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ウエディングドレス

「俺の初めてのタキシード。一番最初に誠菜に見て欲しくて……」

「ありがとう、凄く似合ってるよ。桐男」


私達は、じっと見つめ合っていた。このまま時間が止まって欲しいって、私は思った。

でも、そんなわけにはいかず、私達の周りは、なぜか急に騒然としてきた。


「間に合わないって?どうするんだよ」

「今、必死に探しているんですけど……」

「チャペルが借りれる時間、決まってるんだぞ。この後、本物の結婚式があるんだぞ。大丈夫なのか?」

「もう、このさい代役しかないのでは?」

「代役って、そんなの居るわけ……居た……桐男君の隣の彼女。モデルやってみないか?」


え?カーディガンを肩に巻いた、変なおじさんが、私に声を掛けてきた。


「私ですか?」

「そう君……君は可愛いから、今回のモデルに、ぴったりだよ。是非、お願いしたい」


おじさんが、そう言ってきた。そして桐男も、言ってくれた。


「誠菜。やってみなよ……俺も誠菜と一緒に、バージンロード歩きたいし」

「ありがとう桐男」


私は桐男にお礼を言って、変なおじさんには、


「やります。是非、私にやらせて下さい」


って言った。すると変なおじさんは、私に衣装を一式、渡して、更衣室に案内してくれた。

更衣室の中で、渡されたドレスを、じっくり見た。

そのドレスは、純白で、Aラインで、レースやフリルがいっぱい付いてて、とても愛らしかった。

スカート丈が短かったけど、夏用のドレスなのかな?って、私は思った。

渡された衣装セットの中に入ってた、パニエを穿いて。ソックスも代えた。

そして、ちょっと苦労したけど、ドレスも着て、

白くて、ヒールがフラットな、靴も履いてみた。

鏡に映った私は、とても似合ってて、可愛いかった。

このドレス姿で、桐男と並んでる所を、想像するだけで、私は気持ちが高ぶった。

私がチャペルに出て行くと、スタッフさんみんなが、


「可愛い」「素敵」「似合ってる」「最高」


って、褒めてくれた。褒められて伸びるタイプの私は、いくつかの年齢分、成長した気がした。

私の近くに桐男が居た。

私を見て微笑んでいた。

私には、今、この瞬間が……桐男との本物の結婚式じゃないかって思えた。

私は決めた。桐男とハグしよう。

飛び込んで行った私は、突然、私と桐男の間に割り込んで来た人に、はばまれた。

そして、勢いあまって、その人を抱き締めてしまった。

腕が……腕が、抱き締める形に、なってたんだよ……

でも??私は抱き締めてる人の衣装をよく見た。

ありゃ?何この人?ウエディングドレス着てるよ?間に合ったの?私は、いらなくなったの?え?え?

その人は、高いヒールを履いていたのか?私より25センチは高かった。

175センチか……190センチの桐男とは、悔しいけどよく似合ってた。


「お嬢ちゃん、どうしたの?ママと間違えたのかな?」


その人。モデルさんかな?に、声を掛けられた。

はあ?ママ?そのモデルさんは、顔を見ると、思いっきりおばさんだった。


「おー凄い。めちゃくちゃ似合ってて、可愛いね。僕の見立ては、間違ってなかった」


そう言って近づいて来たのは、私にモデルをしてみないか?って言ってきた、変なおじさんだった。


「じゃ、3人でチャペルの階段に並んでね。今から写真を、撮るから」


えー、変なおじさん……3人で結婚って。神様が腰抜かしちゃうよ、それ。


「じゃ、奥に、夫役と妻役の二人が並んで、手前の真ん中に、娘役の女の子が並んでね」


そう、変なおじさんに言われた。

えっえっ。私。娘役なの?桐男の、娘役なの?

呆然としてる私を、桐男がエスコートしてくれて、なんとか私は、指定されたポジションにおさまった。


「娘役の子。もっと笑って、それじゃ葬式だよ」


カメラマンにそう言われたけど、そんな事言われたって……こんな気分じゃ……

ええい、やってやろうじゃないか。私のスマイル0円を見せてやるよ。

私の気合いの入った顔は、挑むような表情になったけど、なんだかそれを、カメラマンは気に入って、

そのままの表情で、何枚も写真を撮られた。


「この写真、来月の地域タウンに載るから、楽しみにしててね」


げ。地域タウンって、うちの学区とエリア被るよ。クラスのみんなに、バレバレだよ。

私は、今更ながら恥ずかしくなって、顔が真っ赤になった。







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