名前
私が落ち着くと彼は「あそこにベンチある」
そう声をかけてくれたので、二人でベンチに座った。
そして、
「たくさん走らせてごめんね。あのさ、、」
そう言いかけて私の顔を見た。
どうしたのだろうか。
彼は不思議そうな顔で私を見ていたが、
私はもっと不思議でいっぱいの顔を彼に向けているだろう。
でも、そこまで深刻なことでないことがすぐに分かった。
「そういえばさ、名前聞いてないや。」
そうだ。私は彼に言われて今更気が付いた。
お互い名前も知らずにここまで来たのだった。
それに気づいたら、急に面白くなってしまった。
「ははっは、待って、おかしいね。
そうじゃん、私たち名前も知らないじゃん。」
「そうだよ。だからさ、名前、教えてよ。」
彼は楽しそうに、私に聞いた。
「ゆいかだよ。結ぶに叶える。いい名前でしょ。」
「結叶か。だね、めっちゃいい名前。」
そう言って彼は手のひらを私に向けてきたので
「いえい。」
そんな適当な言葉を言ってハイタッチした。
「で、あなたは?」
「俺はね、ゆず。悠然の悠に鈴で悠鈴。」
「悠鈴、、ね、素敵だね。綺麗な名前。」
「うん。ありがとう。おれ自分の名前好きなんだ。」
そう言う彼が素敵だと思った。