地域タウン
とうとう、その日がやってきた。地域タウンが来る日だ。
その日は幸いにも、休日だったので、
私は郵便受けで、待ち伏せ作戦が出来た。
あの写真、家族に見られたくない……私の載ってるページだけ、わからないように切り取っておこう。
来た。探した。あった。
可愛いよ、私。めちゃくちゃ可愛いよ。
あのカメラマン、怪しかったけど、腕は確かだよ。褒めてつかわす。
桐男もカッコ良かった……白のタキシードを、完璧に着こなしてた。
隣のおばさんは、本当に思いっきり、おばさんだった。
でも、よく見たら……そのおばさんと桐男は、年齢的に釣り合って見えた。
アレ?桐男。カッコ良かったよね?
でも、そのチャペルの広告には……
さまざまな事情で結婚式が挙げれなかった、熟年カップルの皆様。お子様と一緒に、今こそ結婚式。
って書いてあった。
熟年カップル……イッヒー、ヒー、苦し、ヒー、ヒー、苦し、ドハハハハハハ、苦し、苦し……初めてだよ。
私は腹の皮がよじれるっ、てのを。生まれて初めて実感した。
痛いよコレ。
次の日。私達が揃って学校に行くと。
「お似合いだね」「素敵な親子」「最高の親子」「仲良し親子」「パパって呼んでるの」
「それともお父さん?」
などと、まあ言われた、言われた。次から次へと、いろんな人から、言われました。
でも私は、それが楽しかった。
注目されるのが、嬉しいのかな?
テンションが上がってた私に、桐男が言ってきた。
「誠菜。お前、モデルにならないか?事務所の人も、あの写真を見て、誠菜の事を、めちゃくちゃ気に入ってたぞ……俺も、誠菜と一緒に仕したいし」
「そうなんだ。桐男も私と仕事がしたいんだ……ま、大好きなパパのお願いじゃ、断るわけには、いかないわね」
「お前な……パパって」
「ねーパパ」
私は。自分から手を組んで、桐男に甘えてみせた。
「おースゲえ。本物の親子みたい」
「着てる制服が、めちゃくちゃ違和感あるけどな」
「惜しいな、本当」
そんな事をクラスの男子に言われたけど、私は楽しかった。
その日の夜。桐男から電話がかかってきた。
「誠菜……なんか話題になってるみたいだぞ。ネットで」
「どんなサイト?」
「いろんなサイトで……とにかく。高橋桐男、隠し子で検索して見てくれ」
電話を切って検索してみると……桐男と私の写真が、あちこちで……
桐男の隣のおばさんは、モザイクかかってたけど、私達は、そのままで載ってて……
出た、ぱっ。
まさか私の桐男君に限って。
やっぱりこいつ、年ごまかしてたか。
こいつは絶対、子供いると思った。
娘、可愛い。ペロペロしたい。
などと書きこみも、いっぱいあって、見てるだけで疲れました。
でも、桐男。けっこう有名なんだな。
そんな事があった何日か後に、
そのネットの人気?のせいなのか?
私に電話が掛かってきた。
「桐男君と一緒に、モデルをして欲しいんだけど?」
「どんな内容ですか?」
「デート東海って雑誌の撮影だけど、海でデートって企画で……今は初夏で、まだ水は冷たいけど、どうかな?」
「やります。水の冷たさなんて、私と桐男のアツアツぶりで、沸騰させてやりますよハハハハハ」
「お、いいね。期待してるよ」
桐男と海か……最近は行ってないな。久しぶり。めちゃくちゃ楽しみ。
あっ、水着を新しく買わないと。
次の日、学校帰りに栄へ行った。フッションビルで水着を試着したんだけど……
合わない……サイズが……みんなみんな大き過ぎるよ。
私の可愛くて、スリムなお尻に合う水着が、一着もないよ……みんな、尻デカすぎだろ?胸も……
もう仕方なく、子供服屋さんに行った。
あった、可愛いのだらけだ。
試着した。ぴったりだ。サイズ150……合うはずだよ。
私は結局。胸がツルピタのビキニを買った。
白と青のボーダー柄が、可愛いし……