現実逃避
「ねぇ、そういえばなんだけど。」
「ん?」
朝食を食べ終えて、ようやく落ち着いたと思っていたら、思い出したかのように聞かれた。
「あのさ、昨日すごい勝手に澪依華の将来決めちゃったんだけど、その、…好きな人とかいたらほんとに申し訳ないから、先に聞いておきたいんだけど。」
蒸し返すな!と言いたいところだが、さっきのは勝手に私がテンパってただけなので、彼に非はない。
「いや、別に私は全然いいんだけど、秀はいいの?こんな8歳も年下の女で。」
「いいも何も、自分で決めたことだし、嫌だったらそもそも家に上げてないんだけど。」
「…ふぅん、そっか。そうだなぁ、確かに私、好きな人はいたよ。だけど、どうせ私のことなんか相手にしないだろうと思ってたから。」
「あー…。」
気まずそうな顔して、俯く秀に近づいて、顔を上げさせる。
「あのね、その人は私の命の恩人。こんな娘、放っておけばよかったのに。しかも、その人はその選択を二度もしてくれた。それだけで私は十分だったのに、その選択肢が結婚じゃぁねぇ。こんなことってそうそうないよ。ね?そう思わない?」
「は…?」
呆気に取られて、何が起こっているのか分かってないのか、可笑しくてしょうがない。
「ふふふっ。だから、私は問題ないよ?」
可笑しくて可笑しくて笑ってしまった。自分を助けてくれた恩人は、好きになってはいけないと分かっていたのに、それとは裏腹に、この想いを止められなくなってしまっていた。依存してしまいそうで、それでは負担にしかならないのが分かっていたのに。私は相応しくないだろうとそう思っていたのに。あの時だって、彼に殺されるなら本望だとさえ思っていた。けれど、彼が選んだ選択は、思いもよらなかった。優しい彼だから、この選択肢を選んだのかもしれないが、思い上がりも甚だしく、少し期待をしてしまったほどに。彼は自分のことなんてなんとも思ってないだろうけど、それでも嬉しかった。それが、彼が自分自身を苦しめる選択であっても。
ふと、何をしてるんだと我に返る。
「あ、そうだ。課題片付けてくるね。昨日やろうと思ってたけど夜潰れちゃったし。」
課題をやろうとしていたのは本当だ。少し逃げる形にはなったが。
…男の人を自分から好きになるって初めてだなぁ。こんな感覚的なものなんだなぁ。
澪依華が自分の部屋へ去っていくのを眺めながら、溜息を吐く。一体全体どういうことだ。好きな人がいる、というところまでは理解できた。問題はその後だ。
「はぁ…。」
つい、溜息をついてしまう。疲れるな、これ。
今まで、何人か付き合ったことはあるが、どの人も長続きしなかった。私のこと興味ないでしょ、とか、何考えてるかわかんない、とか、確かに、あまり思い入れはなかったし、そもそも自分から好きになったわけではなかったから。随分勝手だなと思うばかりだった。
今回勝手で無責任なのは俺の方だ。ああ嫌になる。幸せにできる保証なんてないし、むしろ不幸になるのに。何が良かったんだか。蓋を開けてみると、澪依華という少女はわからないことだらけだ。今まで、お互い詮索しないようにしていたこともあるが、…生い立ち以上に、何を考えているかまるでわからない。…ブーメランだな。一見、どこにでもいる明るい子のように見えるが、頭がよくまわり、その場その場で自分の立場を理解して動いている。結局、昨日の話では、自分の復讐の為に俺を利用するから、こちらも澪依華を利用していい、ということだった。…三条と血縁関係にあっても、お互いに血縁関係以上のものはないらしい。むしろ、彼女の方は、嫌悪、憎悪などの方が大きい。それが吉と出るか、凶と出るか。まあ、彼女のことはこれから知っていけばいい。一生ものの付き合いになってしまったのだから。
…なんて考えて現実逃避をするのもいい加減にしないと。
「はぁ…。今ので惚れない男っているの?」
書いている人は彼氏いない歴=年齢なので、残念ながら、この先どうするのがいいのか、よくわかっていません…どうしましょう…
恋愛パート欲しいですか…?
2022年7月31日編集
うーーーん……
書くことないですね…