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 港の端の方から、だんだん中心に行くにつれ、人が増えてきた。

 同じ方向に向かう人達が、続々と。

 それが、綜都に続く広い道に出た瞬間には、祭りかと思った。

 それだけ、綜都に行く人出て行く人達が多かったのだ。


 道の行く先には、立派な城塞都市と、おそらくこの世界で一番高いだろう五階建てぐらいの建物。そしてそれには劣るが、充分高層といっていい建物の数々。


 ついに、ついに話しに聞くだけだった、綜都に辿りついたのだ。そして、そこを実質統治している、綜の宰相さいしょうを説得しないといけないのだ。この震えは、武者震いとしておきたい。薬の副作用ではないと信じている。


「はぁ~」


 慶珂が、珍しく間の抜けた声を上げた。

 その視線は、街をぐるりと囲む城壁よりも高い、あの五層ぐらいの建物。

 わかる。田舎者丸出しでも良いと思えるくらい、あれは凄い。私も、前世の記憶が無かったら、めっちゃはしゃいでいたと思う。

 春陽と珊瑚はさすがというか、見えてはいるがそれがどうした、という感じだった。


あんちゃん、綜都ははじめてけ。すんげ~だろぉ」


 前を歩く禿頭のおじいさんが、自分の街でもないだろうに、得意げに慶珂に話しかけた。

 慶珂は素直に、


「はい。凄いですね。話しには聞いてましたが、これほどまでとは思わなかったです」 


 そう、感嘆の声を上げた。

 私達と同じ方向に進む人達の中からも、ちらほら感嘆の声が上がっている。あの建物、初見の人をビビらせる良い装置だな。

 おじいさんは、慶珂の反応に微笑ましそうに笑っていた。


「そうだろ、そうだろ。中はもっとすんげぇぞ~。だけどな、悪い人間も、それだけ多くなってくる。気をつけっぺよ」

「はい」


 脅すように言うが、顔は笑っている。おじいさん自身も、そこまで悪い人に当たったことは無いのだろう。

 綜都はこの世界で最大の、五十万人都市だ。

 城塞の外にも街ができて、壁が三回ぐらい増設されたと聞いている。

 それだけの人が生活をしているのだ、犯罪だって起こる可能性は高いし、悪い人が混ざってくる率も高くなってくるのだろう。それはどこでも同じらしい。


 ーーああ、でも、風伯ふはく先生!

 私、以前、先生が憧憬どうけい混じりに話してくださったあの綜都に今、立とうとしていますっ。

 この話は、戴都の川床と一緒に、先生に話したい。聞いてほしい。先生、元気かな……。


 私が一人、感動している間にも、春陽のおかげで人々に紛れ、前に前に進んでいる。

 みんなが目指す先にあるのは城壁の大きな門。

 あそこで、入国審査のような事が行われているそうだ。それに通過すると、はれて綜都に入れるのだそうだ。

 私達は、おじいさんが持っている商売用の手形で大丈夫だそうだが、やっぱりドキドキする。

 周りの人達も、ちょっと緊張した雰囲気になってきた。

 

「ちゃんと並べ!」

「馬車は右、徒歩は左だ、間違えるなよ!」

「手形を用意しておけ! 無いなら最後尾にまわれ」


 男性達の、ごつい声があちこちで上がった。

 ざわざわしだした雰囲気で、いよいよ門に近づいたのだと知れた。

 ……大きなイベントの運営の人達を見ているようで、心の中だけで、彼らの仕事の大変さに頭を下げた。


 道の広さに対して、城門は幅が狭いので、だんだん人々の間隔が詰められてくる。

 良く見ると、庶民の人達ばかりのようだ。商人のような人もいるが、あまり良い着物とは言えない。おそらく、金持ちや貴族用の、もっと悠々と入れる門がありそうだ。

 春陽は確か以前に一度、環侯のお供で綜都に行ったことがあるハズだ。その時は、おそらくこんな場所目にもしなかったのだろう。珍しそうに見ている。

 この旅は、春陽にとっても良い刺激になってるのかな。

 

 順調に列は進み、いよいよ私達の番になった。

 が、おじいさんが言った通り、おじいさんの商売用の手形で、すんなり中に入る事ができた。ドキドキしまくっていたので、肩透かしをくらったような感じだ。

 なにしろ凄い人がずっと並んでいるのだから、多少緩くなっても効率良く人をさばかないといけないのだろう。お疲れ様です。





 さあ、城壁の大きな門を抜けると、そこは、綜都だった。

 綜都だった。

 大事な事なので二回言いたかった!


 入ってすぐ、そのまま広い舗装された道が、まっすぐ伸びるのが見える。どこまでも続きそうだが、その突き当りには、また城壁。

 あの向こうが、おそらく貴族や侯が住まう区画。あの、五重ぐらいありそうな建物も、その城壁の向こうにあった。

 そして、城壁に行くまでの道も、建物も、絢爛豪華、としか言いようがなかった。

 もっと大きなお祭りでもやってるんじゃないだろうか、というぐらい人々が往来している。建物も多いが、人も多い。喧噪がすごい。

 首都だ。

 間違いなく、ここがこの国の首都だ。凄いな。

 私がぼんやりしていても、かついでくれてる春陽が歩いてくれてるから、迷子にならない。最高。

 環の祭りですら、ちょっとぼんやりしてたらはぐれてしまうのだ、こんな所ひとたまりもなかっただろう。春陽には感謝しか無いな本当に。


 おじいさんは、人込みに紛れながら、確かな足取りでどこかに向かっていた。

 途中で、入ってきた中心の大通りから横道に逸れる。が、横道もまっすぐ伸びており、どうやら将棋盤のようにきっちり縦横縦横に道路が張り巡らされているようだ。計画都市、ってやつかな。


 おじいさんはさらに歩いて、ある建物の前で止まった。

 この通りに入った時から思っていたが、干物や燻製の匂いがあちこちからしている。どうやら、そういったものを主に売っている通りらしい。商店街、といったところかな? 生鮮市場ではなさそう。

 おじいさんは、その商店街の中にある、左右の店と同じように小さな建物に入って行った。左右どころかこの商店街、道の向こう側も同じような形の店が続いてる。看板や表に出す商品で個性をだしているようだが、建物の規格は同じらしい。アパートみたい。そんな事考えながら、私達も続いて建物に入った。

宰相、の役割説明しましたっけ…?家宰だけでしたっけ…?(健忘性)

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