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神獣殺しの精霊使い  作者: 氷帝花心(門屋定規)
A章 とある鍛冶師の昔話
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α-11 シュウエン


精霊士が黒い化物へと食される。

それは、世界7大獣にも引けを取らない程の災厄をまき散らしていた。


炎で焼き尽そうとも傷一つ無い。

その姿は、第一の災厄“水雲”、第5の災厄“雷霆”と同じく、精霊ヲも飲み込んでいく。


「あれは、止まるのか⁉ まさか、このまま……」


最悪な未来が過る。

もはやどうすれば、あの化物を倒せるのか、そのビジョンすら思い描けない。

ただただ、絶望を振りまき、また一人精霊士の一生が終わりを告げた。


『ああ、弱いな。弱すぎる……だが実に美味だ』

「な、何を言ってやがる!……まさかお前?」

『ああ、食っているぞ。実に美味なことだ。この数千年、魔力を摂取できていなかったのでな。まあ、そんなに怒るな』

「怒るに決まってるだろ! お前のやっていることは一方的な虐殺だ」

『ふっ……ご立派な騎士道なことだ。殺しに善も悪もない。結果は、一つ。ただ死を受け入れだけ……弱者に死に場所を選ぶ権利など在る訳が無かろうよ』



精霊王の様子は変わらない。

ただ本性を現したのかとヒートは思った。あの儚き笑みは演技だったのかと。

リアは余計に困惑を隠せない。

精霊王は何も嘘をついていない。

最初から瞳の奥が黒く深い闇が蠢く。



『だが飽きたな。同じ味ばかりではないか……もはや英雄などいないのだな。かつて、主を脅かす可能性のあった存在にすら劣るとは』


化物は森林を抜け、動植物を侵食していく。

生命は途絶え、代わりに草木一つ生えない環境へとなり果てた。



『ん……?』


突如、化物の周囲に轟音が鳴り響く。

それは、地上から向けられていた。

多数の火炎弾が全方位から襲い掛かり、地上の景色が一変する。

何もかも、燃え尽きた。

だが――――


「あれでも止まらねえのか⁉」


もはや驚愕を通り越し、絶望ですら足りない程だ。

誰もが未来が潰える光景を思い描き、それは精霊王ですら違わない。

だが……


「あれは――」


ヒートが辛うじて見えるのは、巨大な土壁が化物を囲い込むように発動され、

巨大ゴーレムが殴り合いを始める超次元な光景だ。


「せ、精霊神が何でこんな所に」

『ほう、あれが精霊神。主の後を継ぐ存在か――確かに、他に比べれば力はある……だが、それだけだ』


化物の腕がねじ曲がり、黒大剣へと変わる。

片腕を失ったが――――劫火一閃


『ご、ゴーレムの頭が落ちたよ。それに、壁も消えちゃった』


リアの言う通り、先ほどまで互角と思われた戦況が翻る。

黒大剣の一撃は、よほど強力なのか、精霊神ですら太刀打ちできない。



人類が誇る最強戦力の一角ですら、傷一つ付けられない。

それは、人類の敗北だ。

もはや、誰もがこれまでかと思われた。

だが、精霊王は止まらない。

むしろ、警戒しているようにヒートは見えた。


『な、何で……なんで、お前がここにいるのだ。あの時、確かに――何故だ⁉』


先ほどまで余裕な表情とは打って変わり、うろたえる。

何があったのか、ヒートは分からない。リアも先ほどまで心の底までカギを掛けられて見えなかった本音が理解できない。

それは、幼子が我儘を捏ねる姿に似ており、精霊王には似合わないものだ。


『なぜ、お前がそこに居る。なぜだ、カミルギ⁉』









カミルギ。

その名を聞いてもヒートたちは分からない。

だが、この瞬間状況は書き換わる。


化物の動きがギコチナイ。

まるで、天から押さえつけられているようだ。

そして、天に第二の太陽が出現する。

その中心には何かの存在を誰もが感じた。

化物以上の何かの存在を――――


ゴオオオオオオオオオオ


太陽が一際輝き、次の瞬間。

精霊神ですら成しえない、魔力の渦が地上を覆う。

光は化物の身体を溶かし、黒から白へと変貌させる。そして、変色した個所から崩れ落ちていく。大剣ですら、ひび割れ、宙に消えていく。


『またか――――カミルギ‼』


白き光は黒の化物を消滅させた。

まるで太陽に闇が燃やされるように、先ほどまでの光景が悪夢であったかのように。

それは、突然終わりを告げた。


そして、ヒートは確かに聞こえた。

精霊王の少女が言った一言を――――






――――無の精霊神の眷属と。









気づくと、精霊王を名乗る少女は消え去った。

まるで幻だったかのように。


だが、ヒートの前に広がる光景が物語っていた。

草木一つ生えない砂漠。この世から生命が消え去ったかのような光景が。

かつて、精霊士だった者たちの痕跡は白き光に飲まれ、武具一つ残っていない。

地の精霊神ですら、存在を失った。


ただ生き残ったのは鍛冶師と精霊。

そして――――











「ああ、ああ酷い目にあいましたねえ。全く、あの鍛冶師と協定を結んだまでは良かったのですけどええ――――分かっていますよ、分かりますとも。あの黒が何か知りたいのでしょう? ええ、私ならわかりますとも。私ならね、あの力の一部は私も持っているのですから、ええ。ですが、それは紙切れなのです。それは欠片なのですよ。だからこそ、私が伝えられることなど、あまりにも断片的なことです。ええ、貴方にとって、あの力は必要でしょうねえ。ですが、無理は話ですよ。私ですら、扱えないほどに、私が持て余してしまう程に、あの力が危うい。……最悪、この国を地の底に沈めてしまうでしょうねえ――ええ、はい。分かっていますよ。分かってあげてますよ。私が、闇神の私が、協力しましょうとも。眼の一つと引き換えにねえ。ええ、はい――――王国を亡ぼす準備はアレで十分ですとも」



砂漠の一端。

そこで、陰に沈んだ男が誰かと話していた。

言い訳がましく、面倒な口調で、揶揄姿に誰かが頷く。



その日、精霊王により一つの精霊区は終わりを告げた。

反逆者数百人の命を道連れに。






「ここは……」


ヒートは地面に倒れていた。

天から白き光が降り注いだことまでは覚えている。だが、その後の事が記憶にない。

精霊王を名乗る少女は消えていた。リアが呆然と地面に座り、空を見上げている。


「リア、大丈夫か?」

『……え』


ヒートの問いかけに対し、リアは感情の無い声を返す。

その姿に疑問を覚え、リアへと質問を重ねる。

だが、そこに居たのは、ただの精霊だった。


まるで、生まれたばかりのような精霊だ。

ヒートが誰かすら忘れた様に、何故こんな所に居るのか分からないように。

記憶喪失に陥っていた。


「な、なんでだ⁉ 何で、こうなりやがった‼」

『あ……え……?』


鍛冶師は生き残った。

引き換えとして、愛する精霊を失いその復活の場所すら地の底へと消えた。


「クソガアアアアアアアアアアアア」


その場に、男の絶叫が響き渡る。









数年後。

とある工房。


そこでは、一人の男が槌を振っていた。

それをサポートする少女。


そして、数日後。

そこには、一振りの剣が出来上がった。


かつて、男と旅をしていた少女の炎に似た炎を宿す魔剣。

少女の名を宿す器として――――


◇次回以降、バルの話に戻り

2章 学園編が始まります。

元々、ヒート編は2016年頃に短編として書いて放置してました(汗

それを改稿した物が本編です。

精霊王を名乗る少女は今後、本編に大きく関わります。

それこそ、無の精霊神に関する重大なカギを握っています。

ここまで、読んで頂きありがとうございます。

本編は引き続き、続けていきます。

その内、ギールとリーナの出会いの物語も短編で載せる予定です。

今後とも、よろしくお願いいたします。

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