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神獣殺しの精霊使い  作者: 氷帝花心(門屋定規)
1章 無の精霊と少年
32/67

第31話 ラス酒場


 ラス酒場。

 総勢100人は腰かけるスペースがある比較的大きな店。

 様々なお客が日々訪れるここだが、今日に限れば一組の男女が場違いに座っていた。

 一人は金髪の男、一人は白髪の女であり、二人とも10代前半のように見える。 この酒場は18以下には酒の販売は禁止していたはずだ。だから、酒は飲めないはずだが……まあ、酒場には多くの冒険者が集う唯一の場だ。

 もしかしたら、彼らは情報収集にでも来ているのかもしれないな。

 と、自問自答しつつ彼らの観察を続ける。


 男の腰付近には銃が差し込まれていた。銃は傷が少なく、どうやら使い始めて日は経っていないように見えることから、旅歴は長くないように思える。

 もう一人は人間とは思えないくらいの美貌を持っていた。これほどとなると、話にしか聞いたことしかないがシーラ姫に匹敵するだろう。

 だがその美貌と反して服装は普通、手荷物はなしであり、先ほどから料理を口いっぱい含みリスのように可愛らしくモグモグと食べ続けている。

 彼らこそ、僕たちが接触を図っている者たちだ。


 先ほど、ホテル内で許可証を持って行ったときに炎神絡みの件を聞けば良かったのだが、僕は人見知りが激しいため、無表情で貫いてしまった。

 あそこで、聞く方が楽だとわかっていながらだ。


「はあ~、事は思い通りには進まないか……」


 とりあえず、二人を尾行することで見失うことはなかったが、ストーカー紛いのことをしている気がする。

 早く訪ねなければおそらく二人はどこかに行くだろう。

 それこそ、また旅に出るかもしれない。

 その前に行動しなければいけない。


 ……。

 とりあえず、僕は二人の席に近づいた。




               ☆☆




「誰かの視線を感じる……」


 酒場に入ってからしばらくしてから俺はその視線に気が付いた。

 誰が見ているのかはまだ判明していない。何しろ70人は優に超す量のお客がいるのだ。流石に探し出すのは不可能だ。

 それに、視線を感じるというのは、ただ感じるだけなのだ。

 何の証拠もない、それこそ自意識過剰かもしれない。


『まあ、そんなこと気にしなくてもいいじゃないですか? そんなの調べたところで何も役立たないと思うよ?』


 ルシアは先ほどから上機嫌だ。

 勿論酒を飲ました訳では無い、ここの食事がどうやらえらく気に入ったようだ。

 ルシアの言うことは正論だ。

 だが昨日、ホテルで倒立練習をしていたルシアだけには言われたくない、あれこそ何の役にも立たないと俺は思う。


「でも、確かに誰かの視線を感じるんだよ……証拠はないけどさ」

『まあ、最近は疲れることが立て続けに起きましたからね、緊張感がまだ解けていないだけだと私は思いますよ?』

「それなら、いいけどさ……」


 まあ、これが気のせいだという方が俺にとってはいいのかもしれない。下手にここでまた新たな騒ぎに巻き込まれるよりは数段ましだ。

 思えばこの一か月ちょっとで様々な痛い目に遭った。

 それを考えれば今日くらいのんびりとしてもいいかもしれない。

 それこそルシアの言う通りだ。



「すみませーん! コーラとナポリタン追加でっ!」

「はいよ!」


 まあ、腹が減っては戦はできぬって言葉があるし、たらふく食うか。

 そういえば、腹が減ってはとか言うけど、じゃあ腹が膨れたら戦う気になるのかよって言いたくなるな。


「なあ、ルシア?」

『なんですか?』

「いや、腹が膨れたら戦う気とか起きるか?」

『なんですか、それ? まあ、お腹がすくよりはお腹いっぱいの方がいいですが、だからと言って戦う気なんて起きませんよ?』

「まあ、そうだよなあ……」


 うん、まあ、予想通りの返答だ。

 俺も腹が膨れたからと言ってわざわざ戦おうとは思えない。それこそ、よくわからん言葉なんだな、腹が減っては戦は出来ぬって。


 そういえば、まだ誰にもここら辺のことを聞いていなかったな、そろそろ聞くべきか。だが、その前にルシアにも少し聞いてみるべきか。


「そういえば、王国……この世界にはどれくらいの国があるんだ? 前回訪れとことか含めてさ?」

『国の数ですか? ……そうですねえ、確かめたことはないので本当なのかはわかりませんが、昔聞いた話だと、だいたい大国が5、小国が15だったような気がします。まあ、他にももっと村とか町とかの小さなところもあるので実際はもっとありますが、戦争を起せるほどの力を持つのは、合わせて15くらいですかね……』


 15。

 思ったより多いな。いや、地球ではもっとあったか。それを考えると大したことないんだな。

 あ、そうだ。この世界での最強ポジはあるのかな?


「その中で一番戦力が多い国はどこだ? ラルトルス国?」

『確かにラルトルス国は大きいですが……あれよりも大きな国は2つありますよ?』

「え、そうなの?」

『はい、まずは、大陸の南部に位置するエルフが住まう国。ここには、人間で言えば上位の力を持つ精霊使いと同等のエルフが多く住んでいますね、それこそ彼らが本気を出せば人間は滅ぼされるかもしれません』

「へえー、で、もう一つは?」

「もう一つは、魔帝国。バルは見たことがないとは思うけど、この世界には魔族と呼ばれる、人間ともエルフとも異なる生物が住み着いてるの。魔族は魔法こそ使えないけど、身体能力が人間、エルフよりもずば抜けて凄いから、甘く見たら一瞬で喰われちゃうくらい危険だよ」

「へえー」


 なんだか、今更ながら凄いことを知ってしまった。

 人間よりも強い種族、エルフ、魔族か。

 今まで遭遇してこなかったからてっきり存在しないのかと思ったが違ったのか。


「あれ、魔族はどこに住んでいるんだ? 説明だと言ってなかったよな?」

『魔族がどこに住み着いているかはわかりません、それこそ人類が今まで見つけられないほどわからない場所に住んでいますよ?』

「うん?」


 見つけられない?

 でも、存在は知っているんだよな? 

 なのに、住処はわからないものなのか?


『うーん、何って言えばいいかなあ……わからないというよりも、どこかに居るのは確定しているけど、場所までは判明していないかな?……まだ、人類は世界の3割ほどしか侵略していないんですよ。だから魔族は未開拓地に住んでいると考えられています』

「……なるほどな」


 例えば、龍の巣。

 飛行艇の墜落により、行った場所。

 あそこには多くの怪物が住んでいた、それこそ王国騎士団の上位騎士ですら勝てず戻ってこなかったくらいだ。

 それこそ、あの地を侵略、人が住める、行動できる所にするのは不可能だろう。

 ルシアの話を聞くに、人類が生活できない、侵略できない地はこの世に多く存在するのだろう。

 そこに、エルフ、魔族は住んでいると。


「その割には、人類はエルフとか、魔族とかに滅ぼされてないんだよな?」

『ええ、仮にも人類側には最強の6人、【精霊神】がいますからね、彼らが本気を出せばそう簡単には王国は負けませんよ……ただ、今の精霊神は歴代最強と謡われるメンバーですからね、100年後にはどうなっているのか私にもわかりません……』

「だから、人類側は生きているのか……」


 【精霊神】。

 彼らが強いことは知っていたが、そこまでの実力者だとはな。


「まあ、そろそろ、旅人にここら周辺のことを聞いてみるか」

『そうですね』


 じゃあ、近くに座っている男性にでも聞いてみるか。

 でも、帽子を深く被っているためか顔が良く見えないな。だから顔が見える様に俺たちは席を立ち。


「すみません、少し聞いてもいいですか?」

「えっ!?」


               ☆☆


 店に入ってから一時間、食事をするにしては長い時間だ。

 だが、酒場となれば話は別だ。

 美味い飯と美味い酒。

 この二つを味わえる国唯一の店、ラス酒場は来店時より賑やかになりつつある。

 地元民が馬鹿のようにはしゃぎ騒ぐのが日常でもあり、時折誰かが飲みすぎで倒れるのも日常茶飯事だ。

 いつもならもう少し泥酔する客がいるのだが、今日は少ない。

 たぶん、いつも泥酔する冒険者が少ないからだと思うが、まあ、それはテロリストからの脅威を防ぐという名目のもと、未だに半数以上がホテルで入国許可証の発行を待っているからだろう。

 ほんと、彼らには悪いことをした、もしも僕が入国許可書を発行すれば今頃目の前でぶっ倒れていたはずだ、まあ、恨むなら炎神を恨むんだな。


 と、二人を観察しつつ、周りも見ているといつの間にかに観察対象が消えていた。

 そして、隣から少年の声が聞こえる。どこかで聞いた声だ。


「すみません、少し話を聞いてもいいですか?」


 少年はそう言った。

 あいにくと俺には目的があり、世間話なんてしている暇はない。

 だから断ろうと声の方を向くと、


「えっ!?」


 …………。

 ……。

 そこには、観察対象のはずの、バルとルシアがいて僕は驚きのあまり素っ頓狂な声をあげてしまった。

 なんで、こんな近くに?


「あの? 大丈夫ですか?」


 少年は心配そうな表情で聞いてくる。

 だが、それも今の僕にとっては逆効果だ、突然目の前に観察対象が来たことで。

 僕はその日、生まれて初めて頭が真っ白となった。


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