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野宿

「まず俺がしなきゃいけないことは……泊まる場所と、働き口を探すことだ」


 先程エルゲトと話した場所から、街道を南へ下り、ブツブツ呟く。

 自分で口に出しておいて、気分が急激に下がる。

 青野成哉は一文無し。

 当然お金(日本円ではないだろうが)を探すには働かなくてはならない。

 しかし、この世界を何も知らないまま、何のつてもないままこの世界に放り出されたこの男を雇ってくれるところはあるのだろうか。

 

 そして、何よりもマズいのは――


「……やばい。日が落ちかけてる。泊まる場所を探さないと本当にやばいぞ」


 このまま夜になるまで泊まる場所が無ければ、野宿することになる。

 しかし、一文無しの人間を泊めてくれる場所などあるのか。

 そんな考えが成哉の頭に(よぎ)るが、とにかく休めるところを探すしかない。

 街道の辺りをぐるっと見渡すと、細長いレンガの塔みたいな建物が成哉の目にとまる。

 木の看板に文字が書いてある。


 ――ハホネ宿――


 ハホネ宿。

 ハホネ、という意味は分からないがどうやら宿らしい。


「宿なのにレンガ造り? しかも縦に長い……あんま期待は出来ないけど、何か行動を起こさなきゃ野垂死ぬことになる。これは入るしかないな」


 ガチャリ――

 木製のドアを開け、青野成哉は中に入った。


 ※


「いらっしゃい。一人?」


 中に入ると、赤いエプロンみたいな服を着た中年のおじさんが一人だけで受付を担当していた。

 内装もレンガ造りで、左前方に螺旋階段が見える。

 電気はなく、松明で灯りが照らされていた。


「あ、はい。一人です。ここって宿ですよね?」


「看板みりゃあ分かるだろう。そうだよ。まぁ軽い食べ物も提供してる。腹減ったら何か頼むといい」


「食べ物……そういや俺、ここに来てから何も食べてないな……腹減ったな」


「おう、腹減ったなら何か頼みな。金あるんだろう?」


「えーと……これって使えます?」


 一か八か、財布から1000円札を取り出す。

 もしかしたらここは日本のパラレルワールドで、日本円が使えるかもしれない。

 ――が、そんな幻想は簡単に打ち砕かれる。


「……何だいこれ。もしかして、偽の金かい? おいあんた、ふざけてんのか」


「え……別にふざけてませんよ。これは俺がバイトで汗水たらして稼いだ――」


「何言ってるか分かんないんだよ!! 金無いなら帰りな!!」


 ガシャン――――!!!


 ※


 日本円が偽札だと思われたのか、あっという間に宿から出されてしまった。


「……嘘だろ。日本円は使えない。タダで泊めてくれることろなんて無い。残された選択肢は……」


 宿の遥か前方、街の外れには微かに草原が見える。


「……」


 ホー、ホー、ホー。


 フクロウか何かの鳴き声が、青野成哉の不憫さを際立たせる。

 野宿という選択以外を無くした青野成哉は、しぶしぶ草原へ歩いていった。









 










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