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不幸の檻  作者: みあ
愛された子
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日常

 中学校に入って友達もできて、学業成績もなんの心配もなく維持し、毎日同じような日々を過ごしていると、あっという間に時は過ぎて私は中学三年生になった。三条家には呼び出されることもあるけれど、相変わらず私は蚊帳の外だった。でもそのおかげで、あの屋敷のどこになんの部屋があるのか一階の入れる部屋だけははわかるようになった。まだ部屋はあるんだろうが、私が入れるのはごく一部だ。どれもおんなじ扉に見えて少しずつ模様が違うことも見つけた。ママに言うと、金になるものあるかもだからその辺のもの拾ってきちゃいなよ〜!と言っていた。そんなことしたことないが、その辺の石ころ拾っても金になりそうだった。



「私と橙子はこのまま残るけど、恵都は高校受験するの?」


昼食を食べながらゆりがそんなことを聞いてきた。


「…どうだろう。まだ考えてないけど。どちらにしてもこの成績でいけば、大抵のところは行けそうだけど。」


「その自信、うらやましいわ。あなた真顔でそう言うこと言うわよね。」


呆れながらゆりが言う。まあまあ、そこが恵都のいいところだよ〜、と橙子が言った。


「事実だし、そんなに変なこと言ってないと思うけど。」


「そういうところ、ってことよ。ちゃんと口だけじゃなくて実力もあるのが厄介ね。」


自分で自信を持っている、というより、両親からそう言われてきたし、事実そうであるからそう言っているだけ。それがたまに相手に不快感を与えるらしい。





 「高校受験か……」


夕食を食べながら、ぽろっと独り言がこぼれてしまった。


「どうしたの?急に。したければすればいいけど、しなくていいならしないほうがいいんじゃない?」


不思議そうにママが言った。お昼の話をなんとなく考えてしまって、それが声に出てしまっていたらしい。


「まぁ、ママが死んだらけいは三条家に引き取られるわけだし、そうなったら受験させられるかもねぇ。」


少し、引っかかる部分があった。


「……最近さ、そういう話、多くない? 」


「もう三年生でしょ?高校受験の話くらい出るでしょ。」


「その話じゃなくて。」


「 ? 」


「その話じゃなくて……ママが死んだら、とかいう話。そんなのしなくていいじゃん。」


最近、多い。ママ死んだら三条に行かなきゃいけないから〜って。そんなことはわかってる。わかっていても何回も聞いていられることではない。


「いつ死んでもいいように、話しておかなきゃいけないことはできるだけ話してあげられるように。」


「毎日そんなこと考えないといけないの?」


「どうしたって絶対後悔するんだから、できることはやっておきたいなって。」


それが、本当に後悔しない道だとは限らないのに。確かに、その話は私に役に立つかもしれないけれど、それが必ずしも私のためになるとは限らない。……とはいったって、ママを否定するつもりはないけれど。




 この話は中学三年になってから急に増えてきた話だった。それから半年間、私は毎回嫌だと思いながら聞いていた。半年経つ頃には、受験はしないことを決めていて、ある時一変してしまうような日常を少しでも自分の内に残しておきたかった。





 久しぶりに三条家に行った。どうせ今日も私は除け者なんだから。見られるところは見尽くした気がする。


「あ、ねぇ、今日は恵都もここにいてね。」


ぼうっとしているとそう言われた。しばらく何を言われたか理解するのに時間がかかった。


「……は、え?どうして急に。いつもいない方がいいって言うのに。」


「言ったでしょ?話しておけることは話しておかなきゃ。今まではその内容の詳細を決めていただけ。」


いつのまにか、三条家側の相手は現当主に代わっていた。応接室に通され、ソファーに座る。机を挟んで向いには当主が座っており、ソファーの後ろにはそれぞれ黒服の側近たちが控えていた。


怖い、と思ったことは墓場に持っていく気だ。当主や側近らが怖いというわけではない。今から始まるこの会話が怖いのだ。自分だけが知らなかったことを、自分の知らない間に決まっていたもう変えられない決定を、聞かなくてはならないから。


当主が口を開いた。


「さて、今日は……そろそろ死んでもらわないといけないな、小野寺 澪依華。」


後ろにいた黒服からカチャリ、と音がした。視線だけそちらへ移すと、ママの頭にはパパに向けられていたように銃が突きつけられていた。心臓の鳴りが早い、音がうるさい。呼吸が荒くなりそう、というより多少乱れていた。落ち着くために目を逸らして俯き、深呼吸した。さして効果があるようには思えなかったが、周囲を見れる程度にはなった。……肝心の本人は、恐ろしいほどに落ち着いていた。顔は少々俯いている。斜め下の机の縁を見ているように。まるで自分の命なんて興味がないかのように。それを見入っていると、唇が少し動いた。何か喋ったようだが、誰にも聞こえない声だった。そもそも声も発していなかったのかもしれない。ふっ、とその唇から息が溢れた。……笑ったのか?頭を上げていつものようににっこり笑って、こう言った。


「……ねぇねぇ、一日、猶予をくれない?明日はちゃんとここへきて殺されるからさ。やらないといけないことがあるんだよね。」


何か用事を断るような様子でそんなことを言う。一日でやれることなんて限られているというのに。


「信用できるとでも?そもそも一日なんかで何をするんだ。」


「ふふふっ。それはそっちにはわからないさ。信用できないって言うんなら、もし私がこの約束を破ったら私だけじゃなく、この子も殺していいよ。『走れメロス』みたいな感じだけど。」

書きたいことと辻褄を合わせないといけないことがなんだかごっちゃになってますね…

だんだん話が進み始めています。どうにかお付き合いいただけますように!

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