表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
62/152

56


 次の日。


 あれだけ怒らせ、心配させてしまったから、今日飛燕は来てくれないかもしれない、とちょっと諦めていた。

 が、朝使いを出したら、来てくれた。


「……おはようございます」

「お、おはよう、飛燕。今日も、よろしく、ね?」


 しかし、その顔はむすっとしており、今日は目を離さないぞという心構えがひしひしと、ともすれば重い程、のしかかってくるようだった。うう、ゴメンって。


「おはよう。お前、目の下にクマ出来てるけど、大丈夫か?」


 慶珂が何でもないようにそう言うと、ちょっと雰囲気が和らいだ。


「大丈夫。ちょっと、いろいろあっただけだから」


 そこで、飛燕の視線を感じて思わず、パッと顔を背けてしまった。

 うう、後ろめたさがヤバい。

 あの計画の為に、いずれこの子にも話さないといけなくなる。それまでに、仲直りできるといいなあ。


「そっか。まあ、今日は俺も気を付けるし、もちろん、お嬢さんが一番気を付けるからさ。気楽に行こうぜ」


 飛燕の様子を察して、慶珂が場を和ませようとしてくれる。さすが、空気の読めるできる男だ。飛燕は慶珂を見て、フッと肩から力を抜いた。少し苦笑している。


「そう、だね。うん。ごめん、僕もちょっと神経質になってたかも。珠香さん、倭都さまが、会いに来てやっても良いわ、だって」


 その少し苦笑した雰囲気のまま、急に話を振られたので一瞬反応が遅れた。が、理解が追いついた時、思わず声を上げていた。


「本当! ありがとう、飛燕」

「でも、倭都さまをこの屋敷に入れるわけにはいかないんだけど、どうやって食事を出すつもりなの?」


 テンションが上がった私を落ち着かせるように、飛燕が冷静に疑問を口にする。それは、うすうす感じていた事だ。お世話になってる家に、知らない子を入れるわけにはいかないよね。


「それは、一応考えがあるの。ピクニック……外に料理を持ち出そうかなって」


 飛燕はいつもの調子で、こてんと首を傾げた。


「花見でも月見でもないのに、外に出て食事するの?」

「ええ。どこか景色とか気温が良さそうな所を見つけて、あっ、川の畔とか良いんじゃないかな。そこで、みんなでのんびりご飯食べるの。素敵じゃない?」


 ぶっちゃけ、前世で学校行事以外で、仲良い人とピクニックなんてしたことない。けど、この面子なら楽しそう、とふと思ったのだ。飛燕は首を傾げたまま。慶珂は苦笑したまま。


「まあ、お嬢さんがそうしたいって言うなら、今日ぐらい付き合ってやろうぜ。どうせ、中には入れないんだろ」

「そう、だけど……わかった。昼間は暑いから、夕方、涼しくなったぐらいに合流できるよう、手配するよ。場所も、こちらで指定させてもらうけど、いいよね」


 一応、この辺が落とし所だろう。倭都ともそこで合流できた方が、都合が良さそうだ。私は素直に頷いた。


「わかったわ。できたら景色が良い所が良いけど、贅沢は言わないわ」


 素直な私の誠意が伝わったのだろうか、飛燕は少し安堵したように頷いた。よし、ちょっとでも、また打ち解けていかないとね。







 とりあえず、今日も飛燕を引き連れて市場に来た。

 今日は何故か色が昼間にいて、夜居ないそうだ。ということは、昼に間に合うように出しつつ、夕方の料理も作れるぐらいの材料がいる。二回も買い物に行くなんて効率悪いしね。

 さて、困ったぞ。

 昨日と同じ料理を、二日続けて出すのは不味いから、昨日のつみれ汁は夕方に回したい。が、ピクニックに汁ものって、どうなんだろう。サンドイッチとかのイメージしかないけど。っていうか、パンって見ない。包む系は割とある。肉まんとか小籠包とかあんな感じのやつ。……酵母。酵母からなのか、それはさすがに無理だろう……。いやでも魚醤とかあるし、発酵の概念はあるのか……?


「珠香さん、ついたよ」


 私がうんうん唸っている間にも、二人に連行……もとい守られて歩いていたので、あの大市場に着いていた。飛燕の言葉で、ハッとした。


「え、ええ。ありがとう。さて、今日はどうしようかな」


 飛燕が、私に言葉をかけたままの表情で、見つめてくる。な、なんだろう。首を傾げてみる。と、


「手、繋ぐ?」


 飛燕も首をこてんと傾げて、右手を差し出してきた。


「え?!」


 ビックリして、思わず大声を上げてしまった。慌てて両手を振る。


「い、いや、小さい子じゃないし、大丈夫よ?」


 飛燕は、そう? と言いながらもあっさり手を引っ込めた。……こわい、この子、マジで何考えてるかわかんないうえに天然のタラシすぎて、怖い。横で慶珂が、その手があったか……とつぶやいていたが、聞いてない事にした。

 若い男の子と手をつなぐなんて、恥ずかしい。同年代に見られていても、いや、見られていればこそ、こそばゆい。


「と、とりあえず、食器屋か、旅行の道具を扱ってそうな所に案内して欲しいな。入れ物が欲しいの」

「わかった。えっとね、こっちの方にあったハズだよ」


 そういうと、飛燕は市のはずれの方に向かって歩き出した。

 手を繋ぐ事は、とりあえず免れたようだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ