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神獣殺しの精霊使い  作者: 氷帝花心(門屋定規)
1章 無の精霊と少年
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第28話 戦闘と謎解き


 元々は人間であり、純粋な魔力の暴走によって出来上がった災厄。

 遥か昔、まだ旧王国が栄えていたころ、魔獣人によって大災害が起きたこともある。

 ただ、もうこの世には生きていないとされている幻の存在。


 それがルシアの記憶だったはずだ。

 だが、おかしいことに今、魔獣人がバルの目の前にいる。

 そして、バルが懸命に抵抗し、反撃をしている。

 正直、ルシアは蚊帳の外だ。


「はあああああああっ!」

「ギュウッハ!」


 両者の実力は同等クラスのようで、一千攻防が続いている。

 バルは魔法銃を撃ち、魔獣人は大刀を振り回す。

 精霊神から見れば、幼稚にも見える戦闘。

 ただ、それは最強と謡われる彼らの場合であり、ルシアから見たら両方とも堅実に動き、相手のスキを探し、そこに鋭い一撃を与えようと必死にも見えた。


 ただ、バルの動きが少し鈍く感じる。

 当てれそうなのにわざと銃弾を上空に放ち威嚇射撃をしたり、大刀だけに銃弾をぶつけたりと少し動きがおかしい。

 それに対し、魔獣人はよだれを垂らし、腕を思い切り振り廻し、怒り狂っている。


 それにしても、少しバルの様子がおかしいと思う。

 というのも、本気で挑んではいないように感じてしまうのだ。

 それもつい先日、鬼に殺されそうになったバルが手を抜いているように感じてしまう。

 本来バルの実力では勝てない相手のはずだ、それなのに、僅かにだが相手の実力を上回っており、バルが優勢だ。

 バルからすれば、これでも本気で戦っているつもりなのかもしれないがルシアから見れば、どこかやる気が感じられない。

 それなのに、格段に強くなっている。

 ……なんだが、相手の動きを完全に読んで行動しているように見える。

 

 実の所、少し前からバルがおかしいとは感じていた。

 例えれば、今までどこか一つ一つの行動に迷いや適当さが感じられていたのが無くなったのだ。それも、私が気づくレベルで。

 これも、鬼との遭遇がそうさせたのか、推測しか出来ないが、色々とバルも考えていたのかもしれない。

 とはいえ、冷静になりすぎていて、怖い。

 まるで感情が無に等しく見えてしまう。


 そのせいか、今までのバルの動きとは異なり、キレがましていた。そして、魔法銃に込める魔力の制御も時間が立つにつれて向上している。

 だが、なぜかバルは止めを刺そうとはしない。


『なんで止めを刺さないの?』

「うん?」


 もうすっかり、魔獣人の攻撃パターンを読み切ったのか、大刀を器用によけつつ、「少し気になることがあってさ」と語り始める。


「こいつ、本当に魔獣人なのかなと思ったのさ……ルシアの話を聞いていると、停止家は内部の時間を止める魔法なんだろ?」


「ということはさ、停止家が突然壊れるなんておかしい気がするんだよ……そもそも、こんな簡単に壊れる魔法をつかってまで、魔獣人を閉じ込めると思えないんだ」


「……だとするなら、もしかしたら俺たちの認識違いかもしれない……例えば、一般人……この場合は仕掛人とでも言うか、俺たちを騙そうとしている者たちの演技かもしれない」


 演技。

 そんな馬鹿な、と言いそうになるのをグッと堪えた。

 馬鹿馬鹿しい考え、と一蹴するのではなく、もう少しバルがたどり着いた先の考えを聞いても良いかもしれない、そう思い、ルシアはその場でとどまった。


「これは余興みたいなもの、いや、遊び? みたいなものだと思うんだ」

『あ、遊び?』


 目の前で命を掛けて戦闘しているというのに、あまりに場にそぐわない言葉にルシアは声を失った。

 

「この人は、魔獣人では無い……と俺は思うんだ」

『根拠はなんですか?』


 一つ目、と握った手を開きながら答えるバル。


「まずは、さっきも言ったけど、停止家が壊れたということ」

『それは、何か内部で起きたのでは?』

「いや、それはありえないよ、だって旧王国は完全に隔離出来ると信じて疑わなかったから閉じ込めたのだろ? それなら、そもそも停止家が壊れるというのはおかしいんだ」

『で、でも』


 二つ目、とバルは魔獣人を手のひらの突きで吹き飛ばしつつ言った。


「魔獣人だというのに、一つも魔法を使ってこないということ。確か、魔獣人の成り立ちは、己が生まれつき持つ純粋な魔力が暴走して出来上がるんだろ? だと言うのなら、魔獣人が魔法一つ使わずに大刀を振り回し続けるのはあまりにおかしいと俺は思った」

『でも、それは』

「使わないだけって言いたいのかな……確かにそれは考えた。でも、やはりおかしいよ、いくら千年時間を止められていたのだとしても、ここまで、壊れないと俺は思う」

『バルは、千年を甘く考えすぎだよ! 一人で何年も過ごすのは辛いんだよ?』

「うん、その通りだよ、だけど、ここで一つおかしいことに気が付かないか?」

『おかしな点?』

「うん、僕は停止家について聞いただけしか情報が無いから、断言はできない……でも、仮に本当に時間が止まる家なんてあるとするなら、内部の人も時間は止まる……つまりは、意識を失う、魔法効果の間は年をとらないということは、時間が止まっているんじゃないんかと俺は想定した」

『……』

「だから、彼女は誰かに洗脳さ俺を攻撃する罪もない一般人だ。それならば、誰が洗脳をということになるだろう」

『……』

「つまりは、ルシア、君の仕業、というよりは、ルシアの記憶を奪い、ルシアに扮する偽物だとでも言ったほうが良いのかな?」

『……よく気が付いたな』



 ルシアの大きさが変わり始める。

 そして、とうとうバルの身長をゆうに超えて、倍近くになった。


「それが新の姿か……ルシアをどこにやった!」

「さあな、と言っても納得などしないか……ならば、教えよ、奴ならこの先の小屋の中だ」

「っ!?」

「おぅっと!」


 バルは、すっかり別人へと変わった男の脇を通り抜けようとするも、男により行く手を阻まれその場でとどまるしかなかった。


「そう急ぐな、若者よ」

「くそっ!」


 バルは、魔法銃にありったけの魔力を流し込み、そして勢いよくリズミカルに撃ち続けた。

 それにより、辺りが火の海と化し始めるも、男は傷一つ負わないどころか、バルに向かってゆっくりとだが、近づいていく。

 途中、魔獣人らしき人を殴り気絶させながら、鼻歌を歌いつつ。

 楽しそうに近づいてくる男の姿はどこか滑稽に見えてしまう。

 だが、男の左手に光輝く剣が恐怖を与えてくる。


「お、お前は、いったい……」

「私か? 神々の因子とでも覚えとけ」

「神々の……因子? それは、なん……」


 直後、深い衝撃が走った。

 バルが気が付くと、いつの間にかに腹に男の拳が食い込み、その衝撃により全身に鋭い痛みがバルを襲っていた。

 男の突然の突きに対応できず、バルは数mふっとばされてしまった。

 そして、バルの意識はそこで途切れることとなり。

 後には、堂々と立ち尽くす男のみがいた。


「これが噂の新人か……大したことねえな、本当に無霊が選んだ逸材なのか?」



 そう、疑問に思いつつ、男はバルを肩に担ぎ、ルシアがいる小屋へと向かった。



 

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