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神獣殺しの精霊使い  作者: 氷帝花心(門屋定規)
A章 とある鍛冶師の昔話
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α-6 サイゴノホノオ


「ウラアアアアアア!!」


ゴーレムの軍勢。

それは倒しても立ち上がり、砕け散ったはずの岩を吸収し復活する。


「オラ! 燃えれ! 燃え上がれ!」

「グギギ…ガガ」


だがそれは必ずしも無敵だということではない。全ての魔法には絶対に相性というものがある。

炎は水に弱く、水は土に弱く、土は風に弱く、風は炎に弱く、闇は光と反する。

だから、不死のゴーレムといえど、弱点は存在する。


「水弾!」


ヒートの銃から水撃が放たれた。

それはゴーレムの再構築した部分に直撃し、頭部が砕け散る。

そして、変化はない。


「グゴゴガガg……」

「え、ごーれむがふっかつしない?」

「やっぱりな……いくら復元が可能だといえ、変質したモノで再構築は無理みてえだな」


ヒートが考えた作戦は簡単だ。

相手が不死身であろうと、再生には同じ材質の石が必要となる可能性が高いというものだ。

であれば話は簡単だ。


「あいつらが回復しないように、岩を燃やして冷やして爆発させて、岩の魔力を吹き飛ばしてしまえばいいってだけだ! ガハッハハ!」


ヒートは自慢げに胸を張り笑う。

かつて、盟友の一人から譲り受けた万能銃。

その力は、精霊を介さずに、疑似的に魔法を発動させる。


時価にして国宝級の神銃が周囲のゴーレムを吹き飛ばす。

だが——


「ちっ……向こうも数だけは一級品か。これが精霊区か、まったく地獄じゃねえか」


とりあえず、近づくゴーレムは居ない。

知能があるような動きに加え、統率の取れた布陣。


「どいつが指揮者だ、精霊か、人か!」


ヒートの怒鳴り声に答えるものは誰も居ない。

だが、入り口の方から爆撃音が響いてきた。

こんな破壊をできるのをヒートは知っていた。


どんなに苦しい局面でも、あいつが居たから潜り抜けてきた。


「ルウっ!! こっちだ!」

「ヒートっっ!! 今、助ける!」


より一層、爆音が大きくなる。

そして、ヒートは見た。全身がボロボロで、今にも消えてしまいそうな、愛する精霊の姿を。


「なっ……ルウ、実体化を解け! 俺たちは大丈夫だ、さっさと逃げろ!」

「私……私の、命一つで、守る!」


ヒートの言葉はルウには届かない。

既に、聴力は途絶え、視界もぼんやりとしている。

それでも、目の前に立ちはだかる巨体目掛け、身体を打ち付ける。

砕き、燃やし、消滅させる。


それが今のルウにしかできないことだから。

ルウだって、気づいている。


ここで、無茶をしても意味など無い。

既に、後方の通路はゴーレムで溢れ、退路はない。

精霊であるルウが精霊に襲われる異常事態だということも。

ルウは分かっている。


「——ひとり、寂しくさせない……だって、私は、ルウはヒートの精霊だから」


そうルウが零した言葉。

その言葉を最後に——


「ルウウウウウっ!!」


少女は燃え尽きた





地獄を味わった。

目の前で愛する精霊を失った。

それは、今まで起きたどんな事件よりもヒートの心を抉り取った。


なんで、こうなった


俺が一緒に行かなかったからか?

それとも、ここが精霊区だと気づけなかったからか?


「ふざけろお!!」


もはや、戦意はない。

ここで生き延びたところで、ルウの居ない生活なんて要らない。

ここで、野垂れ死に、盟友たちに失望されたとしても構わない。


ああ、そうだ。

俺はここで——



「あ……ああ、アアアアアアアアアア」


その声は泣いていた。

だが、ヒートの声ではない。

それは、すぐ後ろに隠れていた精霊の声だった。先ほどまで、何があっても助けると誓った精霊だった。


生後間もない、精霊リア。

それが味わう苦痛。おそらくは、自分自身ですら何の感情か分かっていない。

分かるのは、姉のように慕っていたルウの死。


もう、会えないという事実。


「アア、アアア、イヤアアアアアアアアアアア!!」


リアの声が響き、暴風が吹き荒れる。

ゴーレムの巨大でさえ、足元から飛ばされていく。


「……リア?」


だが、ヒートには何も起きない。

精霊が暴走しているのにも関わらず、リアの感情のうねりは届かない。


無意識にヒートを護っているのだ。

ヒートは諦め、リアは諦めなかった。


「わたし、わたしがルウのかわりに、まもる」


その声は震えていた。

臆病な一面が見える


それは初めて会ったルウの姿に瓜二つで


「……ふ、ふざけるなあああっ!!!」


その姿はかつての盟友にも劣らぬ程に真直ぐで——


「くそっ、リア! 俺たちでこいつを倒すぞ」

「うん!」



ヒートは折れない。

折れたとしても、何度だって鍛え上げる。

それこそが鍛冶師ヒートなのだから



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