はちょっと早く帰れたから…」
仕事帰りらしい。もう五時は過ぎていた。
「? 」
何か、言いたげだった。少し気まずそうな。
「あ、いや。澪依華が高校生だってことを改めて思っただけ」
「はい?………まさか、さっきから、いたの…? 」
決まりの悪そうな、居心地の悪そうな顔をしている。それはまずい、だって今あなたの話をしていたのだから。
「あの、盗み聞きするつもりはなかったんだけど、聞こえてしまって、そのまま立ち去ることもできなくて……」
「別に?そんな大した話じゃなかったでしょ?私に好きな人がいるって話でしょ? 」
「そうだけど、それ聞いてよかったのかなって。一応、同じ家に住んでるわけだし、それがその人に知られてしまって澪依華のイメージが悪くなってしまったら良くないと思って」
はぁ、そんなことを気にしていたのか。なら大丈夫。それならもう解決済みだ。
「そんなこと?大丈夫だよ。もし私の想いに応えてくれたとしたら、その人はそんなこと考えない人だから」
「いや、それはないでしょ。ほんと、俺のエゴでこうなってるけど、嫌だったらなんとかするから」
……………
「……はぁ、鈍いなぁ………」
「?なんか言った? 」
「いいや? 」
これはちょっと道のりが長いかもしれない…
「鈍いなぁ」が書きたくて、あと澪依華がモテる話を書きたくてできた話です…
この頃だとまだ彼女は何も知らない……




