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神獣殺しの精霊使い  作者: 氷帝花心(門屋定規)
1章 無の精霊と少年
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第29話 炎神

「っ……ここは……?」


 目を覚ますと、なぜか目の前には白い景色が広がっていた。

 視線を動かすと、俺はきしむベッドの上に寝ており、体を起こし辺りを見ると、木製のテーブルとイスが置かれている。

 その他には、とくには何も置かれていない殺風景な部屋だ。

 

 そして、どうやら先ほど白く見えたのは、窓から差し込む日の光だったようで室内は温かな光に満ち溢れていた。

 テーブルの上には、ジューシーな肉を挟み込んだサンドイッチとなんらかの液体入りのコップが無造作に置かれている。


「これは、食べていいん……だよな?」


 一人疑心暗鬼になりつつ、警戒しながらサンドイッチを持ってみるも何も起きない。

 まさか、これが毒入りってことはないとは思うけど……。



「あっ! 起きましたか! 体の調子はどうです?」


 と、今まさに口に入れようとした瞬間、部屋の扉が思い切り開き、一人の少女が勢いよく飛び込んできた。

 少女は銀髪であり、良く見慣れた人物だ。


「あっ……こ、これはだな!」

『サンドッチなら食べても大丈夫ですよ?』

「そ、そうか……ではいただきます」


 予想以上に肉汁が溢れ、戦いで消耗した体力もいくらか回復したような気がする。

 全てのサンドイッチを食べ終わり、謎の液体―ぶどうジュースだった―を一口飲み、早速疑問に思ったことを訪ねてみる。


「何がおきたんだ? というよりも、あの男は誰なんだ?」

『あの人ですか? あの人は世界に6人しかいない精霊神のうちの一人、【炎神】ですよ。彼は、私と同じく変化することが出来るんですよ』

「へ、変化? それは、自由に体を変形できるってこと?」

『うん、そして、もう旅に出たから、周辺にはいないよ』


 旅に出た?

 突如現れたと思ったら、既にこの近くに居ないって神出鬼没すぎるな。

 それにしても、俺に危害を加えるつもりなのかと思ったけど、俺もルシアも見た感じケガしていないし、最初から危害を加えるつもりなんて無かったってことか。

 でも、そうだとするなら、なんで偽魔獣人とか教えてきたりしたんだ?


「これは、最初から全て仕組まれていたのか?」

『仕組む? そうなのかなあ~、私も【炎神】のことはよくわからないんですよ、今まで一回も会ったことなんてありませんし、それに、精霊ですら誰も【炎神】のことについては詳しくは知らないんですよね』

「ということは、これはルシアと【炎神】が共同で仕組んだことでは無くて、【炎神】一人がやったってことでいいのか?」

『はい、私も気が付いたらこの部屋に閉じ込められていまして……でも、直接【炎神】が事情を話してくれたからそこまで、パニックにはなりませんでした』

「事情?」

『うん。【炎神】曰く、とある人物に私と契約した少年、つまりはバルがどれくらいの実力者なのかを確かめてほしいという依頼を受けて来たんだって』


 実力を確認?

 俺ごときの実力を確認しようだなんて物好きもいるもんだな、それにしても、俺って意外と知名度が高いのか?


「それって、俺が才能に満ち溢れているってことか?」

『違いますよ? 私、つまりは無の精霊神が珍しい存在だから、私が契約するような人物なら特別な存在に違いないと思って来たそうです』

「はあっ、やっぱりそうか。それで、評価はどうだったか知っているのか?」

『はい、平均よりは才能はあるということでしたよ』


 平均以上?

 それって、大したことないんじゃないか?


「ルシア、俺って平凡な少年なのかな?」

『どうですかねえ、私と契約できる人間なんて今まで現れなかったので何とも言えませんが……でも、仮にも相手は精霊神の一角ですからね、そう落ち込まなくてもよろしいかと思います』

「そ、そうだよな……」


 なんだか、相手は世界最強の精霊神だとはわかっていても、どうしても落ち込むなあ。

 ああ、そうだ、魔獣人について確認したほうがいいか。


「なあ、魔獣人って知っているか?」

『魔獣人ですか? 聞いたことが無いですが?』

「そうか、戦っているときに【炎神】が話してきたんだよ……確か、生まれつき持つ純粋な魔力の暴走によって出来上がる化け物だとか」

『神獣に似ていますね、違うところは、魔力の源でしょうか』

「うん、でも、ルシアが知らないとなると、もしかしたら、【炎神】が嘘をついていたのかもしれないな」


 まあ、あの場面で嘘をつく理由なんて見当もつかないが、まあ、相手は精霊達ですら理解不能な【炎神】だし、そこまで気にかける必要はないか。


「って、そういえば、どこからルシアと【炎神】はすり替わっていたんだ?」

『それなら、最初……砂漠に入った時からずっとですよ』

「ああ、なるほど、だから、いきなり自然豊かな道に居たはずなのに砂漠の中に倒れていたのか……ってことは、ずっと【炎神】と一緒に行動していたのか……」


 確かに、俺の実力を測るために来たのなら、俺と一緒に行動するはずか。

 おそらく、最初は砂漠に住む生き物との戦闘を見て判断しようと思ったが、なかなか現れないから仕方なく、停止家とか、魔獣人とか嘘をついて戦わせたってことなのか?

 だったら、あの女の子は【炎神】が手配した仲間だったのかもしれない。


「それで、ここはどこなんだ?」

『さあ? 私もいつの間にかにこの部屋に運ばれたので、どうやってここまで来たかはわからないんですよ』

「ってことは砂漠ってことか?」

『いえ、また自然豊かな道に戻っていましたよ、そして、この家は廃墟みたいですし』


 まあ、言われてみれば砂漠の気候にしては涼しいとは思ったけど、室内だからという訳では無く、ただ単に砂漠外だからということか。


「【炎神】って、もしかして幻術とか見せることが可能なのか?」


 もしかしたら、先ほどまでの場所全てが偽物だったのではとルシアに聞いてみるが、首を横に振った。

 今となっては、あの砂漠が本物だったのかを確認する術はない。

 だが、二人ともけがをしなかったのはよかった。


「それじゃあ、俺たちも旅に出るか」

『はい、バルが寝ている間にこの辺りを探索したら、この近くに町があるようですよ』

「もしかしたら、それがラルトルス国かもしれないな」

『はい! では行きましょう』

「おう!」


 色々とあったが、俺たちは次の町へと向かった。

 次の町こそ、ラルトルス国であることを望みながら。

 

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