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神獣殺しの精霊使い  作者: 氷帝花心(門屋定規)
1章 無の精霊と少年
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第37話 宴の誘い


 黒龍を倒した俺たちと風神は、かなり大きい建物内にいた。目の前には、肉に肉、肉と、大量のご馳走で溢れている。

 見たことが無いくらいのどでかい肉塊に、小皿には、ソースがかけられたステーキと、野菜は無い。

 ほんと、肉パーティだ。


「いやはや、本当に助かりました。改めてお礼を申し上げる。我らを助けた勇者たちよ」


 そう言うのは、近隣の地主だ。

 なんでも、黒龍による被害でここ最近、商人が寄り付かなくなっていたそうだ。だが、黒龍が死んだ今、また来るようになったのだとか。

 そのため、俺たちと風神ら一行はお礼という名の、ご馳走をたらふく食べていた。


『はわは、おいひい!』


 ルシアもすっかりご機嫌だ。どこに入るのかと思うくらいの食べっぷりだ。それと反対に、風神らは、小食なのか、あまり手を付けず、地主と長話をしている。


「これは? よくわからない味だな……?」


 ふと、小皿に珍しい肉を見つけた。なんと、噛みしめるごとに肉の味が変化していく、それこそ、最初は鶏肉だったのに、今は羊肉みたいな味だ。

 それこそ、世にも奇妙なレストランに出てきそうな、不思議な肉だ。


「どうかなされましたかな?」

「ええ、この肉は何の肉ですか……?」

「それは、黒龍の肉でございます。噛みしめるごとにあらゆる味に変化する、世にも珍しい高級食材でございます」

「なるほどなあ」


 近くを通り過ぎたシェフらしき人に教えてもらう。

 よもや、黒龍を食べていたとは想像もつかなかった。

 まさか、黒龍が高級食材だとは……それに、味が変わる食材があるなんて、流石はゲームの世界だということか。


『バル、そッれってなふゆ? おいひい?』


 先ほどよりも、口に大量に頬張ったルシアが興味津々に聞いてくる。

 なんだか、年頃の少女がこうも食い意地が張っていると、恥ずかしくもなってくる。それに、こんなに食べて体重は平気なのか……?

 だけど、一応女の子にそんなことを言ってもなあ……また、怒りだして機嫌が悪くなるかもしれないし、後でこっそりバールにでも聞いてみるか。


「……ああ、黒龍の肉だってさ」

『ちょうだい!』

「ああ、どうぞ」

『ありがとう!』


 そして、ルシアはまたテーブルへと戻っていく。

 それを見た、シェフが真っ青な表情で、厨房へと走っていく。それも、全力走りだ。

 ああ、なんだか、申し訳ない。

 それこそ、ルシアなら大食い大会なんかあったら優勝できるのではないだろうか?

 それの賞金をかっさらい、いつしか、悔い改める日がきたりして……。


「バル、少しよろしいか?」


 と、あまりにも妄想が酷くなった頃、風神がいつの間にかに目の前に立っていた。

 そして、その隣には地主も一緒だ。


「はい? なんですか?」

「ふぬ、まずは地主だ」

「初めまして、勇気のある者、バルよ。私は近隣の地主だ。君のお陰で商人もまた来よう。だから、君が持つ神獣を買い取らせてはいただけないだろうか?」

「はい? えーと、神獣って、使い道無いですよね? それなのに、いいのですか?」

「ええ、私は近隣の地主であるが、風神殿とも交友関係にあるのでな、命を狙われるのだよ。だが、神獣の死体を門に飾れば、悪党どもが警戒し、安全だと思ってね――だから、私に譲ってはくれないか?」


 いい話ではある。

 それこそ、ようやく神獣を買い取ってくれる人が現れたのだ。売らない手は無いだろう。

 それに、風神と交友関係にあるのなら、騙される心配もおそらくは無いか。


「一つ条件があります」

「なんしょう? 私に出来ることであればお引き受けしましょう」

「では、リタリアに住む、ヒートにも同額送ってください。彼の協力が無ければ、出来ませんでした。この神獣を殺せたのは二人だからできたのです」

「もちろん。それで、ヒートさんですね……ヒート? あれれ、もしや、その人は、剣を作ってはいなかったかね? それこそ武器職人では?」

「はい、そうですが」


 武器職人ヒートの名前を出すと明らかに地主に動揺が走った。

 汗がだらだらと出て、目はうつろだ。


「まさか、武器職人のヒートさんとは……いったいどれだけの額をお望みでしたか……?」

「それなら、国の既定の100万アルスだと言っていましたよ?」


 確か、それくらいだったはずだ。

 まあ、それでもだいたい、4000万にはなるのか。

 そう考えると、そんな大金でこの地主が買い取ってくれないかもしれないな。

 まあ、その時は交渉でもするか。


「ええ、ええ! それでしたら、大丈夫ですよ。むしろ、もっと要求してくるかとひやひやしましたよ。確かに国の規定は100万アルスですな」


 と、元気を取り戻した地主が大声でウキウキと承諾した。なんだか、もっと要求してもよかったかもしれない。


「ですが、100万アルスでは、示しがつきませんな。よし、では倍の200万アルスで買わせていただこう」

「えっ? 本当ですか?」

「もちろんですよ。彼の作る剣の恩恵は計り知れないですので……それに、これで繋がりが出来ると考えれば、安いくらいですよ」

「そ、そうですか」


 なんだか、ヒートは予想以上に凄かったみたいだ。

 だが、そのおかげで200万アルスも手に入るし良いことだらけだ。


「ふぬ、では我からもいいか?」


 と、しばらく黙っていた風神は話しかけてきた。

 そして、いつの間にかに、風神の契約精霊のバールも隣にいた。


「はい、それでなんです?」

「ふぬ、君の精霊の仲間を探すのならば、バルバスク大陸に行くといい。そこならば、いるだろう」

「バルバスク大陸? それは……?」

「ちょっと、風神殿! それはあまりにも無謀ではありませんか? あそこは、化け物共が住む大陸ですよ? あそこに自由に行ける人間なんて、あなたたち精霊神だけですよ!」


 と、風神が言うや否や、さっと、地主が怒鳴る様に言う。

 それこそ、さっきから表情がどんどん変わっていく。


「化け物とは……?」

「ああ、あれは化け物としか言えん。あいつらは、人なんて虫けらにしか思わん、外道な存在だ」

「ふぬ、ようは、魔族じゃよ」

「魔族ですか? それは未開大陸にいるという?」

「うぬ、そこに無はいるだろう」

『でも、今の君たちでは到底、敵いっこないけどね』


 と、愉快にバールが言う。


「つまりは、無理だから諦めろということですか?」

「ふむ、それは違う。君は若いのだ。可能性は無限だ」

「……どういうことですか?」

『――ようは、能力の使い方を学ぶために学校に行かないかとカリアは言いたいのさ。これでも、カリアは魔大学の学長でもあるからね、カリアが人筆書けば、君たちは簡単に入学できるよ。それに、学費だって、努力次第ではタダになるんだよ』

「学費がタダですか?」


 我ながらタダという言葉に弱い。

 でも、まあ、タダなら行ってみたいとは思う。


『タダになる条件は簡単だよ。学内最強になるか、新魔術式を考案するだけだよ』

「そ、そうですか……最強か、新術式の開発か。どちらも難しいですね」

「ふぬ、だが君は神獣でかなり儲かったはずじゃ。だから、学ぶに来んか?」

「ちょっと、時間を下さい。ルシアと相談して決めます」

「ふぬ、まあ、ゆっくりと考えるのだ。我の時間は短いが、君は違うからな……はっはっはっ!」


 と、初めて見る風神の笑いに少し驚きつつも、俺は、ルシアの元へと向かう。



 俺は、弱いから強くなりたい。

 でも、その間にルシアの仲間は死んでいくかもしれない。それを防ぐには、今すぐにでもバルバスク大陸に行くのが良いのかもしれない。

 だけど、それで死んだら終わりだ。

 死なないためには強くならないといけないだろう。

 それこそ、伝説の無の精霊神に少しでも近い存在にならないと……。


「ルシア、少し話しがあるけどいいかな……?」

『なんでしょうか?』


 と、すっかり空っぽになった皿が並ぶテーブルの近くにいた、ルシアへと話しかけた。すると、笑顔で近寄ってくる。


「ええと、その……実は……その」


 なかなか言い出せない。

 なんせ、ルシアの仲間を救うのではなく、力を付けるために学校に行きたいというのだ。

 あまりにも、勝手すぎるだろう。

 契約の時、おれは ルシアの仲間を助けるために旅に出ると言った。

 だから、これを破ることになってしまう。


 俺は、どうすればいいんだ?

 手が震える、拒絶されたら、嫌われたら?

 最悪の展開が頭によぎり瞑目する、そしていつの間にかに、目から水がこぼれていた。


「あ、あれ……おかしいな。俺は……」

『もう、しっかり!』

「えっ……」


 いきなり、手の震えが止まる。

 ふと目を開けると、両手が小さな手に握りしめられていた。


『なんだかわかりませんが、しっかりしてください。バルが何を言いたいのかわからないけど、私はバルの考えを否定はしないから!』

「ありがとう、ごめん、心配かけて……でも……俺は……」

『もう、私はバルの一番の味方です。だから、何を恐れ、泣いているのかはわかりませんが、話してください。私を信じてください』

「うん――実は……風神が経営する学校で力を磨かないかと誘われてさ」

『いいではありませんか? バルは弱いし、私がいないとダメダメなのですから。強くなろうというのは、良いことですよ?』

「うん、そうだけど、でも、学校に行ったらしばらく旅に行けない。だから、ルシアの仲間を探しに行くことが出来ない……」


 と、次第に俺の発言は弱弱しくなっていく。

 それに、また目から水が溢れ、止まらない。

 己の弱さが憎い。


『……だったら、私が許します!』

「えっ?」

『私が言った契約を破るのがダメなら、それを私が許します。だから、遠慮せずに一緒に学びに行きましょう!』

「いいの? 本当に?」

『はい、確かに仲間が死んでいくかもしれません。ですが、バル。貴方も私の仲間なのですよ。それこそ、一番の仲間です。だから、バルが殺されてしまうなんて、嫌です。これからもずっと、バルと一緒にいたいです。だから、弱いままじゃ、ダメですよ……バルが強くなるには良いことです。だから、行きましょう、学校に!』

「……ごめん。そして、ありがとう。うん、行こうか。ルシアと一緒だと、僕も嬉しいよ」


 嬉しい。

 こんな感情は初めてかもしれない。

 なんだか、心がふわふわする。風でも吹けば、飛ばされてしまうかもしれないほどに。



 そして改めて決めた。

 僕は本当に強くなる、誰かの手助けをもとに敵を倒したって、それは本当の実力じゃない。

 だから、行こう、学校に!

 本当の実力を手に入れるために!


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