第4話「百を棄て」
切符を買い、列車に少年は乗り込んだ。
休ませて貰ったとは言え、一息つくと疲れがどっと出てくる。半日とは言え、それだけでも慣れない事の連続だった。....主にこの犬の所為なのだけれど。いや犬だからこそなのだが...まさか道端でフンをしようとは...おかげさまで色んな場所へ駆け巡る事になってしまった。しかしもう大丈夫だ、電車に乗って、目的地に行くだけ。何も問題が起こるはずなんて、ないはず....
「ふざけるんじゃないわよ!」
あぁ、何なんだろう本当...うるさい....
「この私が重量オーバーとでも言うんですの!?」
吹き出しそうになる、何なのか!電車で重量オーバーなんて相当じゃないか!
気になってこっそりと見てみると、如何にもそれっぽいマダムがその肉体を揺らしながら抗議している、しかしそれともう一つ。
....アレは何なんだ?隣にある大きな荷物は。誰も指摘しないが、間違いなくアレが原因ではないのか。疑問に思っていると、そのマダムがこちらの目線に気付いてしまったらしく、こちらに向かってくる。
ああもう最悪だ!どうしようどうしよう...いや、この際言ってやろう。移動すると付いてくるその大きな荷物について言ってやる!
「...さっきからジロジロと、何か私に用がありまして?」
用も何も駅員さんから逃げたくて此方に来たのだろうに.... いやとにかく、指摘してみよう。
「あの、その隣にある荷物は何ですか?」
「.....ハァ?」
「それを出せば大丈夫そうですね!手伝ってあげますよ!電車に乗りたいんでしょう。」
なんとか必死に、素早く言いながら言いくるめてさっさと押す、列車から押し出した。そうすると、列車が揺れ、駅員さんも何処かへ走って行った。
「あ、貴方...なに....を?」
愕然とした表情でマダムは問いかけてくる。当たり前だ。そこに何もないはずの物を押し、実際に問題を解決させたのだから。....自分でもビックリだ。
「さ、ゆっくりと電車に揺られましょうか。」
それっぽい言葉でおさめ、にっこり微笑んで僕は座った。丸まって寝ていた犬の隣の席に。