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神獣殺しの精霊使い  作者: 氷帝花心(門屋定規)
2章 無の精霊使いと三英雄
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第52話 アルカナ


教室から歩くこと数分。

エリザベート率いる集団に促され着いたのは大きめの広場だった。

真ん中には王国の文様が刻印されている。


「レフィナ」


エリザベートが両手を重ね、精霊を呼び出す。

だが、実体化まで出来ないのか空間が揺らぎ、魔力波紋が光る。


「……ルシア」

『ええと、バルはバカなのかな。いきなり決闘するなんて浅はか』


突然具現化したルシアに対して、エリザベート一行はポカンと口を開いたまま、呆然としている。目の前の光景を疑うような、信じられないような表情を浮かべている。


「「「な、なな、ななななな!

「さあ、始めよう。俺とルシアの力を測り取りたいんだろ?」

「え、ええ。勝負は相手が負けを認めるまで。その為の手段は問いません。しかし、相手の尊厳を弄ぶ行為や死に至らしめる魔法は禁止と致しますわ」


尊厳を踏みにじる。それがどのような行為を指すのか分からずキョトンとしてしまう。

何故か、ルシアがあわわっと赤面しているが……


「ルシア、とりあえず俺だけで勝負してもいいかな」

『うん、バルがしたいようにすればいいよ。だけど、尊厳は奪っちゃダメだよ!』

「殺傷まではしないさ」

『なんで伝わらないのかなぁ』


あきれ果てたルシアを無視し、エリザベートへと目線を向ける。

すると、大きな水球が数十個宙にプカプカと浮いている。

魔法行使によるものか、俺の周囲を取り囲むように移動する。


「……謝るなら今のうちですわよ。王女の親友である貴方を傷つけるのは可能な限り辞めてしまいたいですが——精霊士としての地位まで譲るつもりはありません」

「ああ、分かった。だけど、悪いな。エリザベートの相手は俺だけだ。ルシアの力は使わない」

「……舐めていると大怪我しますよ?」


腰から魔法銃を取り出す。

そして、身体中の魔力の流れをつかみ取り、魔法銃へと誘導する。

揺らぐ魔力をなんとか抑え込み、装填する。


「行きますわ!」


エリザベートの指先の動きに沿って、水球から水弾が放たれる。

右へと走り躱す、地面には少しばかり抉れた跡が残る。


「随分と嫌われたようだな。それにしても、レベル高いな」

「これでも、私は弱いのですよっぅと! ……逃げるだけですか、口ほどにもありませんわ」


誰もがエリザベートが有利だと思っただろう。

だが、俺は動じない。これでも、王国騎士団の精鋭が師匠なのだ。この程度の相手で躓いている訳にはいかない。


手にした魔法銃。

前はルシアに任せて、放つだけ。魔法の廉価版だった。

だけど、師匠と出会い、銃術の神髄を学び取った。

だから—————


「これで最後ですわ!」


水弾が襲い掛かる。

それに魔法銃を向け————放つ


「はっ?」


放つ。

魔力の流れは既に掴んだ。魔法銃に呼び起こすルートも繋がった。


「……これで終わりだ」


魔力弾が宙に浮かぶ水球を全て吹き飛ばし、後は丸腰のエリザベートだけ。

新たな魔法を使う前に、杖を吹き飛ばせる。

そのことに気づいたのか、悔しそうに唇を噛むエリザベート。


「さて、どうする」


周りの少年少女は誰もが、笑みを浮かべる。

そして、その中から一人の少年が近づく。


「……合格」


短い言葉、だがそれは歓迎の言葉だったのか、これからクスラメートになるであろう彼ら彼女らが駆け寄ってくる。





授業を受け、精霊魔法について学ぶ一日。

独学で身に着けた魔法よりも洗練された数々の術式に気分は上々。

だが、一つだけ問題があった。


「あの少年、何か変というか……ルシアはどう思う?」

『一人だけ魔力の質が違います。それこそ、精霊神に似ているかも』


精霊神。

精霊士の頂点であり、7大獣と対等な存在。

そんな彼らと同じ匂いをルシアは感じ取ったようだ。


今まで会った精霊神は三人。炎の精霊神、闇の精霊神、風の精霊神

残りは、水、光、土の三人。


「まあ、精霊神なら敵対することもないよな?」


これまでに会った精霊神。誰もが独特な雰囲気を持っていたが、人類に対して敵対することは無かった。


『人によって正義は変わるよ』


だが、ルシアは否定する。


「もし、アイツが俺たちに襲い掛かってきたらどうなる?」

『あっという間に倒されるかも。だから、敵対はできないかな』

「……師匠ならどうだ? 師匠の所まで逃げれば何とかなるかな?」


王国騎士団第一部隊長。

その肩書は、名は伊達ではない。

だからこそ、期待する。師匠ならば——


『……五分五分? うーん、わかりませんね。だって、あの少年の精霊の気配が全く感じ取れなかった。闇の人と同じで、精霊を体内に隠しているような感じだった』

「それだけ、精霊神が規格外ってことか。はあ、誰か教えてくれたならなあ」

『……うーん、直接本人に聞いてみましょうか?』

「えっと、ルシア血迷った? 流石にそれは不味くないか?」

『でも、既に聞かれているよ』


ルシアが指差す先。

そこには件の少年がいた。足音なく、俺たちの近くまで近づいていたことにぞっとする。

まるで気づけなかった。


「や、やあ、どうしたんだ?」


とりあえず、訪ねてみる。

だが少年の口元は動かない。だが、ここから立ち去るわけでもないようだ。



『ええと、貴方はだれ?』


ルシアは少年の真横を見つめ、話しかける。

すると、空間が少しばかり揺らいだ。

何かがそこに居る。



『気づかれるとは……僕のこと分かるのか』



何もないはずの空間。そこから現れたのは件の少年と瓜二つの姿だ。



「初めまして、になるのかな。僕はアルカナ。この方の精霊さ」


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