2話 柴犬とコテージ
進むしか、無い。
そう決意を決め、その扉を開けた。ギギギ...という音を出しながら開いたそれの先に見えた景色。それは、一面に広がる草原であった、詳しく言うと、日の光が暖かく、蝶々や花が咲き乱れる草原。少年は己の目を疑った、当然だろう。少し前までは自然とさえも無縁の部屋にいたのだから。だが、夢でも、幻覚でもなく事実として、眼前に草原が広がっているのであった。唖然としながらも草原を歩いて行くと、赤いリードがぽつんと置いてある事に気がついた。何なのだろうかと思いながらもそのリードを拾った瞬間、近くより犬の鳴き声がはっきりと聞こえた。これは幻聴...ではないらしい。その証拠に前から1匹の犬がワン、ワンと鳴きながら走ってくるのが見えた。ーーー凛々しさなど存在すらしなかったような面構えをした、柴犬が。
「名前は?」
「ワン!」
「....答えられる訳ないか。じゃあ...これ、お前の物なのか?」
「ワン!ワン!」
力強く二回吠えた後、その柴犬はそのリードを付けてくれと言わんばかりに、噛み付いた。
「リードに名前は...書いてないか。」
リードを確認して見るものの、名前は書いてないらしく、それを確認してからリードを付けておく事にした。
それから少しして、しばらく歩いて行くと、コテージがある事に気がついた。ここにも時間の概念があるようで、もうすっかり夕方だ。誰かがいるのが一番いいが、いなければ許可を取らずに使わせて貰えるのだから...いない方が楽かもしれないだろうか...
ドアを二回ノックしてみたが、反応が無い。
「すみませーん!誰かいませんかー?」
そう言って、ドアを再びノックしようとした
「あぁ、すまないね、今料理をしていたものだから。それで何か用かな?」
失礼ながら、料理をするとは到底思えない、中々に筋肉質なおじさんが出てきた。
「あ、あのもうすぐ夜になるので、ここに泊めて頂けませんか?」
おじさんは僕と犬を交互に見て、何か訳ありだな?と親切にも泊めて貰える事になった。
「さ、食べなさい」
「ありがとうございます!」「ワン!」
家に上がり、しばらく待っていると、僕達に食事をに出してくれた。.....おいしい
「美味しいです!ありがとうございます」「ワン!ワン!」
「そうか、それは良かった。食べながらで良いから、事情を教えて貰えるかい?」
僕はここに来た経緯を全て話した。
「ふむ...なるほど、すまないけど、私に分かる事は無さそうだ。だが...」
「だが...?」
「私が研究している黄昏の睡魔、かもしれないね。」
「昏睡の睡魔...ですか?」
「そう、記憶喪失かつ、中央室で目覚める事さ、助言人に教えて...あぁ、助言人の事を言ってなかったね。助言人というのは、私達に食事や物資を与えてくれる精霊のようなものだ。その助言人が、黄昏の睡魔と言うものを教えてくれたんだよ、それと良く症状が似ていたものだからね。」
「なるほど...」
「君はこれからも旅を続けるのだろう?ならば各地で尋ねて見ると良い、何かわかるかもしれない。」
「わかりました、やってみます...。」
本当に、分かるかはわからないが、やらないよりは確実にマシだ。
「それじゃあ、今日は遅いからもう寝るといい、ベッドルームはそっちだからね。」
そう言ってベッドのマークが扉に書いてあるドアを指さしてくれた、何から何まで優しい方だ。感謝してもしても足りないくらいだ。
「ありがとうございます、それじゃあ...おやすみなさい。」
「あぁ、おやすみ。」
そう言い終わると先程までテーブルの下に寝っ転がっていた柴犬もベッドルームに入って来た。
扉を閉め、そそくさとベッドに入る。
柴犬は床で寝るらしい。...さすがに言いづらいし、名前を決めなくては。まあそれも明日で良いだろう....
本当に、理解が追いつかない一日だった、だけど、覚悟を決めてここまで来たのだ。今さら辞める訳などいかない。今一度覚悟し、少年は眠りについた。
量が違う違うのだよ、1話とは!
今のところ3話まで大まかな流れは出来ているので安心ではありま...せんね。
さて今回は、柴犬とおっさん、かつコテージ、かつ草原が出て来ました。色々気になるワードも出て来ました!作者もやや興奮気味ですが!
それでは、また次回!