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泣きたくなるほど、温かくて幸せだった。ゆっくり、ゆっくりと引きずり込まれ、落ちていく感覚。


駄目だ、思う。恐ろしい、とも思う。こんなのに慣れてしまったら、もう1人で立ち上がれなくなる、そんな心の片隅でかすかだが確かにあげられていた警鐘は、情けなくも、徐々にはるか遠く、かき消されていった。


ずっとこのまま、自分のやるべきこと、なさねばならない事全てから目を背け、痛みにも悲しみにも、果てには喜びにすら鈍感に、ただ息をするだけの生を送っていけたのなら。


来世は、木がいい。芽吹いた地から1歩たりとも動かず、壮大な時間をかけて大地に根を張り、日に向けて枝葉を伸ばし、呼吸をして、養分をつくって。ただそれだけの、静かで穏やかな生の営みが他の生き物の、社会の命の礎になるだなんて羨ましい。


………木に生まれたいと望みながら、一方で社会に認められる存在でありたいと願う、その矛盾がどこまでも滑稽で、我ながら人間臭くて少し嗤えた。

最期はやはり人間にうち倒されるのだろうか、それとも病気、酸性雨、害虫……。いずれにせよ、断末魔ひとつない沈黙の終わりは好ましい。


現と夢の間を流されるまま、ゆったりと揺蕩う少女の肩をつかみ、ゆさゆさと揺さぶる者がいた。


―――なぁ、おい。


……やかましい。むっと顔をしかめ、無礼者の蛮行から逃れるように身をよじれば、肩を掴む手に更に力が入った。


―――おい、起きろって。この俺がワザワザ護衛まいて、ワザワザ足運んでやってるっつーのに、起きもしないなんて、お前まじ信じらんねぇ。


もっと喜ぶ素振りでも見せろよな、とごちる少年の声に、少女は仕方なく、本当に仕方なく身動ぎ、ぼんやりとまぶたを開けた。


生まれながらに支配者階級に属する男にありがちな、自分のために他人が動くのは当たり前、自分の都合に他人が合わせるのが当たり前、という傲慢不遜さを幼いながらに地でゆき、しかもそれがいやにしっくりと似合うこの少年は、1度言い出したら絶対にひかない。どうにも嫌なことでないのなら変に拒否したりせず受け入れてやる方が早い、という諦念を、これまた自覚はないが、他人に自分がくれてやる興味関心などない、と少年とはまた別ベクトルに同等の傲慢不遜さを持つ少女は初めて教わった。………教わりたくて教わった訳では断じて無い。


嫌々ながら目を開けたのはいいが、そのままぼんやりと身を起こそうともしない少女に、少年はわかりやすくご機嫌を損ねて、広々としたソファにゆったりと横になっていた少女の上に覆い被さるように倒れ込み、あやす様に額にチュッと軽くキスを落とした。なお、重い、という少女のぼやきはもちろん無視だ。彼が頻繁に寄越してくる軽いキスを、親愛をあらわす挨拶として、すでにセイは受け入れ慣れてしまった。初めてされたときには確かに無礼者と頬を張ってやったというのに。


―――なぁ、俺暇なの。起きて。起きて構えってば。


―――……本でも読めば良いでしょう。それか課題?私、貴方の溜めに溜めた課題を手伝うのはもうやぁよ。


―――それを聞きたくないからお前の所に来たのに、なんでお前にまでそんなこと言われなきゃならねーの。


えぇ……と少女は冷めた視線を寄越してやったが、これも当然のように黙殺された。そして、少女から少し身を起こした少年は、テーブルの上に並べられた色とりどりの菓子の中から適当に一つを手に取り、少女の口元にスっと運んできたので、少女は少年の自分勝手さに呆れつつ、もう何も言わなかった。これはそのまま食えということか。逡巡し、ちらりと少年は見遣れば、彼はとても楽しそうに、「ほら、あー」と口を開けろと催促する。


少女の中の淑女性が人前で口を開けてみせるだなんて、と恥じらいを喚起したが、結局、少年のご機嫌な様子と強引さにはかなわず、仕方なく身を起こし姿勢を正して、あむっと少年の手ずから頬張った。


―――……甘い。


―――それ結構苦いやつだけど?


―――そういうことじゃないわ。


―――どういうこと。


問いかけながら、少年はいつになく満足気に頬を赤らめていた。どうやら、少女に手ずから物を食べさせるのが余程お気に召したらしい。手に付いたクリームをペロッと舐め取り、もう一つ頂戴、と口を開けて要求する少女の姿に口元が緩んだ。


―――……ほら、うまいか?……全く、俺が手ずから食わせてやるのなんてお前ぐらいなものだぞ。


―――………私だって、こんなはしたない食べ方…………あまり、やらないわよ。


彼が強いてさせた癖に、何故か彼にはしたないと責められているように感じて、貴方以外にはしたことがなくてこれは例外なのだ、と少女は、一応自らの淑女性の潔白をしようと試みたのだが、ふと思い返すと従者や兄弟にされた経験はそれなりにある。


結局しりすぼみになってしまった少女の発言に、少年はころりとまたも機嫌を損ね、ぶつくさと文句を言ったが、少女の耳には入ってこなかった。


そういえば、従者や兄たちに同じことをされた時には、恥じらいだなんて感じなかったし、自分の淑女性の弁明をしようだなんても思い至らなかった、味だっていつも通りだったはずだ。何故、この少年は少女の普通を毎度毎度あっさりと薙ぎ倒しひねり曲げて近づいてくるのか。


変なの、と思う。それが少女にはそれが怖くて怖くて仕方ない。


ぼんやりと再び自分の世界に入り込んでしまった少女にじゃれるように、少年はばふっと少女の太腿の上に頭を擦り寄せた。


―――なぁ、セイ、暇。


セイ、というのは彼に名乗った少女の呼び名だった。初めて会った日、もう二度と会うことはないだろうから、と適当にパッと思いついたものを口に出してしまった、それが今になって、キリキリと真綿で首を絞めるようにセイを苦しめる。そんなセイには気づかず少年は続けた。


―――チェスも他のボードゲームも、カードゲームもうんざりだ。本も課題も論外。なぁ、なにか面白い話して。


―――貴方、本当に私より年上?……私はシェヘラザードじゃないのよ。貴方好みの話ばかり、いくつもいくつも知ってる訳じゃないわ。


セイの膝を枕にして、ふーんと気のない返事をしつつ、緩く結わえていたセイの頭から簪を引き抜き、はらりと零れ落ちた髪をクルクルと指で弄ぶこの男は本当に分かっているのか。


―――名前。


―――え?


―――「貴方」じゃなくて名前がいい。呼べ。


―――………貴方の名前なんて一々覚えてないわ。


途端に端正な少年の顔が不愉快気に歪められ、セイの髪を遊ぶ指もピタリと動きを止めたが、じっとセイの顔を下から睨みつけたかと思えば、すぐ様ころりと機嫌を直し、嘘、と断じた。


―――つまんねーこと言ってんなよな。いいからさっさと呼べ。


―――なんで嘘と思ったの?


―――お前、嘘下手だし、俺を見て俺に無関心でいられるようなやつなんていねーし。


大層立派な自意識をお持ちのようだが、何故だか彼が言葉にすると真実味があるから不思議だ。


仕方なく負けを観念して「エディ」と極力自然に目をそらすようにして囁けば、何?とそれはそれはご満悦気に、惜しみなく甘ったるい笑顔を振りまいてくる。それがまた何となく腹立たしくて、セイは少し顔をしかめるとぺちっと軽くエディの頭を叩いてやり、先ほど読みながら寝てしまったまま放置していた本を手に取った。


春の陽気に満ちた昼下がり、時間に追われることなくこっくりこっくりと船をこぎながら読書をし、テーブルいっぱいの甘味をほおばり、膝の上にはゴロゴロと喉をならし寝そべるペット()。


全読書家の夢みたいな時間ね、とほのほのしながらページをめくれば、おい、と下から本をひったくられ、あろうことかセイの膝の上でゴロゴロしていたペットは、そのままビリッと真っ二つに引き裂き放り投げた。


―――お前、俺にケンカ売ってんのかよ。


―――いや、喧嘩を売っているのは全面的にあなた……


―――あ!わかった!


―――きゃあ!!ちょっと!いきなり何!?


―――ないなら作ればいいんだ!俺好みの物語。


いきなりセイの膝からガバッと身を起こして叫びだしたエディに、セイは半眼のまま、はぁ、とあいまいにうなずくことしかできなかった。いや、もう本当に、切実に面倒くさい。なんでもいいから私と本を巻き込まないでほしい。ちなみに、エディが本をダメにするのはこれで七回目、セイの対応にも既に諦めと慣れが色濃く表れている。


―――そうと決まったら、1000年後にはこの世で知らぬ人間はいないほどのものを作ってやる。


……そして彼は無駄に自尊心と目標が高く、くだらないことに平気で情熱を注ぎ始める。


―――……もう、好きにして頂戴。


―――は?何言ってんだ?セイも一緒に作るんだぞ。


―――なんで私が貴方好みのお話を作るのに協力しなきゃいけないの。


―――はー-。なんだよ、拗ねてんの?仕方ねぇなぁ、分かった。ヒロインはお前にしてやるよ。本でいろんなことを知ってるけど、肝心なところは抜けてて、常識知らずで頭でっかち、魔術はポンコツな魔女な。


―――いや、全く頼んでいないのだけれど……待ちなさい、もしかしなくても、貴方って私をそんな風にみているの?


―――だってお前、いかにも世間知らずだし、初めて会ったときも飛行魔術に失敗して空から落ちてたし…。


―――少しは悪びれなさい!それに私が苦手なのは飛行魔術だけよ!相性がとっても悪いってだけなんだから。


―――そうは言ってもセイ、飛行魔術なんて宮廷魔導士なら誰もが使えるぞ?


―――…簡単に言ってくれるわね…。それに、いつ、だれが宮廷魔導士になんかなりたいだなんて言ったのよ。


―――あーはいはい、わかったわかった。で、主人公が、顔がよくて剣も出来て家柄もいい騎士様こと俺な。


―――………。それじゃあ、ヒロインとヒーローの釣り合いが取れてないじゃない。物語として出来が悪すぎるわ。何か、主人公にも弱点なりなんなり作りなさいよ。


―――無理。だって完全無欠の男じゃなきゃ俺じゃねぇもん。


———………。


苦しい。意思の疎通は取れているし、彼のいう言葉の意味が分からないわけではないのに、なんだろう、このことごとく空振っているような、ごっそりと気力が持っていかれるような感覚は。

さもこの世の真理を語るがごとく、至って平然と言い切るので、セイも、うん……、まぁそれならそうでいいんじゃない……?と言わざるを得ない。少年の持つオーラや声、眼光には、そういう、人を引き込む強さと自信が確かにあふれていた。


渋面で絶句したセイにエディはクスリと微笑みかけると、ソファのはじに座っていたセイをひょいと持ち上げて、向かい合わせになるように自らの膝の上にのせ、くるくるとセイの髪をいじりながら、ご機嫌に続けた。


―――物語といえば英雄譚かな、ラスボスはなにがいい?悪の秘密結社、テロリスト集団、魔王、神……。


―――………世に蔓延る悪に正義の鉄槌をって?


………………。


しん、と部屋が静まり返った。少年少女には自身の容赦のない傲慢不遜さ、天井知らずのプライドと他の追随を許さない自尊心の圧倒的な高さに対する自覚はかなり薄かったし、そもそも”己を省みる”という精神の片鱗すら持ち合わせていなかったが、それでも流石に自分が、見ず知らずの他人のために身を粉にし、命を懸けて解決に挑むほど、”お人よし”ではないことくらいは分かっていた。


―――………向いてないな。


―――えぇ、少々無理があるわね。


―――じゃあ、いっそ復讐劇にしようか。


それならなんとなくいける気がする、とエディは新たな活路を見出したが、当初は全く興味なさげだったはずのセイが意外なことにその提案に眉を顰め、軽く首を横に振った。


―――復讐なんて………陰湿だし重いし、つまらないわ。粘着質で悲劇のヒーロー気取りの主人公になんて、誰も共感できないもの。気色悪い。人の怒りなんて6秒ももたないっていうじゃない。


―――なに?そんな陰湿で重い、つまんねー復讐劇を読んだばっかなの?………まあ、お前の気が乗らないならそれでいいけど………

………じゃあ、冒険譚にしよう。……俺とお前の二人で、ずっとずっと、秘境の彼方、世界の向こう、虹の終わりまで旅をするんだ。


―――…何のために?


そのセイの言葉は思いのほか、日暮れが差し迫り生き物の呼吸一つ存在しない、彼と彼女だけの部屋のなかに、ぽつんとしみ入った。


あ、失敗した、と漠然とセイは思った。

声調、表情、のせる色、吐息、響き、何もかもを間違えた。違う、これはただの彼の思い付き、どうせ果たされることのない物語にすぎないのだから、違う、もっと、もっと…………。

かすかだが確かに、その美貌のうちにのぞかせた焦燥に気づいてか、気づかずか、

少年はじぐりとその纏う空気を一変させて、戸惑うセイの口を塞ぐように、それ以上余計なことを考えさせないよう思考を阻むように、ゆったりとなだめすかすよう声を響かせた。



―――…………そうだな、旅をすれば………故郷も親類も友も業も責任も何もかも、俺とお前の間に割り入ってくるものは全て遥か遠く、いつかは途絶え、消え失せるだろう?


旅をすればするだけ、お前には俺しかいなくなって、俺とお前の二人きりで完結した世界だけが広がっていく。素敵だと思わないか?

きっとお前を鎖につなげて牢に閉じ込めるよりずっとずっと完璧で美しい。


俺様はフェアな人間だからな。お前を鳥籠に閉じ込めるより、お前と俺だけの鳥籠が欲しいんだ。

まぁ窮屈なのは俺もお前も性にあわねーし、鳥籠は少しずつ広げていけばいい。


ねぇ、違う?俺は、お前には俺だけあればいいと思う。

お前は?お前も、俺にはお前だけであって欲しいだろ、なぁ。



少年は、その幼さに見合わない凄絶な色気をまとった笑みを浮かべたが、その実、少女の視線を己からそらさせはさせまいと覗き込むようにして絡み合わせ、かすかな切実さと緊迫さと、そして哀愁を漂わせながら口にするその様は、まるで幼子が相手の愛情に甘えきって、無茶を請い求めるのによく似ていた。

西日が部屋に差し込むのをぼんやりと、少年の赫灼と瞬く二対の紅玉の向こう側で感じ、セイはふと微笑んだ。この、傲慢な少年がよもや私に断られることを恐れているなんて。


―――………。貴方が、その言葉通り必ず、全てを捨てさせてくれると約束するのなら、大地の果てまでだって貴方についていってもいい。


ぽつり、とこぼれた言葉は紛れもなく、物語づくりだとかそんなものを超えた、セイの飾りなく偽りない本心だった。それは、少年も気づいたらしい。途端にぱっと表情を明るくさせて、自身の膝に乗せた少女を狂おしいほどに抱きしめ、耳元で二人だけの秘密の旅の計画をささやいた。


―――そうだ、二人で月下にたたずむ神あがりの玉華(ユクシリのリュカ)を探しに行こう。


―――ゆくしりのりゅか?


―――知らないのか?帝国の臣民なら誰もが知っているおとぎ話だろう?


―――……悪かったわね、世間知らずで。


―――ああこら、拗ねるなって。ユクシリのリュカは、この世とあの世の境目の三途の川の源泉が湧き出る霊山の嶺に咲く花のことだ。ユクシリのリュカはたった一輪で凛と咲き誇り、辺りに漂う花の香は白檀をも増して上品でかぐわしく、花弁は玉石のように月光に輝く白銀、豪奢でないが流麗高雅。その玉華の美しさの前では魚は沈み雁も落ち月も閉じるという。ただ、玉華はあちらとこちらが交わる特別な一夜に、そして自らの行いが正義であったといえる者の前でしか咲かないらしい。


―――仁義?


―――そう。仁義だ。自らの道義に反することなく、自らの行いを恥ずべきものでないと言い切れるか。………玉華は自身の姿を見た者の願いをすべて叶えるらしい。それで、帝国臣民は、窮地に陥ったとき、自らの選択に自信がないとき、耐えがたきを耐えるとき、「ユクシリのリュカ」と数回唱えるんだ。


―――………ユクシリのリュカ…ユクシリのリュカ………。


教えられた通りに、数度呟く少女の素直な愛らしさに、少年は思わず頬が緩んだ。


―――全く、お前は捻くれてると思ったら、時折そういうことを何の気なしにやる……


ややあって、少年は今度こそ少女の唇にキスを落とした。唇と唇をあわせるだけの、青くてどことなく甘酸っぱいキス。それが、一瞬の出来事だったのか、実は数秒にわたる出来事だったのか、セイには今一つ確信が持てなかった。

だが、エディの唇が熱くて、自分の唇も発熱したように熱くて、どこからどこまでが自分で、どこからどこまでが相手なのか、境界線がじわりじわりと侵されていく感覚が妙に生々しくて、その癖どこか儀式めいた厳かさがあって。


………いくら常識知らずのセイだってこのくらいは知っている。マウストゥマウスのキスは恋人同士のキスだ。とはいってもセイにファーストキスへのあこがれや想いなんてものがあるわけでもなく、何故恋人でもない男にキスをされているの?と衝撃を受けるような乙女らしい恥じらいがあるわけでもなく。そもそも、唇と頬と額に差をつける理由がいまいちピンとこないセイとしては、キスのあとの余韻の中で、なんにでも特別を作りたがり、意味を見出したがるのは人間の習性ね、なんて考えたりしている。やはり自分は、心のどこかが欠けているのだろうか。


再びエディの美しい紅玉が近づいてきて、セカンドキスをも奪われたことをセイはどこか他人事のように感じていた。彼とのキスが正真正銘、初めてのキスだけれど、やはりキスをしたからといって世界の見え方が変わるわけでも、目の前の男への特別な感情が突然芽生えるわけでもないのだな、という当たり前な実感がセイの心の中にストンと落ちてきて、それがまたどうにも虚しく、悲しいように感じて、そう感じる自分に戸惑いを覚えた。


ツ、と唇が離れる瞬間、ふとどこの民族の風習だったか、あるいは出来の悪い物語の設定か、『唇でのキスをると、相手と永遠に縁が結ばれる』という迷信だかなんだかを思い出した。


その手の話にロマンを感じ入る乙女心はもちろんのこと、そんなことあるはずないだろうと鼻で笑う程度の興味すらないセイだったが、何故かこの期に及んでそれが記憶の片隅から呼び起こされ、頭をよぎり、挙句、思考がそれに染まっていく。……私と彼の縁はいつ結ばれたのだろう。死んでも生まれ変わっても繋がれ続ける縁など、鎖ではないのか…。だが、彼となら、死んでなお二人で旅を続けられるのなら、それは素敵かもしれない。…来世は木になりたかったのに。


全く持って愚かしい。


―――……セイ、何を考えてる?


―――…………いえ、別に。


エディの腕がさらにきつくセイの体を捕え、髪をぐしゃりとかき抱き、何もかもを奪い去るかのような乱暴なキスをする。それすらもセイはどこか夢心地で、ただただひたすら、教わったばかりの言葉を心の中で繰り返していた。


ユクシリのリュカ……


ユクシリのリュカ………


ユクシリのリュカ……………………




…………………………………………………——————————。


数ある作品の中から、私の物語をえらび、読んで下さりありがとうございます!

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