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神獣殺しの精霊使い  作者: 氷帝花心(門屋定規)
1章 無の精霊と少年
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第40話 逃走と雑談

 空の王【雷鳥電王】

 雷を纏い、先ほどから地上に雷撃を幾度となく放ってくる。

 その度に、地上の木々が吹き飛ばされ、さらに辺り一面が真っ赤に燃え上がっていく。

 ルシアに言われてトンネルを掘らなかったら、あっという間に俺たちは死んでいただろう。


「ルシア、ありがとう。そしてすまない二人とも。俺の不注意で、空を移動したから……」

『いえ、あの状況では逃げるという判断しかありませんでしたし、バルは半分悪いくらいですよ』


 と、ルシアが微妙なフォローをしてくれる。

 どうやらルシアからすれば、この事態を招いた半分は俺の責任らしい。

 と、いうことは、マレイアが獣たちを呼んだことが半分ということだろうか?


『何か勘違いしてそうですから言いますが、残りの2割はマレイア、そして残りは止められなかった私の責任です』

「いや、それは違うだろ。そもそも、俺があんな目立つ逃げ方をしたからだし、他にもっと言い逃げかたがあったかもしれないし……ルシアは悪くないよ。悪いのは俺たちだ」


 ちゃっかりマレイアも共犯にする。

 それに対して、マレイアはと言うと沈黙している。

 と、言うのも。

 隣にいるそもそもの原因であるマレイアは先程の雷撃によって気を失っていた。

 狸寝入りでもしているのかと、疑ったがどうやら本当に気絶してしまったよう で、俺にもたれ掛ってきている。

 だが、それほど重たくもなく、そこはやはり女の子だということなのかもしれない。

 思えば、女の子がこんな近くに居るのは初めての経験かもしれない。

 ルシアはまあ、精霊だし、人間に限ればだが。

 そのためか、少し緊張してしまう。

 だが、よくよく考えれば俺は子供だし、マレイアも子供、ルシアは、まあ見た目が子供だし、別に仲良い友達と考えればやましいことなどないのか。

 それならば、もう少し近づいても……。


『バル、何か変なことを考えてはいませんか?』

「っ、そんな訳ないであろう!」

『バル? 動揺しすぎです。やっぱり、考えていたんですね』

「ち、違うぞ。ただ、ここから逃げる方法を考えていただけだ」

『どうだか……』


 ルシアから冷たい視線を向けられる。

 なんだか、久しぶりな感覚だ。前に怒られたときはケーキで許してもらえたが、今回はどうするべきか。


『まったく、それで、雷鳥電王をどうしますか?』

「えっ、そうだなあ。俺たちの実力じゃあ、倒すのは無理っぽいし、ここは逃げるしかないよな。だけど、マレイアは気絶しているし、ここからトンネルを掘り続けるのも魔力が持たないし。まあ、打つ手なしだ」


 うん、ここからどうにか、こうにか、できる方法が見当たらない。

 責任を負って俺がおとりにでもなればいいのかもしれないが、まだ死にたくないし、かといって二人を危険にさらすわけにはいかないし、

 ほんと、どうしたことか。


『なら、私の方法を聞いてくださりますか?』

「えっ、何かいいアイデアがあるのか?」

『はい、これは風神から聞いたんですが、雷鳥電王は――』

「雷鳥電王は?」

『不死ではないとのことです』

「うん?」

『雷鳥電王は、死ぬということです』

「はい?」

『だから、雷鳥電王を倒しましょう!』

「無理!」


 何をいきなり言いだすんだ、俺の契約精霊は。

 もしや、あまりにもやばすぎて、思考回路がショートして壊れたのか?

 それか、もしや、何かに操られたのか?


『バル』

「はい、なんでしょうか……」

『冗談です』


 なんともまあ、笑えない冗談もあるものだ。


「それで、本当は?」

『はい、夜になるのを待って、闇魔法で姿を隠して逃げるのがいいかと思います』

「闇魔法か、あれってあまり使ったことがないんだよなあ」


 それこそ、よくわからない。

 無の精霊と契約しているから、使えないということは無いだろうが、それでも方法が分からなければ、出来るはずも無い。

 それに、そんな姿を隠すことが出来れば、森でも使ったし、逃げるときにも使ったんだよな。


「うーん、あれ……そういえば、光学迷彩マントでも雷鳥電王から逃げられるんじゃないか?」 


 そうだよ、あれを使えば見つけられことも無く、音は多少はするが空を飛ぶ奴からはわからないだろう。


『そうですね、それでもいいですが、だけど……』


 なんだか、ルシアの顔が少し赤っぽい気がする、風邪でも引いたのだろうか。

 まあ、だが反論はしてこないし、その案でいいだろうな。


「よし、じゃあマレイアが起きたら出発だ!」



 ◆



 夜の森。

 本来は獣たちが寝静まり、平和なはずである。

 だが今日に限れば、凄まじい雷音が響き渡り、地面が震え、森は焼き払われていく。

 それこそ、大災害だ。


「(じゃあ、行こうか)」

『(はい、あ、もう少し詰めてください)』

「(あつい……)」


 と、三人揃って光学迷彩マントの中にいた。

 周りは大火事となっており、火の粉が俺たちに降り注いでくるが、それは風魔法で薙ぎ払いつつ、密着する形で歩いていく。

 マント内には熱がこもり、さらに周りの温度も高いため、とてつもなく熱く、先ほどから汗が止まらない。

 それに加えて、マント内は狭く、進むたびに二人の体が俺にぶつかり、よろけそうになってしまう。


「(ルシア、もう少しずれてくれないか)」

『(もう、こっちも無理ですよ、それよりも、バルこそ詰めてください)』

「(二人とも、暑くるしいのだぁ~)」


 と、マレイアが可愛い悲鳴を挙げつつ、俺たちは着実に前へ、前へと進んでいく。

 夜の為か、雷鳥電王も微妙な足音には気づく気配もなく、空を悠々とうろついていた。

 時折、凄まじい雷撃が地上に降り注ぐものの、そのいくつがが未だ健在な大樹に阻まれ、大半は俺たちには届かない。

 そして、残りはというと、


『(来ますよ、バル!)』

「(了解、水霧)」


 俺の周りに薄らと貼られた水の防御壁の側面を流れる様に通り、地へと吸収されていく。

 もちろん限度はあるのだが、全体雷撃の威力なら分散されているのもあり、なんとか抑えることが可能だ。


「(はぁはぁ……)」

『(大丈夫ですか?)』

「(魔力はまだある……だけど、毎回疲れるなこれ)」


 少しでも油断して雷撃を通してしまえば、マントは焼きはられ、それどころか一瞬で俺たちは死んでしまうだろう。

 そのため、先ほどから雷撃を受け止める度に凄い疲労感が襲ってくる。


「(やっぱり私も手伝う?)」


 と、右隣にいたマレイアが心配そうに聞いてくる。

 マレイアの属性は水だから、ここは協力してもらったほうがいいかもしれないけど、でも、まあ、まだまだなんとかなりそうだし、別にいいかな。

 それよりも、気晴らしに雑談を続ける方がいいかもしれない。


「(……そう言えば、マレイアの契約精霊ってどこにいるんだ?)」

『(私も気になります、私ですら見つけられませんし……)』

「(セレナなら、ここにはいないよ? あの子なら、本部でお留守番なのだぁ)」

「(本部? それって、なんの組織なのかな?)」

「(王国騎士団の本部だよ~)」

「『えっ?! むぐっ!』」


 と、二人そろって驚きの声をあげてしまい、すぐ手で口を押える。

 王国騎士団というと、始まりの町リタリアの門番たちや、俺を助けてくれたギールさん達の属している組織だったかな。

 それならば、のほほんとしているマレイアが精霊と契約しているのも納得できる。

 まあ、失礼な言いかたではあるのだが。


「(それで、マレイアはどれくらい強いの?)」

「(うーん、師匠には勝てないし、同期にも敵わないし、私は弱いのだっ!)」


 どうやら、この世界では契約精霊がいるというだけで強いとは限らないらしい。

 まあ、俺もそんなに強くはないし、普通なのかもしれないけど。


『(師匠ってだれですか?)』

「(師匠は、一応とっても凄い人なんだよ、なんだって、第5部隊の副隊長なんだよ)」

「(へえっ、それって、とっても強いってこと? それこそ、精霊神とかに匹敵するくらいの)」

「(ううん、流石にそれはないよ? でも、回復だけなら世界一なのだ!)」


 回復というと、古龍に襲われていた俺を回復してくれた人の数倍凄いのかもしれないな。

 それこそ、千切れた腕とかもくっ付けられるのかなあ。


「(ということは、マレイアもやっぱり将来は師匠みたいになりたいの?)」

「(ううん、私は弱いですから……無理だよ~)」

『(――バル、もうとっくに空王の支配権からでてますよ? だからもう大丈夫ですよ)』

「うん、そうなの?」

『はい、これで一安心ですね』

「よかったのだ」

「ああ、一時はどうなることかと思ったけど、案外なんとかなるもんだな」


 なんとか空王から逃げられたし、運がよかったかも。

 それに、三人だと意外と楽しいものだ。

 


 ……そろそろ、仲間を増やすときかもしれない。


 

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