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氷帝フリゼ




「アガム?聞いた事ある名前だな。というか今特級って言わなかったか?」

「あ、ああ!俺見た覚えあるぞ、確かにあのエルフは特級冒険者のアガムだ!『ふんどしのアガム』だ!!」

「あ、え……?ふ、ふんどし?」

「特級冒険者が助けに来てくれたのか!」


 アガムの登場により、兵士達の瞳に力が戻る。


 世界に四人しか存在しない特級冒険者。

 アシェリーと同格という事は、それ程の実力を兼ね備えていると思われる。


「特級だが何だか知らねぇが、たった一人来たからって何が変わるんだよッ」

「おっと。誰が助けに来たのが一人だけだと言った?」

「んだと?ちっ、面倒臭ぇ。なら先ずはテメェを瞬殺してやらぁ!!」



 イザークは地を駆け、一瞬で肉薄する。

 彼は雷を司る雷竜であり、四竜の中でも最速。

 この速さに反応出来る者など魔王や四竜以外存在しない。


 あのクソったれな人間のガキは例外。きっとマグレが奇跡だろう。


 先程と同じく貫手を放つ。

 これで終わりだ。

 そう確信した刹那、イザークの表情が歪む。


「テメェ、視えてんのか!?」

「知らなかったのか?エルフは目が良いのだぞ」


 アガムは素手で魚を捕まえるかのようにイザークの貫手を受け止めていた。


 確かにイザークの移動速度は尋常じゃない程速い。しかしアガムの目はしかと雷竜の姿を捉えていた。


「驚くのはこれだけではないぞ。ハッ!」

「何言ってやが――カハ!?」


 話の途中で突然背中に衝撃が走った。


 まただ。

 また知覚する前に投げられている。

 一体何が起こっているというのか。


 混乱しながらもイザークはすぐに立ち上がり、回し蹴りを繰り出す。


 だがこの一撃も余裕で躱され、いつの間にか投げられている。


(ふざけんな、何がどうなってやがる!)


 イザークはそれからも最速の攻撃を仕掛けるが、一発も当たらずその度に地面とキスをした。


(クソがッ!!)


 屈辱だった。

 誇り高き竜が、下等種族であるエルフに弄ばれている。こんな事は、絶対にあってはならない。


「死にさらせぇ!!」


 打撃を諦め、一旦距離を置いたイザークはドラゴンブレスを放つ。

 雷を帯びた光線がアガムに襲いかかった。


 それに対しアガムは逃げもせず真正面から待ち構える。両手に魔力を纏い、直接受け止めると、


「ハァッ!」


 円を描くように手を動かし、ドラゴンブレスを上空へと逸らした。


「俺のブレスが……防がれただと?」


「いけるッ」

「勝てるぞ!」

「俺達も負けてられっかよ!」


 竜の真骨頂を易々と受け流され、信じられないと驚愕するイザーク。

 逆に兵士達はアガムの勇姿を見て完全に戦意を取り戻していた。


「どうする、加勢しましょうか?」

「馬鹿野郎、このまま舐められっぱなしでいられっかよ!こいつは俺が殺る!!」

「あっそ、じゃあ私とボルボフは他の雑魚を殺っとくから。くれぐれも負けて、デュラガ様の顔に泥を塗るんじゃないわよ」


 頭に血が上っている今の状態では何を言っても聞く耳持たないだろう。

 あのエルフは厄介だが、それでもイザークが遅れを取るとは思えない。


 エルフの相手はイザークに任せ、フリゼは他の兵士や冒険者を始末しようと踵を返した。


「私はアイツのように遊んだりはしないわ。だから安らかに眠りなさい」


 冷徹で無慈悲な言葉を告げると、フリゼは大気を凍らせ、巨大な氷塊を作り出す。


「で……でけぇ!?」

「あんなのどう防ぐってんだよ……」

「クソ、全然砕けねぇ!!」


 フリゼが手を振るうと、空中に浮かぶ氷塊がズズズと落ちてくる。


 魔法を使える兵士や冒険者が必死に破壊を試みるが、表面を崩すのが関の山で一向に砕ける気配がない。それ程濃密な魔力の塊だった。


「クッソーーー!!」

「うわぁぁぁああああ?!」


 打つ手がない兵士達を氷塊が押し潰す瞬間、夜空に一筋の閃光が舞い散る。


 バジジジジジジジッッ!!!


 けたたましい雷鳴が鼓膜を劈くと同時に、氷塊が粉々に砕け散り蒸発した。


「修行帰りに港に立ち寄ってみたら、どうも騒がしい客がいるじゃないか」

「……私の魔法を破るなんてやるじゃない。名前を言ってごらん、坊や」


 氷塊を破砕し、突如現れた茶髪の少年に尋ねる。

 すると少年は腕を組みながら、傲岸不遜な態度でこう答えた。






「僕はアルフレッド……"ただの学生だ"」


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