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転生少女はまず一歩からはじめたい~魔物がいるとか聞いてない!~  作者: カヤ
旅は道連れ

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83/302

狛犬その2もがんばっている

予約投稿を忘れていて、一時間遅れました。

8月25日、「転生少女はまず一歩からはじめたい」3巻発売!

詳しくは活動報告に書いてます!

 しぶしぶ連れてこられたサラに、クリスは当たり前のように解毒薬の話をする。


「いいかサラ、いい解毒薬の色はその薄紫色なので覚えておくように。味の確認も許可するから、漏斗を洗う前に、ひとしずく舌にのせてみるといい。一滴では体調は崩れないから」


 数滴だったら体調は崩れるんですかと言いたい気持ちを抑えて、解毒薬の味を見てみる。


「うえ、まずい」

「まずいかどうかではない。その苦みと渋み、そして独特の香りのバランスを記憶に残しておくように」

「ベリー味とかがよかった」


 ぶつぶつ文句を言うサラに、テッドがあきれた目を向けた。


「味をつけることができなくはないが、そもそも色と味でポーション類は区別がつくようになっているんだ。不味かったら解毒薬を飲んだ後、口直しに何かを飲めばいい」


 サラがさっそくベリーの砂糖漬けを出そうとすると、それは止められた。


「今のは実際に解毒薬を飲む人の話だ。サラは勉強中だから、余計なものを口にして味覚を鈍らせては駄目だ」


 理不尽なと思うサラにロニーがうらやましそうな目を向ける。


「サラはいいですね。薬師なんて普通は薬草のすりつぶしから始めて、解毒薬の作り方を教えてもらえるのは大分あとなんですよ。しかも優秀なお二人に手取り足取り」


 頼んだわけではないし、優秀な二人にという言葉にも引っ掛かったが、反感を買いたくなかったのでやめておく。


 ロニーはテッドの横で丁寧に魔力草をすりつぶしながら、薬師の話をしてくれた。


「薬師志望は裕福な家庭の者が多いですからね、薬草のすりつぶしと受付の仕事や雑用で最初はいやになってしまうんですよ。そういう地道な作業をできるものが薬師としての素質でもあるんです」


 サラは思わずテッドのほうを見た。受付としては最低だったが、確かに黙々と作業はしている。テッドはサラの方に目をやるとにやりと口元を緩ませた。サラは思わず目を見開いた。そういえばテッドが笑ったのを初めて見たような気がする。そしてちっとも爽やかではなかった。


「解毒薬が落ち着いたら、サラも薬草のすりつぶしからだな」


 薬草のすりつぶしはいやではないが、テッドの下につくのはいやだと身震いする。


 その日は誰かが店番に立つほどの余裕もなく、誰かに呼ばれればロニーかテッドが出て解毒薬を処方することにして、夕方まで黙々と作業した。


「サラ! 帰って来たよ!」


 アレンの声がした時は心の底からほっとした。


「カエルなんて身体強化で一発だったぜ」

「やっぱり直接殴るんだよね」

「剣よりこぶし。俺は身体強化特化だからな」


 サラは心持ちアレンから遠ざかった。


「なんだよ。洗ったからカエルの匂いはしないと思うけどな」


 アレンは手の匂いを嗅いでみている。


「毒は大丈夫だった?」

「あんなの、観察してればすぐわかる。向こうが毒を出したり舌で攻撃したりする前に踏み込んで叩けばいいのさ」


 自慢そうなアレンを、ロニーもほめそやす。


「サラもこの年のわりにてきぱきと仕事をこなすから驚いたけど、アレンもすごいんですね。確かに一二歳がハンターギルドの登録の下限ですが、実際その年で活躍しているハンターを見たことはない気がするから。もっとも、ポーションを買いに来たことがあるかどうかだけなんですけどね、僕の判断基準は」


 そういえば、ローザでもアレンはハンターとしては最年少だった気がする。アレンは得意そうに胸を張ったが、何かを思い出して首を傾げている。


「そういえばギルドで俺、ヌマガエルをたくさん納めたら、赤の女神の眷属がもう一人とか言われたけど、何のことだったんだろう」

「私も言われたよ、それ。ギルド長のデリックに。女神ってネリーのことだと思うんだけど」

「私か?」


 ネリーがきょとんとしている。かわいいなとサラはほっこりした。


「死神だろ。いてっ」

「テッド。お前は何度言ったらわかるんだ。人を貶めるようなことは言ってはならないし、ましてや私の女神のネフにそのような言葉を投げるとは。弟子をやめたいようだな」

「申し訳ありませんでした!」


 クリスに肘打ちされたテッドはネリーに謝り、かえってネリーを戸惑わせている。


「ああ、赤の女神とか赤の死神と言えば、竜殺しの赤毛のネフェルタリのことではないですか。僕も知ってます。伝説のハンターですよ」


 ロニーが知識を披露してくれたが、サラはなんとなく察していたので、そっとネリーから目をそらした。


「赤毛のネフェルタリ。同じ名前のハンターがいたとはな」


 感心するネリーに、クリスが気まずげに説明を始めた。


「ネフ、その。なんだ。ネフは魔の山にいて下界には下りてこなかったから」

「なんだ。はっきり言え」

「竜殺しの赤毛のネフェルタリ。魔の山の孤高の赤の女神とは、ネフのことを指すんだ」

「は? 私か?」


 アレンがポンと手を叩いた。


「それで俺とサラが女神の眷属か。眷属ってあれだろ。手下のことだろ」

「手下って……。うん。まあ、その認識でいいと思うよ」


 サラはうんうんと頷いた。しかしネリーは真っ赤になって天を仰いだ。


「そんな恥ずかしい二つ名がついていたとは、一生の不覚。今からでも揉み消せないものか」

「無理だろうな。だが、いいではないか。もともと女神のような美しさだ」


 クリスはネリーの手を握ろうとして叩き落されている。


「これさえなければ本当に尊敬できる人なんだがな……」


 テッドの嘆きは聞かなかったことにする。大切なのは、女神の眷属だろうがどうだろうが、アレンがカメリアのハンターギルドでも実力を認められたということなのだから。


「なあなあ、身体強化をどんなふうに使ってヌマガエルを倒すか聞きたくないか?」

「あんまり……」

「まずはさ、足と腰の強化からなんだ」

「結局は聞かせたいんだね」


 サラはあきらめて身体強化とヌマガエルの話を聞くことにした。サラにとっても何か役に立つこともあるだろう、たぶん。


「ヌマガエルも初夏のこの時しか集まらないんですよ。繁殖期が終わっても夏の間は攻撃的ですが、

冬はほとんど動かないので近くに寄っても全然平気だとか」

「そもそも放っておくわけにはいかないんですか?」


 サラはずっと疑問に思っていたことをロニーに聞いてみた。繁殖期だけ集まって他に害を及ぼさない生き物は日本にもたくさんいた。カエルだってそうだ。


「集まりすぎると、産卵場所を求めて町までやってくるんですよ。ほら、すぐ近くでしょう」


 あの大きいカエルがやってくるのは確かに怖い気がする。


「大量の、しかも攻撃的なカエルはハンター以外にはどうしようもなくて、町は大混乱だそうです。過去に何度もあったとか。それがきちんと沼で対処すれば、利益に変わるのですからね。どちらがいいかははっきりしているわけです」


 結局この世界は、ダンジョンやダンジョン外の魔物をコントロールしないと成り立たないから、ハンターという職業があるのだとサラは改めて思う。


「今年はいつも以上にヌマガエルの数が多いから新規参入の優秀なハンターは助かると、アレンは言われてはいなかったか?」

「うん。昨日のギルド長の態度からしたら、むしろ敬遠されると思ってたから驚いたよ」


 サラは見張られていた自分との違いに切ない気持ちになったが、よく考えたらネリーとアレンの認識が良い方向へ変わったのはサラのおかげだ。


「そうだ。私、今日の午前中ギルド長に会って、ネリーのこと話したんだった」

「それで有名なネリーとその弟子なら大丈夫ってことになったんだな。なんだ、俺、期待の新人扱いかと思ってたのに」


 サラの話を聞いてアレンがちょっと残念そうである。


「朝見かけたあれはやはりギルドの者だったか。アレン、気の毒だが、サラにも私たちにも監視は付いていたぞ」

「監視? なんのために」

「わからん。私たちはこんなに善良なのにな」

「だよなあ」


 ネリーとアレンは心底疑問のようだが、サラにはデリックの気持ちはよくわかる。二人の子連れで不愛想、しかもシーズン半ばに知識もなくやってくるハンターなんて不審には違いないのである。


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― 新着の感想 ―
[一言] サラ「わたし、薬師見習いじゃなくてハンターなんだけど!」 どこの誰だかわからない不審者じゃなくて、逆に(実態を知らなくて噂レベルでの)「死神」さんが来たということだと、戦々恐々として遠く…
[一言] 何で結局無理やりやらされてるんだろう。
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