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ラブラドールレトリバー
街の明かりが随分と減ってきた頃、
ようやく顔を上げる決心がついた。
私としっかりと目が合ったのを確認してから
悠鈴は話し始めた。
「大丈夫?俺が言おうとしてることなんとなく分かってるかな。」
「、、、うん。なんとなく。」
「だよね。では、聞いてください。」
音楽番組でアーティストが歌い始めるときのように
悠鈴はしっかりと前置きをして、咳払いまでした。
「結叶さん、俺と付き合ってください。」
シンプルな言葉だった。
「悠鈴さん、よろしくお願いします。」
そう答えると、私が何と答えるか分かっていたはずなのに
心から嬉しそうな笑顔を浮かべて、また私に尋ねた。
「それでは、ハグをしても良いでしょうか。」
そう言われたので、私は無言で両手を広げた。
すると、悠鈴はさらに嬉しそうな顔をして飛び込んできた。
同時に私はあることを感じた。
「ラブラドールレトリバー」
「、は?結叶また雰囲気ぶち壊しにしたね。」
どうやら、声に出てしまったらしい。
けれど、それを気にするよりもずっと
「幸せ。」
「うん、俺も。」