第51話 強気な少女
学院編二章スタートです。
今後もよろしくお願いします。
王立魔導学院。
そこは驚くべき程に巨大な敷地に様々な施設が点在した。
その一つ、元王妃の居城であり、現在はマレイアの住処へと俺とルシアは訪れていた。
「よく来たのだ。ここが私の部屋なのだ」
マレイアが手を広げ、俺たちを出迎える。
その姿は幼い容姿と合わさり、微笑ましく思える。
そしてテーブルにドカドカと置かれた大量のお菓子がルシアの眼を奪う。
『た、食べてもいいですか?』
「勿論なのだ。これはルシアの為だけに用意したのだ!」
「とてつもない量だな。にしても、こんな余裕が王国にはあるのか?」
菓子は大量の小麦粉と砂糖を必要とする。
マレイア——王国の境遇を考えると余裕なんてあるはずもない。
——だが
「そう難しく考えなくても大丈夫ですよ。これは私の伝手で遠方より取り寄せた物。つまるところ、二人の為に用意したの」
「リーナさんが言うならそうなんでしょうけど……」
リーナ。
俺の師匠と同期である王国騎士団所属。
前に水魔法で雷鳥電王の攻撃を受け流していた。
その技量は計り知れない。
そもそも、師匠と共にマレイアの護衛を一任されている。
「あのリーナさん。リーナさんは師匠と同期なんですか?」
「どうだろう。私の方が一年早く入隊している。だけど、役職は彼の方が上。後輩で上官。……そうね、戦友かな」
「だからあんなに魔法の使い方が上手かったですね」
「当たり前なのだ。なんせ、リーナは王国騎士団の副隊長なのだ!」
副隊長。
師匠が隊長だからその下。ギールを支える副官だろうか?
「正確には第五部隊の副隊長です。だから第一部隊の彼とは部隊が違います。本当の上官は別にいるし、役職こそ下だけど、階級は私の方が上」
誇るリーナ。
それを見て笑顔を見せるマレイア。目の前のお菓子に眼を奪われるルシア。
ああ、これは俺が聞くしかないか。
「あのすみません。階級と役職って何が違うのですか?」
「そうね、役職は隊長、副隊長。そして階級はスターが付くの」
リーナが指さす先、そこには紋章がある。
大きな星を廻る様に小さな星が5個。それが階級なのだろうか。
そういえば、師匠の色も青かった気がする。
「中央の星の色によって、階級は大きく分かれているの。私とギールは上から三つ目の青。これは幹部クラスを指す。そして、周りの小さな星たち。これが幹部の中での地位となるわ。彼は4個だから、私の方がトータル的に見たら上ね」
どうやら師匠のことをライバル視しているらしい。
そもそも、他の騎士団を知らないからそれが凄いことなのか想像もつかない。
だけどリーナの誇らしげな表情から察するに相当凄いのだと思う。
◆
マレイアから誘われたお茶会も終わりに近づいた。
そして、これからの進行を確認する。
「バルは新入生の総代にしたかったのだ……だけど、今の時期だと転入生なのだ。そして私と同じクラスなのだ」
「マレイアが所属するクラスか……やっぱり貴族が多いのかな?」
「ええ。けれど王族はマレイア様だけです。だからそんな心配をしなくても大丈夫。それにあのギールの弟子なのだから、堂々としなさい」
強めの口調に心が騒めく。
俺の行動によっては師匠の顔に泥を塗るようなことになりかねない。
そうならない様、気を引き締めなくて。
俺はただの精霊使いなのだから。
『バル、表情が硬いです。えいえい』
「ル、ルシア?」
俺の頬をつまみ、グイグイと動かす。至近距離で見るルシアは不安げな表情だ。
——これまで幾度となく助けられてきたな
「……ありがとう。うん、大丈夫。俺はできることをするだけ。それだけだ」
騒がしく揺らぐ心音が鎮まる。
そして、目の前の時計を見ると、そろそろ時間のようだ。
「では行ってきます」
「頑張るのだ。困ったらルシアに助けてもらうと良いのだ!」
「……お気をつけて。一応、面倒な輩もいますので。特にパルメを名乗る少女には注意して下さいね」
リーナからの謎のアドバイスは胸に留め。
俺は学院の教師へと移動する。
◆
教室と呼ぶには豪華すぎる部屋。
足元には高級そうな絨毯がひかれ、木製の机と椅子が楕円を描くように配置されていた。
「ええと、俺は——」
入り口付近から教室内を覗く。
既に生徒たちが揃っているのか、ほとんどの席に居る。
そして、誰もが俺のことを興味津々に見つめてくる。
「貴方が転入生かしら?」
その中の一人、赤い髪飾りを付けた少女が立ち上がると俺の前へと来る。
事前に話を聞いていたのだろうか、だけど何故か杖を俺へ向ける。
「はい、新しく皆様のクラスメートとなる、バルーシュです。親しい者からはバルと呼ばれていますので、よければそうお呼びください」
「そう、ではバル。では、戦いなさい」
「えっと?」
何故か、宣戦布告を受ける。
まさか、彼女はパルメだろうか?
確かに面倒というより、訳が分からない展開に陥ったが。
「私はエリザベート。私たちと共に講義を受けるならば、実力を見せなさい。ここは精霊使いの為の学院だけど、使えない者に時間を割く余裕なんてないのです」
「ええと、つまりは俺が使えないと判断されたら追放するってこと?」
「追放するもなにも、私たちは貴方を認めてないわ。だから、追放ではないわ。それにこの学院から追い出すほど、悪役でもない。ここ以外の相応しいクラスに移動するだけよ」
辛辣にも思えるが、その実態は違う気がする。
少女の眼は先ほどのルシアと同じだ。俺のことを追放するなんて言っときながら、心配している。何故、そんな感情を俺に向けるのか意味は分からないが。
「理由は分かりません。ですが、分かりました。その勝負受けます——俺もこんな所で立ち止まるわけにはいかないので」
「ええ、では来なさい。貴方の強さ、私が見てあげる」




