3話 スタートダッシュはげんきんに!
何かは問い掛ける。何故貴方は庇ったのですか?何故?何故(理由は)?何故(意味は)?
わかりません、庇わなければ、貴方は生きていられたのに、わかりません。貴方をずっと見ていたけれど、わかりませんでした。
何故、たかが、犬の為にーーー。
少年はそこで目がさめた、その何かから逃げるようにして。
「おはよう、よく眠れたかい?」
その時、ちょうどおじさんが部屋に入ってくる。
「はい、おかげさまで。」
それは良かったと言いながらリビングへ戻っていく、どうやら朝食を用意してくれていたらしい。
....何から何まで、本当に優しい人だ。
テーブルには、少々溶けたバターによって黄金色の輝きを得た食パンに、半熟の黄身がとろけていて、その柔らかさが見て取れる。その横に添えられたベーコンも匂いだけで「美味しい」のだと理解出来る。
「「いただきます」」
ーーー美味しかった。余計な感想はいらないだろう、この一言が全てだ。
「ははは、満足してくれたようだね。」
見てわかる程に顔に出ていたらしい...まぁ、それはともかくとして、気になっていた事を聞いてみよう。
「おじさんは何故ここに住んでいるんですか?しかも独り。」
「...やっぱり、気になるかい?」
そう言うと、おじさんは家の裏にある湖へ連れて行ってくれた。
「...妻と子供が、ここで行方不明になってね。」
その衝撃的な会話をまとめると。
仕事の休日であったので、妻と子供を連れてここにピクニックへ来たんだ。とても楽しく、笑顔が溢れる時間だったらしい。おじさんが荷物を片付けにコテージに停めた車へ向かったときに、何者かがやって来たのだと言う。戻ってきたときには最初から居なかったかのように、消えていたのだと。それからは犠牲者を出さない為に、ここに独り住んでいるのだと...
「本当は、妻をずっと待っているのだけれどね。まぁ、半分半分ってところだね。」
「ずっと続けるんですか?」
「あぁ、生きてるうちはね」
「そう、ですか.....あの、黄昏の睡魔については何処で...」
「それなら、西の森を過ぎた所に私が昔住んでいた街があるから、行ってみると良い。何かわからなくとも、電車があるからね。」
「はい、本当にお世話になりました、では。」
「あ、そうだ、これを持って行くと良い」
「え、これって五千え...「さぁ行った行った!一日の時間は短いぞ!」
「ワン!ワン!」
「いやちょっ...待て!行くな!置いて行くな!」
「さぁ、犬くんも待ちきれないようだ!行ってきなさい。」
「...わかりました、ありがとうございました!」
そう言って柴犬を追いかけて行く少年の背中を見ながら小さく、頑張れよと夫は呟いた。
こ"う"し"ん"か"お"く"れ"て"す"い"ま"せ"ん"
大丈夫...です、次はきっと上手くやります...
ちなみにですが、物語中に出てきたおじさん、私は現代の50代サラリーマンのようなおじさんをイメージして書きましたが、皆様はどうでしょう?
それではこのへんで、また5話で!