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神獣殺しの精霊使い  作者: 氷帝花心(門屋定規)
1章 無の精霊と少年
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第3話 鳥獣と人影 

 出発してからどれくらいの時間が過ぎたんだろう。

 道中、川に沿って下った俺は日が暮れるまでずっと歩き続けていたが、未だに町や村どころか人影すら発見できなかった。

 

「な…何か……食べるもの」


 俺は時々、川の近くの木々を見渡すが、果実などは無く、また魚を捕獲することも出来なかったため、とてもお腹が空いていた。

 出発前に用意したリンゴは底をつき、食料は無い。

 飲み水も川の水を飲もうとしたが、表示されるアイコンを見ると『濁り水 被食用 毒作用D』と表示されたため飲むのは控えていた。

 そのため、俺はかれこれ半日近く何も口に入れていない。

 なんでもいいから、食べ物が欲しいと思い必死に、探しては見るが見つかるのは、『薬草 効果F』や『毒草 効果D』ばかりで、食用草も手に入れれない。

 そして、ナイフで作った槍を魚のいそうな場所に投げ込んではみるが何も手ごたえが無く、どうやら最初のはビギナーズラックだったようで。


グウー


 俺の腹はさっきから鳴り続けていた。

 一刻も早く町や村を見つけて食料を買いたいものだが、不幸なことに見つからなず、俺は困り果てていた。


 

 確か、人は水は3日、食料は30日間までは耐えれるとかテレビで言っていたような気がしないでもないが、正直歩き続けた俺には30日どころか3日間すら生き延びれそうにない。



カー‼ グアー‼


「な、何か……うん? 今の音は?」


 そんなことを考えながら歩いていると、近くから何か音が聞こえた。もしかして、生物か?

 

 疲れた足をフル稼働させて音が聞こえたほうに向かってみると、そこには1匹の鳥獣が地面で寛いでいた。

 鳥の大きさは全長1m程だ。思っていたよりも大きい。

 足には鋭いかぎ爪があり、まるで鷹のようだ。そして羽は真っ白な綺麗な色だ。顔を見ると、先端に尖ったくちばしがあり、見るからに狂暴そうだ。

 いくら腹が減ったからとっても、これに勝負を挑むというものは無謀と言うものだろう。それこそ、小動物が人に勝負を挑むのと同じような感じだ。


 俺は急いでもと来た道を引き返そうとするが、鳥が俺と言う存在に気づいたのかいきなり立ち上がった。


「ちょっと、待てよ、俺にはお前と戦う気なんて」

グルルウウアア!


 必死に戦うつもりが無いことを、手振り身振りで表そうとするが、この行動をするなり、さらに鳥獣は激高した。どうやら、俺の行動が敵対行動に見えてしまったようだ。


「えええーと、こんなとときは」

グラアア!


 

 鳥は羽を振り回して、空に舞い上がると俺目がけて突っ込んで来ようとする。

 俺は体をねじる様にして、鳥獣のくちばしから反射的に回避したが、よけきれずに腹の横付近を擦ってしまった。


「いってえええええ、この世界にも痛覚ってあるのかよおお」

グラガアアアア!!


 鳥獣は回避した俺の横を通り過ぎてそのまま森の中に突っ込んいった。

 これでは、流石に鳥獣にダメージが入るだろう。


「や、やったか?」

グラッガアア!!


 まじかよ、鳥が森の中にすごい勢いで突っ込んでいったのに、森から傷一つない状態で飛び出してきた。

 こいつ、強すぎだろう! 

 いきなりこんなやつと出会うとか俺不幸すぎるな。

 もしかして、俺って相当不幸な体質なのか?


ガッガッガッガッ


 鳥獣は鋭い爪で周りの木々に傷をつけていく。どれも深くまで抉られ酷い有様だ。おそらく、あの木々はもう生きれないだろう。

 まあ、そんなことより、自分の心配をした方がいいか。

 とは言っても俺の腹からは、血が溢れているため、視界がクラクラする。


 地面を見てみると、俺の血の水溜りが出来ていた。

 出血死かな。

 俺はまだ、死にたくないんだけど。


ガアアア!


 視界が歪んできたため、はっきりとは見えないが、鳥獣が俺に近づいてきているようだ。

 鳥獣は嬉しそうだ。

 俺のことを餌とでも思っているのかもしれない。まあ、俺も鳥獣を餌だと思ったしお相子か。


「……」


 声ももう出ない。

 足や手の感覚も薄れてきた。

 これが死か。


 ガゥ? グレエエエ!


 なんだ?

 いきなり鳥獣が叫びだした。

 何をするつもりなんだ。


 そう思い、ぼやけた目で鳥獣を見てみると、真っ赤に燃え上がる鳥獣の姿が目に映った。そして鳥獣の近くには人が立っていた。


 誰だ?

 赤のローブに身を包んでおり、その手には拳銃らしきものが握られていた。

 この人が鳥獣を殺したのか?


「大丈夫かい?」


 俺に歩み寄りながら人は俺に問いかける。

 男だ、見た目は20代だろうか。顔立ちは整っておりイケメンの部類に入るだろう。この人が俺を助けてくれたのか。


「うーん、大丈夫ではないか。相当ひどくやられたね」

「……ぁ」


 俺は口を動かして訪ねようとするも声が出ない。


「ああ、俺は別に怪しいものではないよ、これでも王国騎士団だ」


 王国騎士団?

 男が何を言っているのか、いまいちわからない。

 出血量が酷すぎるのかな。



「ギール、いきなり飛び出して何を……ああ、そういうことね」

「リーナ、治癒魔法でこの子を助けてくれないか」


 誰だろう、意識が遠いの居ているためはっきりとはわからないが、もう一人誰か来たようだ。

 声からして女の人なのか。

 それにしても、治癒魔法って。


「ちょっと、この子酷い傷じゃない。どうしたのいったい?」

「詳しくは俺もわからないが、そいつに襲われていたみたいだ」

「そいつって、ドラゴンの子じゃない」

「ああ、なぜこんなところに居るのか疑問に思っていたところだ」

「そうねって、早く治療を」

「ああ、頼む」


 二人が言うにはこの鳥獣はドラゴンみたいだ。

 どうりで強いわけだ。

 あれ、なんだか、とても眠たい。


「・・・・・・・・」


 二人が何かをしているような気がするがよくわからない。

 必死に俺に何かの力を流し込んでいるような気がする。

 これが治癒魔法?

 まあ、そんなことはどうでもいい。

 とにかく、俺は助かったのか。


 俺は安心からか凄い眠りに陥りそして気を失った。


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