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神獣殺しの精霊使い  作者: 氷帝花心(門屋定規)
1章 無の精霊と少年
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第22話 虚無の国

「ルシア、俺は夢を見ているのかな?」

『いえ、起きてます』

「だよな。 だったら何でこんな光景が目の前に広がっているんだ?」


 そうだ。

 宿に宿泊し、夜が明けた次の日。

 俺とルシアが見たものは無だった。

 昨日あったはずの家々や屋台、そして人々は一人残らず消えていた。

 そこには何一つなく、ある物と言えば俺たちが宿泊していた部屋一室だけだった。


「寝ている間に何が起きたんだ?」


 こんなこと普通に考えたらありえない。だって昨日まであったはずのものが何一つないのだ。これが夢で無いとすらならいったい。


『もしかしたら、昨日見たものが幻術だったのかもしれませんね。 昔聞いたことがあるのですが、確かエルフと呼ばれる化け物たちは人々に幻を見せる力に優れていると聞いたことがあります』

「昨日の光景が幻術か……確かに否定は出来ないな。国の住民を消すよりも俺たち二人の記憶情報を弄る方が簡単だしな。 でもそうなると、誰が何の目的でしたんだ?」


 俺がこの世界に来てからしたことと言えば、神獣を殺したことと、ルシアと契約したことくらいだ。とてもじゃないがこんな理由で危害を加えられるとは思えない。


「あれ? これってさ、幻想を見せられただけなら、そこまで危害を加えられたわけでない無いよな。 だったらそこまで焦る必要はないのかな。 だってもともと人々は居ないんだし」


 そうだよな。

 これがもしも逆で、俺たち以外の国全てが消えたのなら問題だが、今の状況はそこまで苦しくはないのか。


『確かに幻術ならそうですね。ですが本当にそうなのでしょうか?』

「え? だってルシア今」

『いえ、あの精霊神が飛ばした場所を間違えたという可能性もありますが、でも精霊神ともあろうものが間違えるでしょうか? それにエルフの幻術にかかっていたとしても、私たちには何も危害が加えれれていません。本来はエルフは人間を憎んでいるので無事でいるはずがないんです』

「ということは、国が消えたかもしれないってこと? でもそう簡単に国を壊せるものなのかな?」

『現精霊使いの中には居ないと思います。半壊状態までなら風の精霊神や炎の精霊神なら可能だとは思いますが、彼らがそんなことをする理由が思いつきませんし、何より、そんなことをしたら、何か跡が残るはずです』

「うーむ。ということは何もわからないってことか」

『そうですね』


 はあ。

 折角、ラルトルス国についたと思ったからしばらくは観光や休息を取ろうと思っていたのにな、それは出来なさそうだ。


「それで、これからどうする? こんな何もないところに居ても時間の無駄だし行動する?」

『そうですね。じゃあ、まずは風の力で空に飛んで辺りを見回してみましょう。そうすれば近くに町や国があるかわかるはずです』

「うん。そうしよう」


 確かに空から見回せば何か見つかるかもしれない。それにこうやってルシアの力を引き出していけば、魔力のコントロールの練習にもなるか。


「それで、どうすればいいんだ?」

『手をつなぐだけでいいですよ!』

「ああ、うん」


 俺は右手でルシアと手を繋いだ。ルシアの手は暖かい。そして俺の手よりも数段小さい。

 よくよく考えれば、ルシアって長らく封印されて眠っていたから年齢ってそこまで高くないのかな?


『じゃあ、飛びますよ』

「うわあっああああああああああああああ」


 直後、俺たちの周りに強烈な風が吹き荒れる。

 飛行艇から降りるときに感じた、風圧とはレベルが違う。あまりの強さにルシアの手を放してしまいそうになるのを必死にこらえる。

 そして数秒後、風は消えた。


「……宙に浮いてる」


 え?これってどうなっているんだ?

 勿論風の力で浮いているのはわかるけど、全然風を感じないんだが?


「えっ?」

『どうかしましたか?』


 あまりの同様にルシアも不安に思ったのか、手を強く握りしめながら訪ねてくる。

 まあ、俺の方が身長が高いわけで、今俺は、ルシアをお姫様抱っこしてるわけだ。

 すなわち、ルシアが上目づかいしているわけだ。

 ……これは可愛い。

 いつも可愛いとはあまり思わないのに、今日この瞬間はとても美少女に見えてきた。

 これが吊り橋効果というやつだろうか?


『主君様! 大丈夫ですか!』

「おっと、いけない。気を失うところだった」

『すみません。私がいきなり高度1km上空まで飛んだせいで……』

「いや、ルシアのせいではないよ。 って、それよりも1km?」


 俺はゆっくりと右下を見下ろす。

 そこには、広大な空間が広がっていた。

 地面は遥か遠くに見え、少し上を見ると、雲々が手の届く距離まで近づいていた。


「ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!?」

『バル! だいじょうぶ!?』



 あれ、あれ、あれれ。

 確かに飛んでとは言ったがなんでこんな高いところに。

 なんだか、ルシアが必死に俺を呼ぶ声が聞こえるが、意識が遠のく。

 ごめん。ルシア。

 どうやら俺はここまでのようだ。

 ガク!?


『バルうううううううううう!?』


 その日、俺は初めてバンジージャンプを体験した。

 勿論命綱なしの飛び込みだ。

 ルシアが居なければ死んでいた。


 まあ、何はともあれ、目的は達成された。

 原位置から遥か遠くに巨大な国らしきものが見えたのだ。

 もしかしたら、俺たちが本来行くはずだったラルトルス国かもしれない。


「じゃあ、ルシア。今度はゆっくりで頼む!」

『はい』


 俺たちは再度出発する。


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