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不幸の檻  作者: みあ
愛された子
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友人

「…なんのつもり?あんなことして、次はあんたがいじめられるかもしれないのに。」


 彼女に目を向けず、返事もせず、ドアに鍵を差してくるっと回す。がちゃん、と音がしてドアが閉まったことがわかる。


「何?無視なの?感じ悪。わたしが可哀想だからあんなことしたってわけ?」


「私は、見てしまったからそうしただけ。別に偽善でもなんでもない。クラスの空気を正すのが学級委員の仕事だとしても、私はやるとは限らない。あなたのことを可哀想だなんて一度も思ったことない。」


彼女は理解ができないというような顔をしていた。本当は、私は学級委員長なんてやっていい人間ではない。その時その時自分の都合のいいことしかしていないから。


「明日のお昼、用事ある?私は橙子と食べるんだけど、あなたもどう?山岡ゆりさん。」


「何それ、ほんとに意味わかんないんだけど。知らないわよ、明日わたしが学校に来ていたら考えてあげるわ。」


「そう… 」


彼女が帰ってしまった後、鍵を職員室に返して、自分も帰ることにする。


 本当に可哀想だなんて思ったら助けていない。というか、こんなもの、助けただなんて思ってすらいない。私は、自分が受けていた被害を終わらせようとしただけ。そして、その場に彼女がいただけ。


ただ、それだけ。





四限終了のチャイムがなる。それぞれ教室を出たり、近くの机を寄せ合ったりして昼食を取る。


「そこの机、使ってもいいかな?」


「いいんじゃない?誰も使ってないんでしょ?」


私は、橙子といつも食べるのだが、今日はもう一人誘わなくてはならないことを思い出した。


「橙子、もう一人入れていい?」


「いいけど、誰を?珍しいね、恵都がそんなこと言うなんて。」


問いには答えず、目の前にいた橙子を通り越して、まっすぐ歩く。


「ねえ?お昼、一緒に食べない、山岡ゆりさん?」


「……ほんとにきたのね、変なの。」


「そうかな?昨日行ったことを実行しただけなのに。」


「それが変って言ってるのよ。」


彼女を連れて、橙子のもとへ戻ると、橙子は目を丸くした。


「山岡さんだったんだ!もちろんいいよ。あ、そこの机使おうよ。」


「……ちょっと。」


「なに?」


「嫌じゃないの?あなたたち、わたしみたいにいじめられるかもしれないでしょ。」


それに答えたのは私ではなく、橙子だった。


「山岡さんに嫌がらせしてた人たちならともかく、山岡さんを嫌がるなんて、絶対ないよ!私ね、山岡さんのこと、ちょっと気になってたんだ。かわいいペンいっぱい持ってるから。お友達になれたら嬉しいなぁ!」


それは初めて知った。しかし、その橙子の言葉に目を丸くして、ぱちくりぱちくりとまばたきした。


「……は?何それ。意味わかんないじゃない。……仮にも友達って言うんなら、その苗字呼び都フルネーム、やめなさいよ。」


「…じゃあ、ゆりでいいの?」


「ゆりちゃん、よろしくね!」




放課後、私と橙子、ゆりの三人で中庭のベンチに座って話していた。


「ほんとに何もしてこないなんて。恵都、あなたそんなすごい人なの?」


いじめていたクラスメイトの話をしているのだろう。


「いや、そんなことはないと思うけど、必死なんでしょ。この学校総合的な成績でクラスとか席順とか決まるから。」


「そうだね〜。成績にシビアだけど高校受験にしても大学受験にしても成果がいい!っていうのがクリュニー女学院だからね〜。」


橙子はそれもあってこの学校にした、と言っていた。クリュニー女学院というのは、私たちの通っている学校。経済的にも余裕のある子たちばかりだからみんな自尊心が高い。


「うまく行ってくれてよかったよ。一石二鳥じゃないけど。」


そう言うと、ゆりは呆れたような顔になった。


「人をなんだと思ってんのよ…でもお礼は言わなきゃね。」


「いらないよ。言ったでしょ、私は私のためにやったんだから。」


そう言うと橙子は、ん?と首を傾げた。


「田川さんたちがゆりちゃんと恵都に嫌がらせしてたのは知ってたけど、二人は田川さんたちに何かしたの?」


嫉妬みたいなもんだろう、と言おうとしたが、ゆりが意を決したように口を開いた。


「…あの人たちとは小学校が同じなの。クラスにあの人たちにいじめられてる子がいて、その子とは仲良かったわけではないけど、空気が悪いのが嫌で止めに入ったら……」


ありがちと言えばありがちだが、そうできることでもない。彼女の行動は称賛されるべきそれである。


「中学が一緒って聞いた時は絶望的だった。でも小学校の頃よりマシになったの。…あの人たちにとって容姿端麗で成績優秀な恵都は目障りだったのね。」


自分に矛先が向いたことで少しそれが軽くなっていたらしい。


「まあ、田川さんたちもそこまで頭が悪いわけじゃなかったみたいだけどね。それをゆりに押し付けようとしてたんだから。」


「なんだか、変なことしてるな〜、とは思ってたけど…そういうことだったんだね。私だったら止めに入れないな〜。怖いし、いい子ぶってるって言われそう。……だから、二人ともすごいね。私はいい友達を持ったんだね。」


少し暗かった雰囲気が明るくなる。橙子のいいところはこういうところだ。確かに、私はいい友達に出会えたらしい。以前はできなかった、幼馴染以外の友達が。










「全く音沙汰ないって、心配したのに…しかもこうやって折角久しぶりに会って話しているのに、自分のことはまるで話さないじゃない!」


「こんなところにこんな立場でいるなんて言えないでしょ。……大切な友達なら尚更。」


最後の言葉を独り言のように呟くと、少しは聞こえてしまったようで、彼女が聞き返してくる。


「最後なんて…?」


「…なんでもない。」

ちょっとかっこよく書いてみたくて、それが伝わっていたら幸いです!

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