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神獣殺しの精霊使い  作者: 氷帝花心(門屋定規)
2章 無の精霊使いと三英雄
67/67

第54話 ■■■


それは突然目の前に顕現した。

炎のように揺らめく姿。

かつて、大陸の半分を焦土と化した化物の片割れ。

世界7大獣の一つ。

かつての精霊神の尽力により、姿こそ小さいが、次元が違う。

それこそ、神にすら到達していても不思議に思えない。


名を

――■■■


この世の全ての破壊魔法を超越し、

悪意とともに変幻した神悪。


それを見た二人は、息をすることすら忘れ、心臓すら鼓動を止めた。

何もかも、異次元な存在。

それが周囲の時を止め、二人が手にした魔力回廊が魔力渦に引き込まれて、

天へと上昇する。


■■■は二人に魔力渦を伸ばし、そこで止める。

否、別の魔力渦の干渉を受け静止した。


『《    》』    


何かが何かと会話をする光景は誰の目に留まることもなく。

ただただ、少しばかりの時間と共に世界から消え失せる。

まるで、目的は果たしたといわんばかりに。





――何かが起きたことを二人は知覚した。

だが、一瞬の内に起きた現象に脳の処理が追いつかないのか、二人はその場で呆然としていた。


「――ああ、可笑しいな」

「ええ……そうね。何か可笑しい。でも、それが何か分からない……魔法かしら?」

「相当な使い手であれば、可能かもしれない。けど、二人同時に魔法の手に掛けるなんて、そんな高度な魔法を使える者が居るとは思えない。精神干渉魔法の使い手。それこそ、エルフ王が相手だとすればあり得なくはないが、そんなおとぎ話を信じたくはないかな」

「エルフ王が相手なら殺されているはずね。だからそれは違うとして、精霊神クラスで相手の精神に干渉するなんて魔法、聞いたことある?」

「ない。王国によって、情報隠蔽されているだけっていう可能性もあるが、それにしたって襲う理由が分からない。そもそも、魔力回廊を奪うなんて、王国にとって意味がないはずだ」

「それなら、やっぱり魔物を嗾けた相手の仕業かしら? 大量の魔物を操る程に優れた精霊士が私たちを殺そうとしたと考えるのが自然かも」


二人は今しがた起きた現象について話し合う。

そして、その全てが理由には繋がらない。


「人の仕業とは思えない。そして、エルフとか魔族によるものだとも思えない。とすれば、世界7大獣の一角に、精神干渉魔法を使う可能性が僅かにあるか」

「化物がわざわざ私たちに構う理由はない。だけど、今はそれが一番可能性のある話ね。はぁ、それにしても上にはどうやって報告すればいいのかしら」

「未知の敵と遭遇し、魔力回廊を奪われたなんて、信じてもらえるか微妙だな。魔力回廊の話だって、証拠がない今、どこまで精霊軍を動かして貰えるか」

「どちらにせよ、今は戻りましょう。ギールの魔力も弱まっているわ」

「それを言うならリーナもだがな。全く、割に合わない」



精霊軍にとって情報とは信頼と同義だ。

だからこそ、部隊長のギールの言葉は信じられた。

だが――


「流石にカリア様の捜索第一優先か」

「当然かしら。今の精霊軍が束になって精霊神を数人拘束するのが限界なのよ。そんな状況で未知の敵まで相手取る余裕なんて無いってことね」

「カリア様、炎の精霊神、攻撃防御の要が居るからこそ、安心できていたって部分もあるかもな。炎神は、破壊に関しては右に出る者はいないが、防御系統はなあ」

「そうね。私の部隊が今までどれだけ苦労したことか。でも、攻撃に関しては最強の一角よ。もし、私たちが遭遇しただろう敵と戦うことになれば、どうなるか分からない」

「そうだな……今は、俺たちにできることをするしかないか。そういえば、バルから手紙が届いていたんだった」

「ちょっと、それを早く言いないさいよ。それで、何かあったのかな?」


手紙を読むギールとリーナ。

そこには、学園で出会った少年について情報求むと書かれていた。


「――アルカナねえ。師匠ながら不安になるな。バルの奴、どこまで面倒ごとに首を突っ込めば気が済むんだか」

「アルカナって、あのアルカナ?」

「たぶんそうだろうな。元契約者なんて言い方、アイツくらいしかしない」

「そうなのね……彼のことをどこまで話すか悩んでいるって表情だけど、話さない方がいいと思うわよ?」

「やっぱりそう思うか? 俺としても、今のアイツらには手に負えないことだと分かってはいるが、経験を積むっていう意味ではなあ……せめて俺が学院に居れば、話は別だが」

「いくら護衛だとしても、精霊軍の第一部隊長が居たら、不審がられるわよ。それこそ、彼の逆鱗に触れるかもしれないわ」

「あいつの逆鱗なあ、抑え込むのは俺の役割になるのが決定か。昔と今じゃあ、魔力量が違いすぎるし、うん、無理だな」


手紙を宙へと投げ、魔法銃で打ち抜く。

炎に包まれ、瞬く間に黒焦げとなり、チリとなる。


「――今回ばかりは、無理だな。首を突っ込むなら、二人に任せるしかないか」

「そうね、ルシアが居るから危険なことにはならないと信じましょう」


次回から学院編に戻ります。


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