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03

 タミエル領近くの森。

 村娘であるリリィは森の中を必死に逃げていた。


「待ちやがれガキィィッ!」


 少女の後を追うのは人相が悪い薄汚い男たち。

 恰好からして盗賊だろう。

 このあたりを縄張りにしている盗賊団がいると噂をリリィは聞き覚えがあった。


 どうしてこうなったんだろう?


 リリィは数分前を振り返る。

 母親が難病に侵され、病気を治す薬草を摘みに無断で村から外出した。

 体力が続く限り森中を探し回り、やっとの思いで目的の薬草を手に入れたが、村に帰る途中で盗賊団と遭遇。

 その時、彼らは誰かと話している最中だったので急いでその場を離れようとするも、うっかり木の枝を踏んでしまい気づかれてしまった。

 鬼気迫る勢いで追ってくる盗賊団に恐怖したリリィはすぐさま逃げだした。

 村からあまり出たことなく、土地勘がおぼろげだが小柄の体を生かし木々と茂みの隙間を通り抜けて走る。大人である盗賊たちは木々と茂みが障害物となって彼女との距離が徐々に離れていく。

 このままいけば、逃げ切れる。

 そう思った矢先――、


「はぁ、はぁ――あっ!?」


 足を挫いてしまい転んでしまった。


「痛たたぁ……ひっ!?」

「このガキがぁ」

「手間をかけさせやがって」


 地面に倒れ伏すリリィの周りを盗賊たちが取り囲む。


「お、おねがいします……殺さないで……!?」

「とか、言ってますがどうします兄貴?」

「ダメだ。さっきの会話を聞かれたからには生かしてはおけん」


 兄貴と呼ばれた盗賊のひとりがを剣を抜く。


「知らない! わたしは何も知らないから!?」


 立ち聞きをしてしまったことは事実だが、何を話してまでは十歳児の少女には理解できなかった。

 必死に誤解を解こうとするも盗賊たちは信じず、少女を睨みつけたままだ。


「いや、誰か……助けて!」


 恐怖のあまり、下半身から黄色い液体が広がる。

 ぷるぷると震えるリリィに、盗賊は容赦なく彼女を剣で突き刺そうとする。


 瞬間、彼の背後から気配を感じた。


 「誰だ!」と盗賊が振り返った瞬間、彼の頭部が飛んだ。

 空中へ切り捨てられた頭部はそのまま地面に落ちる。頭部がない身体はひざをつき、首から大量の血が噴水のような噴射された。

 その光景にリリィと盗賊は硬直する。

 直前に盗賊の一人の首が斬り落とされた。

 いつのまにか現れた青年の剣によって。


 盗賊たちが声を荒げて青年に武器を向ける。――が、その直後、彼らの体がバラバラに切り捨てられた。

 目にもとまらぬ青年の剣技により、盗賊たちは痛みを感じず絶命したのだ。

 リリィは困惑した。

 自分を殺そうとした盗賊たちが、一瞬のうちに細切れにされて死んだ。

 まるで悪夢のような出来事だが、地面には散らばった盗賊であった男たちの肉片と、頭から浴びた盗賊たちの返り血が現実の出来事だと物語っていた。


「まったく。相手が幼女といえ、可愛い娘を性的乱暴をせずに殺すとか、それでも盗賊の端くれかよ。股間にぶら下がった凶器はハリボテですか、この野郎」


 リリィの目の前に見知らぬ青年が呟く。

 黒髪黒目で周りの男たちとは輪郭が違う珍しい顔立ち。

 着物と言われる東方の服の上から騎士甲冑で身を固めた独特の恰好。

 そして、手に持つのは英雄譚の主人公が振るっていそうな綺麗な剣。


 その姿はまるで、母がいつも語ってくれた神話の勇者のようであった。



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