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苦情の多い生物部  作者: タワラヤ
6/8

合宿

拝啓お母さん

ゴールデンウィークも半ばに差し掛かろうとしています。お母さんはいかがお過ごしでしょう。僕は今、同じ部活の女子数名とキャンプしに来ています。

と書けばおそらく世の中の男子の大半からたたかれリア充バッシングが起きることは確実だろう。

だが、こう書けばどうだろう。

拝啓お母さん

ゴールデンウィークも半ばに差し掛かろうとしています。お母さんはいかがお過ごしでしょう。僕は今、地獄にいます。虫を食べ、夜を徹して山歩きをし、獣に襲われかけました。彼らのことを決してフレンズなどと思ってはいけません。野獣は野獣です。そして今目の前に警察官がいます。

こう書いてしまえば後々女子といたことが発覚しようが何だろうが性格が相当歪んでない限りうらやましいなどという人はおらず。むしろ哀れまれるだろう。

まぁ、つまりそういうことだったのである。

星崎青華に電話をかけて1時間30分ほど経過したのち山道を四輪駆動車が登ってきた。

ほんと何台車持ってるんだろう。黒塗りの高級車とか出てこないことを祈るよ。

中に入っているのは当然彼女である。この山道はなんで一応舗装してあるの?ここたぶん本来一日一台車が通るかどうかってレベルのとこだよ?なんという税金の無駄遣い。

車の後部座席の扉があき銀髪の少女が下りてくる。僕は一瞬身構えた。他人がいる前で抱き着かれでもしたら完全にあれな空気になるし。なによりこの部の部長である鳳来咲羽はポンコツながらも浮ついたことに対し厳しいことで有名である別名ブリキ中将だ。自分自身は歩く公然わいせつ物だというのにケシカラン。ひどい目に合うことは目に見えてる。まぁ、実際に体験した後だし。

そして青華はふらふらと歩きながらこっちに近づいてきたかと思うと(たぶん車酔いである。)

案の定とびかかっていった。僕ではなく鳳来このはに。北の国のミサイルもびっくりな方向転換!

そして彼女のジャンバーの中に手を入れたかと思うと脇をくすぐり始めた。いいぞもっとやれ。※ちなみに今の彼女は上半身はジャンバーを羽織り、下半身はウェーダーという学者でもそうそうしないようなフル装備に姉によって改造が施されている。できることなら中がどうなってるか気になるのでぜひとも上着は剝いでほしい。

「にゃぁぁ、やめてください。なんにゃのですか!」

「抜け駆けした猫ちゃんには罰を与えないと。」

さっきから相手を猫呼ばわりしてるけど流行ってるのそれ?あとジャンバーのチャックが暴れたことによって半分くらい降りてきてる、なんか逆にエロイ。

「だからといって、なんでここにゃのです。せめて先輩のいにゃい場所で」

いやいやお気遣いなく。

「先輩もきっと見たいですよ。」

ばれてた。

「そういう問題じゃにゃいぃぃぃ・・・」

その後部長が介入することもなく、鳳来このはは約五分ほど人の声とは思えぬ喘ぎ声を出し続けることとなった。

こんなこと観光地でやったら確実にTwitterに挙げられてバズり、主犯格として僕の住所が特定されポリスマンに引き渡されるか、声を聴かれて通報されたのち僕がポリスマンに引き渡されただろう。ありがとうよくわからない道、税金の無駄遣いとか言ってごめんね。

「うう・・・ううう・・・」

服が乱れまるで事後のようになっている鳳来このはの濡れた瞳と目が合ったとき申し訳ない気持ちよりも先になんかエロいという感想が出てしまったことは内緒にしよう。幸い僕の顔や下半身よりも先に妹の痴態をカメラを構えて撮ってる姉のほうに目が行ったみたいだし。その後どこかに連れていかれた部長はしばらく戻って来なかったのはまた別のお話である。

そんなわけで生物部の合宿は一人欠けた状態で開始されましたとさ。主催者がいないと全く何にもわからないんだけどね。

「はい、えーとじゃあ第一回生物部自然合宿を始めたいと思います。」

結局部長は戻ってくる気配がないので僕が音頭を取って合宿を始めることとなった。

「じゃあ、初めに周辺のルッキングを行おうと思います。」

全く何をやればいいかわからないのでとりあえずルッキングということにしておく。この行動が原因でかなりひどい目に合うのだがそれは数時間後の話である。

「じゃあここからは各自自由行動ということで。」

ということで、場をお開きにした。というかこれ以上間が持たない。なんかにらみ合ってるし。

そうして始まった自由行動であるが

「先輩これなんですか?」

「ハ・ン・ミ・ョ・ウ知らんとは言わせんぞアホンダラ。」

「やだなー、冗談です。でもこのはちゃん知らないと思って。このはちゃん素人らしいですよ。」

素人って響きはなんかエロイよね。

「へー、なんでこの部活入ったの?」

「それはその先輩が・・・いたから・・・」

「仲睦まじいしまいですよね。」

姉のほう消え去ったけどな。というか別の言葉が聞こえた気がするんだけど。

「ハンミョウっていうのはこういう雑木林の淵の林道によくいる虫で、追いかけると追いかけている人間の前方にまるで道を教えるかのように飛んで逃げるから別名道教えともいわれてるね。海外だとタイガービートルって言われるんだけど、そのゆ・・」

「説明だけだとわかりにくいと思うので、実物どうぞ。」

人の話区切るなよ・・・というかすごい悪質な持ち方してるよな。胴体握って顔だけ手から出してる。まぁさすがにそれをそのまま掴もうとはしないだろ。というか馬鹿かお前。完全にトラウマを植え付けに行ってる。

とかなんとか考えてたけど今気づいた。この子、顔から行く気だ。というか今にもつかむ。

「噛まれるとむちゃくちゃいt・・」

途中まで言って気が付いた。もう手遅れなことに。もうすでに目が潤んでる。

「へー綺麗なのですね。」

すっごい棒読み。というかなんで痛みを我慢してるの?

「えっと、一応言っておくけどあごには注意してね?挟まれるとむちゃくちゃ痛いから。」

実は噛まれてないのを期待して言ったが、だめだ、完全に指が赤くなってる。

「えっ、それはちょっと怖いのです。」

そういって手を開けた途端ハンミョウが飛び出した。早く離れてくれてよかった。というかお願いだからもう意地は張らないでくれ。見てるこちらが痛い。

賢明な方ならお分かりいただけるだろう。

各自自由のルッキングのはずが完全にそのまま集団行動となっているのだ。それもしょっぱなからこんな感じで多分これ心労でぶっ倒れるぞ、俺が。

その直後事件が起こった。

「ねぇ青華ちゃん。これってなんて虫?」

手に握った何かを引き渡しながら鳳来このはが質問した。

ここまではいい。問題はその中身である。

手の中に握りこまれていたのはオオスズメバチの女王である。

この時期のものは動きも鈍く、また女王蜂はその性質上あまり攻撃はしないのだがサイズ的な問題で一度攻撃を始めればその攻撃力は戦闘要員をもしのぐ。

というか女王だろうが動かなかろうが普通蜂は手の中に握りこまないし人にも渡さない。

「あはは、これはですねオオスズメバチの女王蜂ですよ。」

一見冷静なようだが完全にひきつった顔で青華は答えた。頼むから早く放せ。、

「へーそうなのですか。」

そこでしばらく間をあけた。さすがに早く放させてやれよ。そして

「どういう虫なんですか先輩?」

まさかの放置。頼むから9月あたりにテレビつけて自分で見ろよ。だいぶ人間よりに偏った報道してるから。完全に蜂を悪者扱いするあの報道が原因で起こる問題もあると思うんだよね。

「えーとね。日本最大の蜂で複合性の強力な毒を持ってるスズメバチだよ。」

だからお願い早くそれ逃がして。

「そうなのですか。刺されるとどうなるのです?一回程度なら大丈夫だけど何回も刺されたり何匹にも刺されたりするとアナフィラキシーショックを起こして最悪死に至るね。」

だから放そうぜ。

「ブブブブブ」

おそらく青華の体温により温められたことにより動きが活発になっている。いい加減放せよお前。

「ちょっ、先輩針でてます。」

「なるべく遠くにぶん投げろ。投げたら逆方向に走れ。」

なぜこんなアホなことをやっているのだろう。

結局この後蜂に襲われることはなかった。※絶対にマネしないでください。

「で、こうなるから絶対に素手で持たないでね?」

一応注意として言っておく。今回はたまたまよかったけど下手すると襲われてそのまま死亡するのである。

「でも、先輩蜂の毒針って産卵管ですよね。だったら子供を産む必要がある女王蜂は毒針を持っていないんじゃないのですか?」

いつか誰かが言ってた気がするな。というか昔の俺の誤解じゃねぇか。小5の5月に女王蜂に刺されて以来その誤解は解けたが未だになぜ産卵管と毒針が共存しているといわれてもよくわからない。

「それに関しては身をもって危険だということを証明した人がここにいるから危険だということでいいんじゃないか?」

「そうだったのですか。すみません。」

一切謝罪の意がなさそうなこの謝罪によりとりあえずこのやり取りは終了となった。本気でこれ以上は自重していただきたい。

だが、その願いはむなしくこの二人の紛争はこの後も続いた。この次には青華が

「見てくださいツチノコですよ。」

もしほんとなら奈良県下北山村と岐阜県東白川村と兵庫県美方町と兵庫県千種町と和歌山県すさみ町と岡山県吉井町と西武百貨店とムー編集部に持ってかなくてはいけない。富と名声と別荘地100坪とイノブタ一頭がもらえる。イノブタをどうしろというのだ。

が、富も名声も別荘地もイノブタ一頭も手に入らなかった。案の定それはツチノコではなく何かを食べた後のヤマガカシだったからだ。もうやめろよさっきお前涙目だったじゃないか。そんなとんでもないものを人に渡そうとするなよ?いくら下半身はウェーダーに守られてても手で持ったら噛まれるぞ?しかもヤマガカシはハブの10倍マムシの3倍にも相当する強さの毒を持っており噛まれれば下手すると死ぬ温厚ながらも非常に危険な生き物である。そんなものを手で持って作り笑顔してるだけでも十分クレイジーなのに。持ってるうちはまだしもそれを渡したら・・・戦争だろうがっ!

そんな心配もむなしく彼女はそれを鳳来このはに渡そうとしている。

「はいどうぞ、生き物好きでもめったに見る機会のないツチノコですよ。ここで触っておかないとたぶん一生触れませんよ。」

UMAを珍獣みたいな紹介の仕方するなよ。もはや動物園である猛獣の子供の有料ふれあいコーナーの飼育員か動物番組で珍しい犬か猫の子供が紹介された後にその時来ているゲスト(大抵女優かアイドル)に触らせに行く司会者の雰囲気を醸し出してる。飼育員はさておき動物番組の出演者たぶん生き物のこと好きじゃないぞ。だって、いつも「かわいい」と「えー」っていうリアクション繰り返してるだけだし。どうせプロデューサーが美男美女×動物という組み合わせがやりたくてやってるに違いない。ただ絶対僕にやらせた方がクオリティは高くなると思う。いつも子犬がスカートめくりしないかと思って犬でも顔でもなく女性の下半身を注目してみてるよ!※個人の主観であり生き物好きが全員変態というわけでもないしましてや作者が変態というわけでもありますん。皆さまご理解とご容赦のほどをどうかよろしくお願いします。

それに対して

「ヤマガカシは毒があるので遠慮しておくのです。」

鳳来このははいたって冷静であった。うん、君は正しい。というか本当に素人か?気持ちが悪いとかそういう女子高生にとって正常な反応を示すわけでもなく、生き物に興味がなければ知りえないヤマガカシという種の特徴を知らなければ何かを飲み込んで胴体が膨らんでるツチノコなんてオカルト系の雑誌が取り扱ってるツチノコの写真と大差はないと思うのだけど。

「そんなこと言わないでくださいよこのはちゃん。ほらほらツチノコを触れる機会なんて一生来ませんよ。」

しかしこっちは止まる気がなかった。やはりだめだったか。鎮まり給え!なぜそのように荒ぶるのか。

「遠慮しておくのです。」

そうそうそうそれ持ったら大惨事だからね。

ヤマガカシは乱雑に扱われたことで興奮しており今にもとびかかりそうである。

「いや、遠慮せず。」

「いいえ間に合ってるのです。」

「いや、遠慮せず。」

「いいえ間に合ってるのです。」

「いや、遠慮せず。」

「いいえ間に合ってるのです。」

「いや、遠慮せず。」

「いいえ間に合ってるのです。」

「いや、遠慮せず。」

「いいえ間に合ってるのです。」

「いや、遠慮せず。」

「いいえ間に合ってるのです。」

「いや、遠慮せず。」

「いいえ間に合ってるのです。」

この後も延々と同じ会話が繰り返されたが、長いので以下略

「いや、ほらおとなしいでしょ?大丈夫ですよ。」

とぐろ巻いてるけどな。

マジで今にもとびかかりそうだから放してあげて。

「遠慮しておくのです。」

「ビビってるんですか?」

煽るな。

「あっ、じゃあ少しだけ。」

何考えてるの?もうなんかTwitterでよく見かけた頭の悪い人のコラ画像作りたい。

「どうぞ。」

「ありがとうございます。」

ものすっごくあっけなく引き渡しが完了したよ。ものすっごい鎌首持ち上げてるし口も空いてるけど。

だが引き渡しが完了したその直後

「いくのです。ラブドフィス・ティグリヌス」

それはピカチュ●かそれともヤックルかと突っ込みたくなるようなセリフとともに彼女の腕の中からヤマガカシが飛び出した。

学名ってなんか中二臭くてかっこいいよね。ゴリラ・ゴリラ・ゴリラとかもゴリラ連呼しててぶっちゃけダサいし小学生のいじめみたいけどラテン語表記になったとたん何かの必殺技みたいに見えるしね。

まぁそれはさておき鳳来このはの手から発射されたピカチュ●もといヤック●もといウォータースネークもといくちばみもといたちひもといはみもといヤマガカシもといラブドフィス・ティグリヌス(やっぱラテン語かっこいいな)はまっすぐに青華のほうへ飛んで行った。

が、彼女は噛まれなかった。ラブドフィス・ティグリヌスは彼女の眼前に飛んで行ったかと思うと大量の骨を吐き出したのである。そしてその骨は彼女に直撃ラブドフィス・ティグリヌスは森へと帰っていった。ホントごめん。鳳来このはがその時に「森へお帰り。」と言っていたのはもはや伝説である。やっぱりジブリの方向だったのね。

そして星崎青華は

「まだだよ・・・

まだ終わっていない・・・

まだまだ終わらせない・・・!

地獄の淵が見えるまで限界いっぱいまで行く・・・!

どちらかが完全に倒れるまで・・・・・

勝負の後は骨も残さない・・・・・・・・!」

といったのちにヤマガカシの吐しゃ物のあまりもの臭さに悶絶し、テントまで戻り、限界を迎えて倒れた。彼女の亡骸にはたくさんの骨が付着していたとさ。自分が言ったことほぼほぼフルコンプして終わったわけだけど地獄の淵は見えたのかな?

というか今夜宿泊する場所に蛇の吐しゃ物を付着させた状態で戻って寝転がるのはマジでやめて。※この作品はフィクションです。現実で蛇の吐しゃ物が体に付着した場合は必ずすぐにその部位を洗いできることならアルコール消毒もしましょう。ほんとに気絶するほどくさいけどそのまま寝てしまった場合体の無事は保証できません。

「えーと、どうする?ご飯でも食べる?」

時刻は午後1時、食事をするにはちょうどいい時間である

「いえ、ちょっと食欲がないので遠慮しておくです。それより川にでも行きませんか?」

というわけで参加者が一気に2分の一になってしまった生物部の合宿ですが責任者も消えたのでまだまだ続きます。だんだんとサスペンスじみてきたよ?ちなみにご都合主義なので水着は全員持ってきてます「」(もう二人しかいないけど)ただ、この時期の川の水はまだ冷たいので入るのは自己責任でお願いします。誰かさんみたいに低体温症になって病院送りになりゴールデンウィークがパーになっても知りません。


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