連絡先さようなら
なんだかしんみりとした雰囲気になった。
それでも居心地がよかった。
「結叶はさ、」
その雰囲気を変えようとしたのは悠鈴だった。
「俺に、ここまで連れてこられて嫌じゃなかった?」
「うん。全然、嫌じゃない。、、、。
あ、じゃあさじゃあさ、
悠鈴はどうして私を連れてきたの。ここまで。」
「二人になりたかったから。それだけ。」
「それだけってことないじゃんかー。
男と二人でご飯に来てる女を連れ去るって
なかなかだと思うぞ。」
そう自分で言って思い出した。
「え!待って待って!
そうだ、私今日アサヒ君とご飯来てたんだよな!」
お店を出た時はどうでも良かったエセの存在が
その時急に気がかりになって慌てた。
「ちょっ、一旦落ち着こうか。」
立ち上がった私をベンチ座るよう誘導した。
「どうしよう、置いてきちゃった。
私ひどい人だよね?ほら、たくさん連絡きてるよ。」
私はエセからの通知でいっぱいのスマホ画面を
悠鈴に見せた。
「どうして急に現実見るんだよー。
そんな雰囲気じゃなかったじゃん今!」
「え、あ、ごめん。いや、でもさ、どうしよう。」
「あーはい。その、結叶と一緒にいたアサヒ君?
ならね、大丈夫。俺の先輩が何とかしてくれたから。」
そう言って、悠鈴は先輩からのメッセージを見せてくれた。
ーお前薄々気づいてはいたけど、急にいなくなるのは無しだろ。
ーでも、まぁこっちは何とかしておくから、失敗すんなよ。
ー次はお前の奢りだからな。
「ほら、大丈夫そうでしょ。」
「、、、うん。」
「だから、アサヒ君のことは気にしない気にしない。」
「、、、うん。」
先輩が何とかしてくれているとしても、
この大量に来ているエセからの連絡はどうしたらいいのだろうか。
そうモヤモヤしていた。
「、、、。あー!もう、まだ納得してないみたいだから
聞いちゃうけど、結叶はどうしたい?
アサヒ君のとこ戻りたい?俺とこのまま二人でいたい?
ちなみに、俺は結叶といたい。」
随分慣れているなこいつと思った。
ちょっと面白くない。
でも自分の心に嘘をつく必要も見当たらない。
「悠鈴と一緒にいたいよ。」
「了解。じゃあ、この状況に異論受け付けません。
このままだと、結叶がアサヒ君のこと気にしちゃうから、
アサヒ君との連絡手段はここで消してしまいましょうか。」
大胆な提案だったが、
私もエセとまた会おうという気がなかったので
悠鈴の提案通り、エセの連絡先を消して、
インスタのフォローも外した。