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神獣殺しの精霊使い  作者: 氷帝花心(門屋定規)
1章 無の精霊と少年
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第27話 停止家と魔獣人

 歩き続けた先にそれはあった。

 俺とルシアが暑さを我慢しながら進んでいると、目の前に小高い山が見えてきた。高さは5、6m程であり、砂が密集しているように見える。

 だがよくよく見ると、家みたいだ。

 俺から見て正面に少し錆びついた金属製のドアが取り付けられ、砂に隠れて家壁が薄らと見えた。


「これは、隠れ家てきなものなのか?」

『こんな砂漠にあるなんて正気の沙汰ではありませんね、第一こんな所に住んでいる訳がありませんし、隠れ家というのは少し違う気がします』


 ということは、これは廃墟?

 それにしては、辺りを見回せしも一軒しかないのは少々おかしい気がする。それに、砂を家の上に被せてカモフラージュしているし、やはりこれは隠れ家ではなかろうか。

 ひとまず、俺たちは家に近づいてみる。


「まあ、開けてみるか……」


 ドアを軽く押してみるが、ピクリともしない。それなら逆に引いてみるもダメだ。


『どうやら、長年ほったらかしにしたせいで砂が、ドアの隙間に入りこんで固まってしまったようですね……壊します?』

「いや、流石に壊すのはいけない……と思う。それに、もしかしたら、外出中でカギを掛けているだけかもしれないし……」

『こんな砂漠に住む人なんて居ないと思いますが……それに、見たところこのドア、かなり昔に作られたようですよ、下の方に旧王国の紋章が入っていますし』


 旧王国の紋章?

 確かに、ドアの下の方に竜と剣が組み合わさったような絵が彫られている。


「旧王国ってことは今の王国とは違うということなのか?」

『はい、今の王国は旧王国でクーデターが起きて滅びた後に新しくつくられたものですからね』


 えっ、そうなの?

 まさか俺たちが目指している国が反逆により誕生したとは思わなかった。

 ……つまりは、クーデターによって滅びた国の紋章ということか。

 

「それで、クーデターは何年前のことだ?」

『そうですねえ、ざっと千年以上前だと考えていいと思いますよ』

「っ、せ、千年前!?」


 ま、まさかそこまで昔の物だとは思わなかった。ドアはそこまで傷ついていないし、砂を被っているとはいえ、家の壁も比較的綺麗であり、損傷が少なく良い家だ。

 それこそ、今もなお住んでいるかのように。



「……やっぱり誰かここに住んでいるのかな? 千年も前の家がこんな完全な状態で残るとは思えないし」

『そうかもしれませんが……でも』

「でも?」


 ルシアは辺りを見回し、警戒しながらいう。


『この家は、停止家かもしれません……』

「?」


 停止家?

 どういうこと?


『えーとですね、停止家とは魔法によって時間を止められた家のことです。対象にもよりますが、この魔法を受けたものは、その日から一生、外部からの干渉を受け付けないという効果があります……』

「干渉を受け付けない? ……それって、ようは戦争とかで逃げたとしても後からまた住めるようにしているってことでいいのか?」

『はい、その通りです。ただし、停止家を使えるものは、生まれつき純粋な魔力を持つ特別な者だけだったそうですが……とにかくです、この家は危険かもしれません』


 危険?

 確かに、家を停止、つまりは時空を止めて永遠に干渉を受け付けないようにする、これはとてつもなく凄い術だということはわかった。

 でも、危険な理由が思い当たらない。


『この術は現在、禁術に指定されています……この術は、生物にも干渉するからです』

「生物に干渉? それは、一生、年をとらないということか? だったら、一部の人たちは喜んで使うだろ? それの何がいけないんだ?」


 遥か昔から、人類は不死を目指している。

 この世界ではどうなのか知らないが、地球では医療が発達し人々は高齢になっても元気に生きることが出来るようになっていた。

 それの何がダメなんだ?


『この中には、魔獣人が居る可能性が高いのです

 魔獣人とは、己が持つ純粋な魔力を制御できなくなり、暴れだす化け物です。

 もともとは、人間ですが、魔獣人になったものは、命が枯れることなく、永遠に生き延びます。

 そこで、遥か昔、旧王国は魔獣人を恐れ停止家に閉じ込めました

 魔獣人は、永遠に年を取らず、不朽の家もまた、残り続けています』


 つまり、とルシアは前おきをしつつ言う。


『この家を開けてしまうと、私たちが魔獣人に殺される可能性が高いです!』

「っ!?」


 それは、神獣同様、俺たちを殺しにくるということなのか。

 つまり。

 神獣は精霊の暴走が原因。

 魔獣人は己が持つ純粋な魔力の暴走が原因ということか。


「でも、それなら何故こんな場所に停止家はあるんだ? こんな砂漠に家を建て、なおかつそこに閉じ込めるなんて大変だと思うけど……」

『思いつく理由は二つですかね』

「うん? わかりやすく頼む」

『つまりですね、ここは確かに砂漠ですが、千年前は違った可能性が高いということですよ。それこそ、水豊かな地だったのかもしれませんし、それか、魔獣人を恐れていたのですから、領土から離れた地に閉じ込めたのかもしれません』

「確かにそうか……」


 仮に俺が王だとしよう。

 もし自分の領土内に危険な存在があったとする、そんな危険物を領土内に閉じ込めるのは確かに愚の骨頂だ。

 もしも封印が破れた場合を想定すると、出来るだけ離れたところがいいはずだ。

 それなら、ここが昔は水源豊かな地だったかもしれないというのは、おかしい。

 そんな価値のある場所を危険地域にする必要は皆無だ。

 だとするなら、ここは昔から砂漠であり、ここから遥か遠くに国があると考えたほうがいいのかもしれない。

 だが、それは旧王国の話だ。

 だとすらなら、俺たちが目指す国はまだまだ先にあるのかもしれない。


「まあ、これは無視して進んだほうがよさそうだな」

『ですね』


 俺たちは停止家を通り過ぎる。


 

 ガシャーーン‼


「ん?」

『あれ?』


 後ろから何かが壊れるような音が聞こえた。

 まるで、建物内部で誰かが暴れているような音が。

 恐る恐る振り返り、停止家を見てみると。

 停止家の一部が崩れ壊れており、その隙間から一人の女がゆっくりと出てきた。

 女の年齢は10代前半といったところだろうか? 髪は銀色の長髪であり、服装は白と赤が混ざり合ったようなのを着ている。

 そして、手には女の身長ほどはある大剣。

 明らかにアンバランスな光景だ。


 そして、女は俺たちを睨み付けてきた。


「あ、あの、君は?」

「ぁタシ、ヮ、ァナタヲ、クゥ? ……ァカラ、コロゥス」


 何を言っているのかよくわからない。

 えーとようやくすると。

《わたしはあなたをくう、だからころす》

 これでいいのか?

 ……って、


『バル!? 右によけて!』

「えっ?」


 とりあえず、ルシアに言われた通り右に向かって思い切り飛ぶ。

 すると、直後、ズバッ! と風を切るような音が響いた。


「はっ?」

「コロッス」


 いつの間にかに、魔獣人? が俺のすぐ横に大剣を担いで立っていた。女の眼は狐のようにつり目であり、そして、少し嫌な臭いがする。

 これは、血の匂い?


「グァアアアアアアアアアア!」

「うわああああああああああ!?」



 俺と魔獣人の戦闘が始まった。



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