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神獣殺しの精霊使い  作者: 氷帝花心(門屋定規)
2章 無の精霊使いと三英雄
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第52話 大罪

「アルカナ?」


気配なく後ろに現れたことから、精霊なのだろう。

だが、その姿はまるで――


『本当に人みたい…‥』


思わずルシアがそう零す。それ程までに、精霊とは思えない。

むしろ、隣で黙る少年の方が精霊と言われれば信じてしまうだろう。


「君が精霊、そしてそちらの彼が精霊使いでいいのか?」

『ああ。僕と違い、れっきとした人さ』

『初めましてですね、私はルシア。バルの精霊です』

『ああ。よろしく……こちらが僕の契約者だ。と言っても、元だが』

「元……? それはつまり、契約を解除したのか?」


精霊との契約解除。

だが、精霊と元契約者は付き添う。その理由が何なのか分からない。

そもそも、契約を解除することのメリットなんて無いはずだ。

精霊が心変わりした可能性もあるが、アルカナの姿からは到底思えない。

何か理由があるはずだ。


『……悪いが事情は話せない。察してくれるかい?』

「――ああ、分かった」

『うん、だけど一つだけ教えて……君は精霊神なの?』

『……そうだと言ったら君は…君たちはどうする?』


アルカナの表情が変わり、厳しめの視線を向ける。

それはルシアとは違い、威圧感を解き放つ。

――ただの精霊ではないことは明らかだ。


『何もしませんよ。私たちは力を磨きに来ただけだもの』

『――そうか』


ルシアとアルカナ。

精霊通しの語り合いは終わり、場を占めていた魔力を沈める。

「君は何をするつもりだ?」

『何もしないさ。ここではね。それに彼も今は動けない。だから、そんな不安がることなんてないけどね』


またね、と言い残しアルカナと少年の姿が消える。

足音一つ鳴らさず、その場から居なくなる。


「しっかりと見たのに、消える瞬間が分からなかった。ルシアは見えた?」

『ダメでした。そもそも、アルカナの契約者が本人かどうかも怪しいかも』

「実体じゃない……偽物の姿とでもいうのか?」

『精霊なら擬態を作り出せるよ。それを二人分用意したって可能性が高いかも』


言われてみれば、精霊の姿は幻影に近い。

感触を感じるが、魔力で形作っている。

なら、それを二人にすることは可能に思える。

だからこそ、同じ姿の少年だったと考えれば辻褄を合う。


契約者が声を発しなかったことも、二人同時で動かすことができないから。

だが――


「ルシアは二人になれるか?」

『無理。同じ姿でも、難しいよ……そもそも、二人になるなんて普通できませんよ』

「だけどアルカナはやって見せた。それってつまり――」

『否定はしなかった。だからありえるかもしれません――彼らが精霊神の可能性が』


――風の精霊神バール。

彼の存在に近い精霊。否、超えるかもしれない。

そんな相手を敵に回すことがどういう末路を辿るかは想像したくもない。


「とりあえず、アルカナの情報は集める必要がある。とりあえず、あいつに聞くか」





授業の合間、俺は彼女へと尋ねる。

――エリザベートへと。


「はぁ。普通負かした相手に質問します?」

「だって、エリザベートがここで一番情報を仕入れてそうだし」


出会いからして、この教室の主要人物であることは確かだ。

その実力も高かった。もしも、俺のことを軽んじていなければ、勝負は違っていただろう。

そう、彼女は俺との戦いで手を抜いていたようだ。

ルシアはそう教えてくれた。彼女の精霊の気配を感じなかったと。


「それでアルカナでしたか?」

「ああ、無口な少年の精霊はそう名乗っていた」

「ええと、無口な少年ってあの子かしら。だけど実体化できる程の精霊が居るなんて……」


どうやらエリザベートも知らないようだ。


「今まで精霊を使う機会があったよな。その時の様子ってどんな感じだった?」

「普通の子ね。私や彼みたいに優秀ではなかった。それに家系も普通かしら」

「ははは、手厳しいな」

「そうかもしれないわね……けれど、それは私や彼みたいな精霊との関わり合いが深い家系から見た話。クラスの中では上位の成績を残していたはずよ。確か、学科の成績は一桁台だったはずね。まあ、私より下だけど」


スラスラと話すエリザベート。

そして、自分の成績を誇ることも忘れない辺り、流石だと思う。


「――他には何か知らないか?」


自慢話になりそうな為、話を戻す。

だけど、首を横に振る。


「これ以上は分からないわ。だけど、何か分かったら教えてあげる。だけど、その代わりに再戦の機会を設けて下さい」

「ああ、分かっている。次は本気で行くよ」





手に入った情報を整理する。

だが、少年の情報は中々入手できなかった。エリザベートこそ、多少は知っていたが、他のクラスメートは何となくでしか存在を認識していなかった。

地味な少年――それが彼ら彼女らの大部分を占めていた。


「まるで情報操作でもされるような、それくらい情報が手に入らないな。むしろ、エリザベートがあそこまで知っていることが謎に思えるほどだ」

『うん。まるで、彼の存在を隠しているみたいな感じ。だけど、誰一人、嘘はついてないと思う。精霊の様子も見たけど、動揺するそぶりもありませんでした……』


調べる程、少年の情報が曖昧になっていく。

エリザベートが語る内容を精査する手段が無いのだ。


「あとは、カリア様とかの精霊神に聞くことしかできないか」


精霊神であれば、他の存在も多少は知っているだろう。

だが、ここからカリア様に聞く方法は無い。また、偶然会うまでお預けだ。


『まあ、仕方ないですよ。大人しく、学院で力を磨くのがいいかも』

「そうだな。調べごとに精を出すより、そっちが優先か」


謎の少年と精霊アルカナ。

彼らの正体は分からない。だけど、ここには師匠らが居る。

騎士団の精鋭も駐屯している。


だから、大丈夫。





――――――――――

――――――



『……ここには不要な存在。だからこそ、僕が仕留める』


少年の姿をした精霊は零し。

記憶の片隅で嗤う悪人が思い浮かぶ。


下卑た表情のアイツは命令するのだ。

《死神の名を以て殺せと》


だから精霊は標的へと魔力を放つ。

“死神の一撃”と歴史に刻まれた一撃を


とある精霊へと向けた。



『さよなら……できれば―――死んで欲しくなかった』



世界に暗雲が立ち込める。

そして雷鳴と衝撃波が広がっていく。



――後には慟哭する精霊が佇んでいた。



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