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神獣殺しの精霊使い  作者: 氷帝花心(門屋定規)
A章 とある鍛冶師の昔話
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α-7 キエタスガタ


とある鍛冶師には、無謀だと言われた。

とある鍛冶師には、理解できないと言われた。


それは、国宝と呼ばれた魔法銃、魔法杖を作り出した鍛冶師二人の言葉だ。

だが、ヒートは反論した。


『俺とこいつなら、冒険できるさ。精霊使いにだって、負けない』


そうだ。

とある鍛冶師の弟子三人。

その中でも、一段と諦めが悪い男だった。

無理、無謀と何百回言われ続けても、考えを変えないヒートに二人は折れた。

師匠でさえ、いつも通り豪快な笑い声で認めてくれた。

だから、最後は晴れ晴れとした表情で飛び出した。


「……リア、俺と契約してくれ」

「うん」


これは二度目の契約だ。

かつて、二度と繰り返すことなど無いと誓った。

そうなったら、二度と精霊とは関わらないとも思っていた。

だけど、横に並び立つ精霊が居た。


精霊は幼く、力を扱うことも不慣れだ。

各上のゴーレムに善戦できるかも分からない。

だが、こいつの眼は——あの日見た精霊と瓜二つで。

そして、精霊の瞳越しに映る、鍛冶師の姿にも似ていて。


「俺が勝つ」

「わたしが、かつ」


ともすれば、無謀な挑戦と思われていそうだ。

自分の命を燃やし尽くしてでも助けようとしたのにと、不貞腐れてしまうかもしれない。

そして、その姿を見るには、まだ早い。


まだ、ルウに会う訳にはいかない。


「こいつらの弱点は炎と水、だが……」

「わたし、かぜ」


相性から言えば良い。

だが、土が硬質化したゴーレムを砕くことは難しい。


「俺の剣で、こいつを叩き割る! そしたらリアは風で吹き飛ばせ!」


ゴーレムへと駆ける。

手元の魔剣は鍛え上げた数々の中でも負けていない。

かつて、ルウと駆け抜けた炎は消え失せ、代わりに風を纏う。

同時に、腰巾着から小瓶を複数取り出しゴーレムに叩きつける。


「これでも食らいやがれ!」


風を纏う刃がゴーレムと辺り、押しのける。

そして、辺りに散らばせた鉄粉が風に纏わりつき、より硬質な剣へと至る。


ゴーレムの胴体を叩き割り、風で飛ばす。

腕を圧し折り、足を貫き渦巻く。


「これで――」

「まって! した!」


ゴーレムを倒しながら、一歩踏み出した途端。

突如、地面がひび割れ、大きな空洞が生まれた。


「リア、俺の手に捕まれ!」

「うん!」


俺とリアは地の底へと落下していく。

ゴーレムも同様に、落ちていく。


落ちながらも、岩々がぶつかり合っては復元していく。

とてつもない、回復量だ。


「リア、風で俺を浮かせるか!」

「や、やってみる」


落ちながらも、何時かは底に着く。

その衝撃はヒートを砕くだろう。


精霊であるリアは実体化を解けば、無傷で済む。

だが、一人で地の底で助かるかと言われれば難しい。


「くそゴーレム、離れやがれっ!」


風により、落下速度を落とそうとするヒートにゴーレムが腕を伸ばす。

そして、ヒートの足首を握りしめる。


「道連れにしようってか!」


ゴーレムが本気を出せば、ヒートの足は原型を失うだろう。

だが、それではゴーレムは助からない。落ちるヒートと一蓮托生の思いで、

掴んでいる。


「みえる!」


リアが叫ぶ。

下を見ると、光る苔に照らされた大広間がある。

その距離、数秒後には落ちる。


「はなしやがれえっ!」


足を砕く勢いで手にした剣を叩きつける。

とてつもない衝撃が右足を襲い、骨が砕けたのか遅れて激痛が走る。


「だが、離れた! リア、風を使えっ!」


ゴーレムの重量分軽くなったこともあり、落ちるスピードが激減する。

そして、ゴーレムたちは地面へと落ちていく。


「俺たちの勝ちだ」





リアの風によって、ゆっくりと地面に降り立つ。

同時に、右足に激痛が走る。


「くそっ、歩けねえ」


大広間から空を見上げるとぽっかりと大穴が開いていた。

そこから俺たちは落ちたのだろう。


「それにしても、洞窟の先にこんな空間があるのかよ、まさか、迷宮か」


迷宮。

とある、精霊が面白半分で作り出したトラップまみれの場所。

それがヒートが聞いたことのある情報だ。


「精霊区が迷宮化したっていうのか?」


博識なルウが居れば、何かしら知っていたのかもしれない。

ヒートの知る限り、数百年以上、生きてきたのだ。


「ま、そんなこと考えても意味はねえが——おい、リア、大丈夫か」

「だ、だいじょうぶ」


俺の魔力がだいぶ持っていかれた。

だが、初めて使う魔法によって、リアの中を魔力が渦巻いている。

恐らくは、魔力によって全身が痺れているはずだ。


「実体化を解いて、休め」

「ええと」


ヒートの言葉にリアは従おうとしない。

むしろ、その姿を維持しよう今もなお魔力を注ぎ込もうとしている。


「ここから、連戦になるかもしれねえ、休めるうちに解いておけ!」

「うん、だけど」


リアは言い淀む。

まるで、この姿から離れたくないと言わんばかりに。


「だって、ルウがくれたから」


その言葉を聞き、ヒートは理解した。

否、理解させられた。


「――そうか、そうだな……すまねえ」


ルウの補助によって、リアは創られた。

いわば、仮初の身体だ。それを解いてしまったら、二度と同じ姿に戻ることは出来ないかもしれない。

いつか、ルウみたいに精霊として成長しても……そこにルウは居ない。


――だが


「すまねえ……ルウ、リア、俺を恨め」


ヒートは魔力配給を断ち切る。

絶望と希望が入り混じった表情を浮かべ、霧散していくリアを見つめる。


「ルウの代わりに俺が護る」



その日、ルウが残した痕跡は完全に消失した。




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